[0632] トイレ内動作自立の為に必要な下肢筋力及びバランス能力の分析
キーワード:トイレ動作, 下肢筋力, バランス能力
【はじめに,目的】
在宅復帰にはトイレ動作自立が非常に重要な要因とされている。トイレ動作自立には身体能力,感覚機能,認知機能,高次脳機能,疾患による影響,トイレ内環境等様々な要因が深く関わり合っているとされる。
疾患別で分類した研究は散見されるが,対象を複合疾患を有する要介護高齢者に限定した研究は少ない。そこで,本研究では,対象者を要介護高齢者に限定し,かつ,多数の要因の中でも身体能力に注目した。
目的は,トイレ動作自立に向けた取り組みとして,①「トイレ内動作自立度に対する下肢筋力及びバランス能力の関与を分析し,評価尺度を検出すること」。②「関係の分析結果から明らかになった身体的特徴をふまえ,トイレ内動作自立促進プログラムを開発すること」。の2点とした。
【方法】
対象は平成25年1月~6月までの当施設長期入所利用者129名中,著しい認知機能の低下がなく評価可能な42名《男性13名(平均年齢85.6±7.3歳),女性29名(平均年齢81.92±7.5歳)》とした。
評価項目は,トイレ内動作能力,下肢筋力,バランス能力の3点とした。トイレ内動作評価では本研究を実施するに伴い,新たに作成した評価表に基づき行った。評価方法はトイレ内動作を10項目に細分化し,それぞれの動作自立度と動作所要時間を評価し,動作自立度から自立群(21名)と非自立群(21名)に分類した。その後,下肢筋力(脚伸展筋力)及びバランス能力(Berg balance scale使用:以下BBS)と,トイレ内動作自立度との関係を分析した。
統計学的処理にはMann-WhitneyのU検定,単回帰分析,Spearmanの順位相関係数を用い,いずれも危険率5%未満を有意水準とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言に則り十分な配慮を行い,本研究の目的と方法,個人情報の保護について説明を行い,同意を得た。
【結果】
トイレ動作を阻害する原因(要素)として下肢筋力及びバランス能力の関与度が確認された(p<0.01)。また,トイレ内動作自立への評価尺度として,動作時間で評価される自立の基準は2分になった。トイレ内動作において「下衣・下着を上げる」動作が最も難しく,動作自立と下肢筋力,バランス能力《BBS項目別では“移乗(r=0.8,p<0.01)”“振り向き(r=0.88,p<0.01)”“360°回転(r=0.84,p<0.01)”》との関連性が確認された。
【考察】
トイレ内動作において「下衣・下着を上げる」動作が最も困難であるという結果は先行研究に一致する所見であり注目された。トイレ内動作時間に着目した先行研究は散見されず,動作時間での自立の目安は2分として新たに提起された。2分を超える対象はいずれかの動作で時間がかかる評価尺度を考え,2分を超えない為には脚伸展筋力が両側合計体重比(百分率)で74%以上,BBS合計47点以上必要であるという評価尺度が得られた。
本研究の限界として,身体能力のみに注目したことで感覚機能や疾患による影響,環境要因を考慮していないことが考えられる。在宅での生活を考えた場合は環境要因が非常に大きな要因を占める為,トイレ環境は施設内に限定した結果であると捉える。
【理学療法学研究としての意義】
トイレ動作自立には身体能力が関与していることが再確認された。また,複合疾患を有する要介護高齢者を対象とした場合,施設内トイレにおいて,動作自立の為には下肢筋力は74%,BBS合計47点以上が一つの目標数値ということが明らかになった。さらに,「下衣・下着を上げる」動作が最も難しく,BBS細項目別では“移乗”“振り向き”“360°回転”との高い相関が認められ,身体機能に着目した動作自立への取り組みの指針と成り得ることを本研究の意義と位置づける。
在宅復帰にはトイレ動作自立が非常に重要な要因とされている。トイレ動作自立には身体能力,感覚機能,認知機能,高次脳機能,疾患による影響,トイレ内環境等様々な要因が深く関わり合っているとされる。
疾患別で分類した研究は散見されるが,対象を複合疾患を有する要介護高齢者に限定した研究は少ない。そこで,本研究では,対象者を要介護高齢者に限定し,かつ,多数の要因の中でも身体能力に注目した。
目的は,トイレ動作自立に向けた取り組みとして,①「トイレ内動作自立度に対する下肢筋力及びバランス能力の関与を分析し,評価尺度を検出すること」。②「関係の分析結果から明らかになった身体的特徴をふまえ,トイレ内動作自立促進プログラムを開発すること」。の2点とした。
【方法】
対象は平成25年1月~6月までの当施設長期入所利用者129名中,著しい認知機能の低下がなく評価可能な42名《男性13名(平均年齢85.6±7.3歳),女性29名(平均年齢81.92±7.5歳)》とした。
評価項目は,トイレ内動作能力,下肢筋力,バランス能力の3点とした。トイレ内動作評価では本研究を実施するに伴い,新たに作成した評価表に基づき行った。評価方法はトイレ内動作を10項目に細分化し,それぞれの動作自立度と動作所要時間を評価し,動作自立度から自立群(21名)と非自立群(21名)に分類した。その後,下肢筋力(脚伸展筋力)及びバランス能力(Berg balance scale使用:以下BBS)と,トイレ内動作自立度との関係を分析した。
統計学的処理にはMann-WhitneyのU検定,単回帰分析,Spearmanの順位相関係数を用い,いずれも危険率5%未満を有意水準とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言に則り十分な配慮を行い,本研究の目的と方法,個人情報の保護について説明を行い,同意を得た。
【結果】
トイレ動作を阻害する原因(要素)として下肢筋力及びバランス能力の関与度が確認された(p<0.01)。また,トイレ内動作自立への評価尺度として,動作時間で評価される自立の基準は2分になった。トイレ内動作において「下衣・下着を上げる」動作が最も難しく,動作自立と下肢筋力,バランス能力《BBS項目別では“移乗(r=0.8,p<0.01)”“振り向き(r=0.88,p<0.01)”“360°回転(r=0.84,p<0.01)”》との関連性が確認された。
【考察】
トイレ内動作において「下衣・下着を上げる」動作が最も困難であるという結果は先行研究に一致する所見であり注目された。トイレ内動作時間に着目した先行研究は散見されず,動作時間での自立の目安は2分として新たに提起された。2分を超える対象はいずれかの動作で時間がかかる評価尺度を考え,2分を超えない為には脚伸展筋力が両側合計体重比(百分率)で74%以上,BBS合計47点以上必要であるという評価尺度が得られた。
本研究の限界として,身体能力のみに注目したことで感覚機能や疾患による影響,環境要因を考慮していないことが考えられる。在宅での生活を考えた場合は環境要因が非常に大きな要因を占める為,トイレ環境は施設内に限定した結果であると捉える。
【理学療法学研究としての意義】
トイレ動作自立には身体能力が関与していることが再確認された。また,複合疾患を有する要介護高齢者を対象とした場合,施設内トイレにおいて,動作自立の為には下肢筋力は74%,BBS合計47点以上が一つの目標数値ということが明らかになった。さらに,「下衣・下着を上げる」動作が最も難しく,BBS細項目別では“移乗”“振り向き”“360°回転”との高い相関が認められ,身体機能に着目した動作自立への取り組みの指針と成り得ることを本研究の意義と位置づける。