[0634] 地域在住の要介護高齢者の身体活動量とバランス能力の関連
Keywords:Life Space Assessment, 要介護高齢者, バランス能力
【はじめに,目的】日常生活における身体活動量は,運動機能や精神機能に影響を与えると考えられている。身体活動量の評価の1つとして,Life Space Assessment(以下LSA)があげられる。これは6段階の活動範囲レベルにおける活動の頻度と自立度から活動量を算出する評価法であり,年齢や身体機能,手段的日常生活などとの関連が報告されている。しかしながらこれらの研究は,介護予防事業の対象者を焦点にあてた研究であり,要介護状態の地域在住高齢者がどの程度の身体活動量を有しているのかについては明らかではない。要介護高齢者は一人で外出困難な場合が多いために身体活動量が低下しやすく,閉じこもりや寝たきり状態への進行を招く恐れが高いと考えられる。本研究では地域在住の要介護高齢者を対象にLSAを用いて身体活動量の評価を行い,年齢および身体機能との関連について検討した。
【方法】通所介護サービスを利用している高齢者のうち,以下の評価が可能であった113名を対象とした。平均年齢は80.0±10.2歳,性別は女性72名,男性41名,要介護状態区分の内訳は要支援1が5名,要支援2が30名,要介護1が27名,要介護2が36名,要介護3が12名,要介護4が3名であった。LSAは日本理学療法士協会が作成したE-SASの評価用紙を用い,理学療法士が質問を読みながら対象者に答えてもらい実施した。身体機能の指標にはBerg Balance Scale(以下BBS)を用いた。これは14項目の動作課題からなる総合的なバランス評価であり,座位保持から片脚立位保持までの幅広い難易度の動作課題により構成されている。臨床的には歩行自立度や歩行時の転倒リスクの指標としての有用性が報告されており,45点を歩行時の転倒リスクのカットオフとして用いられることが多い。分析方法は,まず対象をLSAの得点により30点未満(A群),30点以上40点未満(B群),40点以上50点未満(C群),50点以上(D群)の4群に分類し,年齢については一元配置の分散分析およびテューキークラメールの多重比較検定,BBSについてはクラスカルワーリス検定およびボンフェロー二の不等式を用いた多重比較検定を用いて4群を群間比較した。統計学的分析にはSPSSver20.0を用い,有意水準を5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究で用いた測定項目は,利用者の身体運動機能の変化を捉えるために臨床場面で評価しているものであり,対象者には治療のためだけでなく研究活動にも利用することを説明し,書面にて同意を得ている。また本研究は,本学の倫理委員会にて承認を受けている。
【結果】各群の内訳はA群27名,B群28名,C群25名,D群33名であり,年齢の平均値は同様の順に,81.2±9.9歳,83.0±9.0歳,80.2±11.1歳,76.1±9.1歳と群間差を認め,多重比較検定においてD群がB群よりも有意に若年であった。BBSの中央値は同様の順に,47(31~51)点,48(42~48)点,47(44~47)点,52(48~52)点と群間差を認め,多重比較においてD群が他の3群に比べて有意に得点が高かった。
【考察】以上の結果より,LSAが50点以上の活動量の高い者はBBSが50点以上と比較的良好なバランス能力を有していたが,それ以下の活動量のレベルではバランス能力に違いは見られなかった。すなわち要介護高齢者においては,バランス能力の比較的高い者の場合には身体機能が活動量に影響するが,BBSが45点程度のバランス能力の者では,身体機能だけでなく,他の要因にも影響されていると考えられた。したがってこのような例では,単に身体機能の向上を目指すだけではなく,人的要因や物的要因をふまえ,活動性を向上するためのアプローチを行うことが,在宅生活を継続する上で重要であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】地域在住の要介護高齢者においては,身体活動量の評価を行い,身体機能の改善だけでなく,環境要因の調整も考慮して身体活動量の向上を目指すことが重要であることが示唆された点において臨床研究として意義があると思われる。
【方法】通所介護サービスを利用している高齢者のうち,以下の評価が可能であった113名を対象とした。平均年齢は80.0±10.2歳,性別は女性72名,男性41名,要介護状態区分の内訳は要支援1が5名,要支援2が30名,要介護1が27名,要介護2が36名,要介護3が12名,要介護4が3名であった。LSAは日本理学療法士協会が作成したE-SASの評価用紙を用い,理学療法士が質問を読みながら対象者に答えてもらい実施した。身体機能の指標にはBerg Balance Scale(以下BBS)を用いた。これは14項目の動作課題からなる総合的なバランス評価であり,座位保持から片脚立位保持までの幅広い難易度の動作課題により構成されている。臨床的には歩行自立度や歩行時の転倒リスクの指標としての有用性が報告されており,45点を歩行時の転倒リスクのカットオフとして用いられることが多い。分析方法は,まず対象をLSAの得点により30点未満(A群),30点以上40点未満(B群),40点以上50点未満(C群),50点以上(D群)の4群に分類し,年齢については一元配置の分散分析およびテューキークラメールの多重比較検定,BBSについてはクラスカルワーリス検定およびボンフェロー二の不等式を用いた多重比較検定を用いて4群を群間比較した。統計学的分析にはSPSSver20.0を用い,有意水準を5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究で用いた測定項目は,利用者の身体運動機能の変化を捉えるために臨床場面で評価しているものであり,対象者には治療のためだけでなく研究活動にも利用することを説明し,書面にて同意を得ている。また本研究は,本学の倫理委員会にて承認を受けている。
【結果】各群の内訳はA群27名,B群28名,C群25名,D群33名であり,年齢の平均値は同様の順に,81.2±9.9歳,83.0±9.0歳,80.2±11.1歳,76.1±9.1歳と群間差を認め,多重比較検定においてD群がB群よりも有意に若年であった。BBSの中央値は同様の順に,47(31~51)点,48(42~48)点,47(44~47)点,52(48~52)点と群間差を認め,多重比較においてD群が他の3群に比べて有意に得点が高かった。
【考察】以上の結果より,LSAが50点以上の活動量の高い者はBBSが50点以上と比較的良好なバランス能力を有していたが,それ以下の活動量のレベルではバランス能力に違いは見られなかった。すなわち要介護高齢者においては,バランス能力の比較的高い者の場合には身体機能が活動量に影響するが,BBSが45点程度のバランス能力の者では,身体機能だけでなく,他の要因にも影響されていると考えられた。したがってこのような例では,単に身体機能の向上を目指すだけではなく,人的要因や物的要因をふまえ,活動性を向上するためのアプローチを行うことが,在宅生活を継続する上で重要であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】地域在住の要介護高齢者においては,身体活動量の評価を行い,身体機能の改善だけでなく,環境要因の調整も考慮して身体活動量の向上を目指すことが重要であることが示唆された点において臨床研究として意義があると思われる。