[0645] 軟性装具の変形性膝関節症患者の歩行時Lateral thrustに対する効果
Keywords:変形性膝関節症, 軟性装具, 動作解析
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis:以下,膝OA)は中高年で羅患頻度が高く,自覚症状を有する患者数は国内で約800万人にのぼるといわれている。日本で割合の多い内側型膝OAで歩行の立脚期初期にみられるLateral thrustは障害された関節面への荷重負荷の増大させ,それが繰り返されることになり,膝関節の変形を増大させると報告されている。
膝OAの保存療法の一つとして装具療法がある。膝OAに対する装具療法の目的は膝関節の支持性を高め,異常動揺性を制御し,疼痛の軽減を図ることである。膝OAに対する軟性膝装具についてはLateral thrustを軽減させ,その軽減に伴い疼痛が軽減するという報告はあるが,装具の除痛効果についての機序は明確でない。また,軟性膝装具とLateral thrustの速度の変化についての研究はみられないため,本研究では軟性膝装具の有無によるLateral thrustの速度変化,及び疼痛との関係性について調べた。
【方法】
対象は内側型膝OAと診断され,歩行時に疼痛を有し,本研究に同意の得られた6名とした。課題動作は至適速度での10mの直線歩行とし,軟性装具非装着時と装着時で3試行ずつ,計6試行測定した。本研究で使用した装具はALCARE社(東京)製の側方支柱付き軟性装具である。
三次元動作解析装置Vicon612(Vicon Motion Systems,Oxford,UK),床反力計(AMTI,USA)を用い,歩行時の患側膝関節の動きを測定した。マーカーは,歩行解析ソフトウェアであるPlug in Gait(Plug in gait,® Peak,Oxford,UK)を参考に39箇所に貼付した。歩行時の疼痛評価はVisual Analogue Scale(以下,VAS)を用い,書面にて聴取した。
本研究では踵接地から全歩行周期の20%における膝関節の最大内反角度と最小内反角度の差を膝関節内外反変位量(Lateral thrust量:以下,LT量)として算出した。また,膝関節内外反変位量を最小内反角度から最大内反角度までの時間で除してLateral thrustの平均速度(以下,LT平均速度)として算出し,膝関節内外反変位量の単位時間あたりの速度変化をLateral thrustの瞬間速度(以下,LT瞬間速度)として算出した。
統計学的解析はSPSSver.19.0J for Windows(SPSS Japan社,東京)を使用した。装具装着時と非装着時の比較においては,対応のあるt検定を実施し,LT量,LT平均速度,LT瞬間速度の最大値とVASとの関係性においては重回帰分析及びPearsonの相関検定を実施した。危険率5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は実験に先立ち,対象者に本研究の目的と趣旨,方法,安全性,プライバシーの保護などについて十分に説明し同意を得た。なお,本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
軟性装具非装着時と比較し装具装着時ではLT量,LT平均速度,LT瞬間の速度の最大値は有意に減少した(p<0.05)。疼痛(VAS)は装具装着時に有意に減少した(p<0.05)。VASとLT量,VASとLT平均速度,VASとLT瞬間速度の最大値において相関関係はみられなかった。LT量とLT平均速度,LT平均速度とLT瞬間速度の最大値においてはそれぞれ強い正の相関がみられた(r=0.83,r=0.82,p<0.05)。
【考察】
本研究において装具装着時に疼痛は減少し,装具の除痛効果は得られたが,LT量,LT平均速度,LT瞬間速度の最大値の3項目とVASの減少との関係性については有意な結果は得られなかった。しかし,LT量とLT平均速度,LT平均速度とLT瞬間速度の最大値においてはそれぞれ強い正の相関がみられたことから,装具装着によりLateral thrust量の抑制に加え,Lateral thrustの速度も抑制され,歩行時の除痛にも繋がったと推測できる。
本研究において全体としてVASは軽減したが,1名のみVASに変化がみられなかった。VASが減少しなかった1名に関してはLT量は減少したが,LT平均速度とLT瞬間速度の最大値が装具装着時に増加した。このことから装具を装着しても除痛効果の得られない症例はLateral thrustの速度を抑制することが出来なかった可能性がある。
今後は被験者数を増やし,装具による除痛効果の得られない症例とLateral thrustの速度との関係性をより明確にしていく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
膝OAの保存療法の1つである装具療法の効果及びその要因を検討し,膝OAの装具の改良に繋げる。また,装具療法の効果がみられる症例とそうでない症例の特徴を明確にすることで,装具療法の選択の際の一助となる。
変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis:以下,膝OA)は中高年で羅患頻度が高く,自覚症状を有する患者数は国内で約800万人にのぼるといわれている。日本で割合の多い内側型膝OAで歩行の立脚期初期にみられるLateral thrustは障害された関節面への荷重負荷の増大させ,それが繰り返されることになり,膝関節の変形を増大させると報告されている。
膝OAの保存療法の一つとして装具療法がある。膝OAに対する装具療法の目的は膝関節の支持性を高め,異常動揺性を制御し,疼痛の軽減を図ることである。膝OAに対する軟性膝装具についてはLateral thrustを軽減させ,その軽減に伴い疼痛が軽減するという報告はあるが,装具の除痛効果についての機序は明確でない。また,軟性膝装具とLateral thrustの速度の変化についての研究はみられないため,本研究では軟性膝装具の有無によるLateral thrustの速度変化,及び疼痛との関係性について調べた。
【方法】
対象は内側型膝OAと診断され,歩行時に疼痛を有し,本研究に同意の得られた6名とした。課題動作は至適速度での10mの直線歩行とし,軟性装具非装着時と装着時で3試行ずつ,計6試行測定した。本研究で使用した装具はALCARE社(東京)製の側方支柱付き軟性装具である。
三次元動作解析装置Vicon612(Vicon Motion Systems,Oxford,UK),床反力計(AMTI,USA)を用い,歩行時の患側膝関節の動きを測定した。マーカーは,歩行解析ソフトウェアであるPlug in Gait(Plug in gait,® Peak,Oxford,UK)を参考に39箇所に貼付した。歩行時の疼痛評価はVisual Analogue Scale(以下,VAS)を用い,書面にて聴取した。
本研究では踵接地から全歩行周期の20%における膝関節の最大内反角度と最小内反角度の差を膝関節内外反変位量(Lateral thrust量:以下,LT量)として算出した。また,膝関節内外反変位量を最小内反角度から最大内反角度までの時間で除してLateral thrustの平均速度(以下,LT平均速度)として算出し,膝関節内外反変位量の単位時間あたりの速度変化をLateral thrustの瞬間速度(以下,LT瞬間速度)として算出した。
統計学的解析はSPSSver.19.0J for Windows(SPSS Japan社,東京)を使用した。装具装着時と非装着時の比較においては,対応のあるt検定を実施し,LT量,LT平均速度,LT瞬間速度の最大値とVASとの関係性においては重回帰分析及びPearsonの相関検定を実施した。危険率5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は実験に先立ち,対象者に本研究の目的と趣旨,方法,安全性,プライバシーの保護などについて十分に説明し同意を得た。なお,本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
軟性装具非装着時と比較し装具装着時ではLT量,LT平均速度,LT瞬間の速度の最大値は有意に減少した(p<0.05)。疼痛(VAS)は装具装着時に有意に減少した(p<0.05)。VASとLT量,VASとLT平均速度,VASとLT瞬間速度の最大値において相関関係はみられなかった。LT量とLT平均速度,LT平均速度とLT瞬間速度の最大値においてはそれぞれ強い正の相関がみられた(r=0.83,r=0.82,p<0.05)。
【考察】
本研究において装具装着時に疼痛は減少し,装具の除痛効果は得られたが,LT量,LT平均速度,LT瞬間速度の最大値の3項目とVASの減少との関係性については有意な結果は得られなかった。しかし,LT量とLT平均速度,LT平均速度とLT瞬間速度の最大値においてはそれぞれ強い正の相関がみられたことから,装具装着によりLateral thrust量の抑制に加え,Lateral thrustの速度も抑制され,歩行時の除痛にも繋がったと推測できる。
本研究において全体としてVASは軽減したが,1名のみVASに変化がみられなかった。VASが減少しなかった1名に関してはLT量は減少したが,LT平均速度とLT瞬間速度の最大値が装具装着時に増加した。このことから装具を装着しても除痛効果の得られない症例はLateral thrustの速度を抑制することが出来なかった可能性がある。
今後は被験者数を増やし,装具による除痛効果の得られない症例とLateral thrustの速度との関係性をより明確にしていく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
膝OAの保存療法の1つである装具療法の効果及びその要因を検討し,膝OAの装具の改良に繋げる。また,装具療法の効果がみられる症例とそうでない症例の特徴を明確にすることで,装具療法の選択の際の一助となる。