第49回日本理学療法学術大会

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脳損傷理学療法14

2014年5月30日(金) 17:10 〜 18:00 ポスター会場 (神経)

座長:永井将太(金城大学医療健康学部理学療法学科)

神経 ポスター

[0653] 脳血管障害片麻痺患者の麻痺側下肢随意性別の視覚情報変化による静的閉脚立位姿勢の重心動揺について

益山大作 (医療法人青雲会青雲会病院リハビリテーション部)

キーワード:視覚情報変化, 立位姿勢制御, 静的閉脚立位治療

【はじめに,目的】
視覚情報等のシステムにより立位正常姿勢制御は保たれている。過去の第46回全国学会発表にて鏡から壁への正中軸注視により正常人は,重心動揺計による結果では,総軌跡長・単位面積軌跡長・動揺中心変位Y軸に有意差が認められた。過去の第46回全国学会発表を通して,脳血管障害片麻痺患者の下肢の髄意性も静的閉脚立位の視覚情報等のシステムに影響するのではないか?と推測される。そこで,今回は鏡より壁への正中軸注視により脳血管障害片麻痺患者の麻痺側下肢随意性別の視覚情報変化による静的閉脚立位の重心動揺について若干の検討をしたので報告する。
【方法】
対象は,2つの群(A群 Bruunstorom-Stage:III・IV 9例 B群 Bruunstorom-StageV・VI 10例)(以下,A群とB群として示す)とし,立位・歩行可能な脳血管障害片麻痺患者(高次脳機能障害・痴呆を含まない)19例とした。A群の内訳は男性6例女性3例,平均年齢56±9.29歳,症例は脳出血7例脳梗塞2例,右片麻痺4例左片麻痺5例 B群の内訳は男性8例女性2例,平均年齢69.5±7.94歳,症例は脳出血2例脳梗塞8例,右片麻痺6例左片麻痺4例であった。重心動揺計(スズケン社製Kenz-Stabilo101)にて静止時立位の開眼・閉脚・裸足の条件でA群・B群の全ての症例に1鏡の正中軸2壁の正中軸をとるように順に口頭指示し,1m先の目線の高さを30秒間注視する2課題とし治療前に1回づつ評価実施した。総軌跡長・単位面積軌跡長・動揺中心変位Y軸,以上について統計学的にt検定で比較検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,当院倫理委員会の承認を受け対象者に目的・方法を説明した後,了承を得てサインを頂き,施行した。
【結果】
A群:総軌跡長 鏡52.99±13.83cm壁53.21±17.88cm・単位面積軌跡長 鏡20.4±8.9 1/cm壁19.5±8.32 1/cm・動揺中心変位Y軸 鏡2.00±1.15cm壁2.6±0.88cmであった。総軌跡長・動揺中心変位Y軸に増加を認め,単位面積軌跡長に減少を認めた。A群は,総軌跡長,動揺中心変位Y軸に有意差があった。(0.001>P)
B群:総軌跡長 鏡64.16±33.32cm壁64.34±27.29cm・単位面積軌跡長 鏡14.93±5.82 1/cm壁16.04±5.61 1/cm・動揺中心変位Y軸 鏡2.28±1.64cm壁2.16±1.37cmであった。総軌跡長・単位面積軌跡長に増加を認め,動揺中心変位Y軸に減少を認めた。B群は,総軌跡長に有意差があった。(0.001>P)
【考察】
今回の視覚情報変化の鏡から壁への正中軸注視による参照枠の視野条件としては,A群の単位面積軌跡長に減少を認める事は中心視野条件優位であり,B群の単位面積軌跡長に増加を認める事は周辺視野・全視野条件優位である事が静的閉脚立位の重心動揺に関係があると考えられる。
A群・B群とも総軌跡長に有意差があったが,A群は抗重力伸展活動による支持性(安定性)が要求され,B群はバランスが要求されると考えられる。これは,麻痺側下肢随意性は,外側運動制御系の皮質脊髄路に関与し,随意性と立位姿勢制御とは密接な関係があると考えられ,内側運動制御系から検討すると,視覚情報変化により視蓋脊髄路が働き,前庭脊髄路・網様体脊髄路が関与すると考えられる。そこで,立位姿勢制御の観点から考えると,足底からの固有感覚情報に基づいた脊髄小脳路・橋,延髄網様体脊髄路系及び前庭脊髄路系の活性化も静的閉脚立位の重心動揺に関係があると考えられる。
立位姿勢制御の戦略はヒップストラテジー・アンクルストラテジー等がある。今回は,A群では動揺中心変位Y軸に有意差があったが,年齢・安定性・バランス等を考慮すると,A群はB群と比較してヒップストラテジーが優位に,B群はA群と比較してアンクルストラテジー優位に関与すると考えられる。立位姿勢の戦略・アライメント等も静的閉脚立位の重心動揺に関係があると考えられる。
静的閉脚立位は,重心動揺の評価に用いられる。評価と治療の姿勢は一体化と考えられる。そこで,基本的に立位治療介入としては開眼開脚立位(ニュートラルとして肩幅開脚立位)であるが,開眼閉脚立位をあらゆる姿勢の準備治療と捉えて,視覚情報による正中位・身体図式・両肩関節の安定性・予測姿勢調節における抗重力筋活動・立位姿勢制御戦略・膝関節コントロール・支持基底面調整等も重要と考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
視覚情報変化における静的閉脚立位での立位保持は大切であり,重心の高さ・支持基底面の変化による筋活動安定性・バランス活動等に影響を及ぼす。
視覚情報変化による静的閉脚立位の中で中等度・軽度の下肢に随意性がある場合,脳血管障害片麻痺患者の静的閉脚立位治療を介入する事は筋活動安定性・バランス活動等を獲得する事を認識することが出来た。