[0654] 脳卒中患者の活動意欲が動作能力に与える影響
キーワード:脳卒中, 予後予測, 活力
【はじめに,目的】
脳卒中ガイドライン2009では早期からのリハビリテーションが推奨されている。また,患者の予後予測に基づいた治療を行うことが求められている。そのため,急性期から患者の動作能力の予測を立てて介入することによって,患者のゴール設定に役立つと考えられる。現在の脳卒中患者における予後予測は発症時の年齢や疾患の重症度,身体機能,認知機能などに基づいて判別されている。特に,歩行や基本動作の自立度などの予測には麻痺の程度や体幹機能などの身体機能面に特化した指標が用いられることが多い。
しかし,リハビリテーションを実施するにあたり,患者の活動意欲はリハビリテーションを進めるうえで介入量の増大や介入の質の向上の観点から重要である。したがって,患者の意欲は機能改善に寄与する一要因であると考えられる。そこで,本研究では退院時の動作能力に与える要因を活動意欲の観点を含めて明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は2013年6月から10月までに当院へ入院され,理学療法の対象となった脳卒中患者(39名)とした。評価方法は,入院時および退院時に年齢,BMI(Body Mass Index),NIHSS(National Institute of Health Stroke Scale),BI(Barthel Index),TCT(Trunk Control Test),BRS(Brunnstrom Recovery Scale),VI(Vitality Index),BBS(Berg Balance Scale)を測定した。各測定指標は,疾患の重症度としてNIHSS,意欲の指標としてVI,日常生活動能力の指標としてBI,体幹機能の指標としてTCT,下肢機能の指標として下肢BRS,動作能力の指標としてBBSを用いた。なお,年齢は60歳未満,60~69歳,70~79歳,80~89歳,90~99歳に分類し,NIHSSについても0~4点,5~22点,23点~に分類して使用した。
統計学的検討にはSPSSを使用し,ステップワイズ法による重回帰分析をおこなった。従属変数には退院時BBSを投入し,独立変数には入院時年齢分類,入院時BMI,入院時NIHSS分類,入院時VIの合計点,入院時BIの合計点,入院時TCTの合計点,入院時下肢BRSを投入した。また,統計学的有意水準は危険率5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,当院の倫理規定および個人情報取り扱い規定を順守し,全データを匿名化して用いることで対象者への影響がないように配慮した。
【結果】
抽出された項目は入院時TCT合計,年齢,入院時VIであった(p<0.05)。予測式は,[退院時BBS合計]=21.677+0.212×[入院時TCT合計]-0.302×[年齢]+0.336×[入院時VI合計]となった。予測式の精度は,重相関係数R=0.866,決定係数R²=0.750,調整済みR²=0.728となった。抽出された3項目の標準化係数は,入院時TCT合計ではβ=0.379,年齢ではβ=-0.302,入院時VI合計ではβ=0.336であった。
【考察】
本研究の結果より,退院時の動作能力には入院時TCT合計,年齢,入院時VI合計の3項目が関連することが示唆された。また,入院時TCT合計,年齢,入院時VI合計の標準化係数には大きな隔たりはなく,ほとんど均一であった。したがって,入院時TCT合計,年齢,入院時VI合計が退院時BBSへ与える影響は同程度であることから,退院時の動作能力の予測には入院時の身体機能面だけでなく活動意欲に関しても同等の必要性があることが示された。
リハビリテーション介入時の端坐位能力による歩行の予後予測や発症年齢による予後予測の報告は多く見受けられている。本研究にて抽出された入院時TCTおよび年齢はこれらの先行研究と一致している。本研究にて,新たに入院時VI合計が抽出された要因として,活動意欲が高い場合はリハビリテーションへの取り組みが良いことやリハビリテーション時間以外での活動量の増加が生じていると考えられる。また,脳卒中患者においてはうつ症状やアパシーを患うケースもあり,活動意欲の評価はリハビリテーションを行う上で有用であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では体幹能力と年齢に加え,活動意欲が退院時の動作能力へ影響を与えることが明らかとなった点に意義があると考えている。したがって,理学療法士は身体機能面だけではなく,活動意欲を引き出すことができるように介入していくことが必要であると考えられる。
脳卒中ガイドライン2009では早期からのリハビリテーションが推奨されている。また,患者の予後予測に基づいた治療を行うことが求められている。そのため,急性期から患者の動作能力の予測を立てて介入することによって,患者のゴール設定に役立つと考えられる。現在の脳卒中患者における予後予測は発症時の年齢や疾患の重症度,身体機能,認知機能などに基づいて判別されている。特に,歩行や基本動作の自立度などの予測には麻痺の程度や体幹機能などの身体機能面に特化した指標が用いられることが多い。
しかし,リハビリテーションを実施するにあたり,患者の活動意欲はリハビリテーションを進めるうえで介入量の増大や介入の質の向上の観点から重要である。したがって,患者の意欲は機能改善に寄与する一要因であると考えられる。そこで,本研究では退院時の動作能力に与える要因を活動意欲の観点を含めて明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は2013年6月から10月までに当院へ入院され,理学療法の対象となった脳卒中患者(39名)とした。評価方法は,入院時および退院時に年齢,BMI(Body Mass Index),NIHSS(National Institute of Health Stroke Scale),BI(Barthel Index),TCT(Trunk Control Test),BRS(Brunnstrom Recovery Scale),VI(Vitality Index),BBS(Berg Balance Scale)を測定した。各測定指標は,疾患の重症度としてNIHSS,意欲の指標としてVI,日常生活動能力の指標としてBI,体幹機能の指標としてTCT,下肢機能の指標として下肢BRS,動作能力の指標としてBBSを用いた。なお,年齢は60歳未満,60~69歳,70~79歳,80~89歳,90~99歳に分類し,NIHSSについても0~4点,5~22点,23点~に分類して使用した。
統計学的検討にはSPSSを使用し,ステップワイズ法による重回帰分析をおこなった。従属変数には退院時BBSを投入し,独立変数には入院時年齢分類,入院時BMI,入院時NIHSS分類,入院時VIの合計点,入院時BIの合計点,入院時TCTの合計点,入院時下肢BRSを投入した。また,統計学的有意水準は危険率5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,当院の倫理規定および個人情報取り扱い規定を順守し,全データを匿名化して用いることで対象者への影響がないように配慮した。
【結果】
抽出された項目は入院時TCT合計,年齢,入院時VIであった(p<0.05)。予測式は,[退院時BBS合計]=21.677+0.212×[入院時TCT合計]-0.302×[年齢]+0.336×[入院時VI合計]となった。予測式の精度は,重相関係数R=0.866,決定係数R²=0.750,調整済みR²=0.728となった。抽出された3項目の標準化係数は,入院時TCT合計ではβ=0.379,年齢ではβ=-0.302,入院時VI合計ではβ=0.336であった。
【考察】
本研究の結果より,退院時の動作能力には入院時TCT合計,年齢,入院時VI合計の3項目が関連することが示唆された。また,入院時TCT合計,年齢,入院時VI合計の標準化係数には大きな隔たりはなく,ほとんど均一であった。したがって,入院時TCT合計,年齢,入院時VI合計が退院時BBSへ与える影響は同程度であることから,退院時の動作能力の予測には入院時の身体機能面だけでなく活動意欲に関しても同等の必要性があることが示された。
リハビリテーション介入時の端坐位能力による歩行の予後予測や発症年齢による予後予測の報告は多く見受けられている。本研究にて抽出された入院時TCTおよび年齢はこれらの先行研究と一致している。本研究にて,新たに入院時VI合計が抽出された要因として,活動意欲が高い場合はリハビリテーションへの取り組みが良いことやリハビリテーション時間以外での活動量の増加が生じていると考えられる。また,脳卒中患者においてはうつ症状やアパシーを患うケースもあり,活動意欲の評価はリハビリテーションを行う上で有用であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では体幹能力と年齢に加え,活動意欲が退院時の動作能力へ影響を与えることが明らかとなった点に意義があると考えている。したがって,理学療法士は身体機能面だけではなく,活動意欲を引き出すことができるように介入していくことが必要であると考えられる。