第49回日本理学療法学術大会

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脳損傷理学療法14

2014年5月30日(金) 17:10 〜 18:00 ポスター会場 (神経)

座長:永井将太(金城大学医療健康学部理学療法学科)

神経 ポスター

[0656] 脳卒中片麻痺患者における回旋運動が歩行機能に及ぼす影響

谷内幸喜1, 河﨑由美子2 (1.大阪河﨑リハビリテーション大学リハビリテーション学部, 2.総合リハビリテーション伊予病院リハビリテーション部)

キーワード:脳卒中片麻痺患者, 回旋運動, 歩行機能

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺患者において日常生活活動を向上させるために,安定した歩行能力を獲得させることが必要である。今回,脳卒中片麻痺患者に対する歩行能力向上のための理学療法として,頸部・体幹の回旋運動に注目し,頸部・体幹回旋運動前後における歩行機能を調べ若干の知見を得たので文献的考察を交えて報告する。
【方法】被験者は下肢装具使用にて10m以上の独歩可能な脳卒中片麻痺患者16名とした。被験者はまず,インターリハ社製ゼブリス高機能型圧分布計測システム(以下,Win FDM)上で任意歩行を行いその後,立位姿勢から非麻痺側下肢を前に踏み出した状態において,体幹下部(以下,骨盤)麻痺側回旋・体幹上部(以下,胸郭)非麻痺側回旋・頸部麻痺側回旋の他動運動(以下,ねじり運動)を実施,ねじり運動の状態を数秒間保持した後,Win FDM上で任意歩行を行った。なお,ねじり運動前後における歩行はそれぞれ2回実施し1回目を練習とし2回目の値を採用した。ねじり運動前後における歩行の変化はWin FDMにて連続測定し,そこから出力される動作時の信号は,コンピューターに取り込んだ後,インターリハ社製解析用FDM Gaitソフトウェアにより麻痺側および非麻痺側における足部角度(°)・ステップ長(cm)・ステップ時間(秒),1歩行周期における立脚期率(%)遊脚期率(%)両脚支持期率(%),そして歩隔(cm)・ストライド長(cm)・ストライド時間(秒)・ケーデンス(ストライド/分)・歩行速度(km/h)・歩行速度変動率(%)を求めた。なお,ステップ長(cm)・歩隔(cm)・ストライド長(cm)は,身長により正規化した数値(%Body Height,以下%BH)で表した。ねじり運動前後における歩行の変化に差があるかを調べるために,データの正規性を確認してから一元配置分散分析を用い,有意水準を5%未満として解析を行った。なお統計学的解析には,Microsoft社製表計算等ソフトウェア(Microsoft Excel 2010)の分析ツールを使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき,研究説明書,研究同意書,研究同意撤回書を作成。被験者に研究参加に対する自由意志と権利の確認,個人情報保護に対する配慮を十分に説明し同意を得た。
【結果】ねじり運動前後の歩行において,ストライド長(%BH)の有意な増加が認められた(P<0.05)。また,ステップ長(%BH)は,麻痺側において有意な増加が認められた(P<0.05)が,非麻痺側においては有意な増加は認められなかった。ねじり運動前後の歩行における歩隔(%BH)も有意な減少が認められた(P<0.05)。その他,麻痺側および非麻痺側における足部角度(°)・ステップ時間(秒),1歩行周期における立脚期率(%)遊脚期率(%)両脚支持期率(%),そしてストライド時間(秒)・ケーデンス(ストライド/分)・歩行速度(km/h)・歩行速度変動率(%)は,ねじり運動前後の歩行において有意な差は認められなかった。
【考察】正常歩行の場合,頸部・胸郭と骨盤の回旋運動が,重心位置の振幅を少なくし,効率の良い歩行を生み出している。しかし,脳卒中片麻痺患者の歩行は,骨盤回旋運動低下によって歩行の推進に必要な麻痺側下肢振り出し動作が,麻痺側股関節屈曲・外旋・外転ではなく屈曲・外旋・内転運動となり不効率な振り出し動作を生じている。さらに,脳卒中片麻痺患者に特徴的な骨盤後傾位による姿勢は,麻痺側股関節伸展運動の低下を生じ,麻痺側下肢立脚中期以降における足部の踏み返しがうまく行えない不効率な歩行を呈している。今回,脳卒中片麻痺患者に対して,非麻痺側下肢を前に踏み出した状態におけるねじり運動を実施し,その後の歩行において,ストライド長および麻痺側のステップ長の増加と歩隔の減少を認めた。これは,ねじり運動によって骨盤回旋運動が出現したのはもちろん非麻痺側下肢を前に踏み出したねじり運動は骨盤後傾位の減少や麻痺側股関節伸展運動に繋がり,股関節を屈曲させる主動作筋である大腰筋の機能や,足関節背屈位によるStretch-Shortening Cycle機能などによって,麻痺側下肢の推進力向上が図れたものと推測される。発表では,身体におけるねじり運動の能力とバランス能力との関連性を指摘した報告や,本実験結果からは有意差が認められなかった脳卒中片麻痺患者の1歩行周期における時間的変数に関しても,遊脚期における膝関節屈曲運動との関連性を指摘した報告などを踏まえながら,本実験結果を考察していきたいと考えている。
【理学療法学研究としての意義】脳卒中片麻痺患者における身体のねじり運動が麻痺側下肢の推進力向上を促し,歩行機能を改善する可能性を示した。本実験結果は,理学療法学研究として意義があり,臨床場面や在宅場面における日常生活指導をする上で有効性が期待される。