[0663] 在宅復帰・在宅生活継続のためにどのような支援が必要か
キーワード:在宅復帰, 地域包括ケアシステム, 介護者支援
【はじめに,目的】
現在,日本においては少子高齢化が進み,要介護高齢者の数がますます増加することが予測されている。2025年には,地域包括ケアシステムの構築も計画されており,理学療法士にとって,要介護高齢者の在宅生活支援はさらに重要な機能になる。また,介護老人保健施設においては,平成24年の介護報酬改正で,在宅強化型老健が創設された。介護老人保健施設の役割として,在宅強化型老健を取得し,より在宅復帰を促進することが期待されている。
そこで,要介護者が在宅復帰し,さらに自宅での生活を継続するためには,どのような要因があり,理学療法士はどのような支援をしなければならないのかということを考察するために,本研究を実施したので報告する。
【方法】
平成22年1月から平成25年6月までに当施設から在宅復帰された方の主介護者のうち,アンケート調査が可能な状態にある方を対象に,介護負担や悩みなどに関してアンケート調査を行った。実施期間は,平成25年5月~7月までとした。アンケートは手渡しし,選択肢方式と自由記載で回答していただいた。37名にアンケートを実施し,36名の有効回答が得られた。アンケート結果は,単純集計と介護負担の有無,悩みの有無に対して主介護者の属性などとの関連についてクロス集計を行い,χ2検定(有意水準5%未満)を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはアンケートの趣旨を説明し,同意を得た上,署名していただいた。回収後は厳重に個人情報保護の管理を行った。
【結果】
回答者は平均年齢60.58歳(46歳~81歳,標準偏差10.61),女性が27名(75.0%),男性が9名(25.0%)だった。続柄は実子が16名(44.4%)が最も多く,次いで配偶者が12名(33.3%)だった。就労状況では50%の方が何らかの仕事に就かれていた。居住形態は,同居が26名(72.2%)で最も多く,次いで車で30分以内が8名(22.2%)だった。健康面に関して,19名(52.7%)の方が何らかの問題があると回答された。
介護負担に関しては,23名(63.9%)の方が何らかの負担を感じていると回答された。負担の内容としては,「夜間の排泄介助」が12名で最も多く,次いで「日中の排泄介助」が9名だった。悩みに関しては,27名(75.0%)の方が何らかの悩みがあると回答された。悩みの内容では,「健康面の不安」を挙げた方が18名で最も多く,次いで「仕事と介護の両立」が9名だった。在宅生活を継続するために維持してほしい項目は,「トイレ動作」が21名で最も多く,次いで「精神面の安定」が18名だった。在宅生活を維持するために,当施設にどのようなことを望みますか」という質問では,「リハビリテーションの充実」が最も多かった。
χ2検定では,「健康面の問題の有無」と「悩みの有無」でのみ有意差を認めた。
【考察】
アンケートの結果より,在宅復帰・在宅生活継続のためには,まず在宅復帰の際,できる限り介助負担を軽減する排泄手段を確立し,在宅復帰後のリハビリテーションを充実させ,機能を低下させないことが重要であると考えられる。2つ目に,介護者に対する健康面等のサポートが重要であると考えられる。介護者は,自身の健康面や要介護者の精神面の不安定から来るストレスにより悩みを抱えていることがうかがわれる。しかし,そのような介護者に対するサポート体制は確立されているとは言い難く,その役割を誰が担うかということも明確ではない。今後,在宅生活支援のケアマネジメントにおいて,理学療法士等のリハビリテーション職種も,介護者への健康問題へ早期に介入し,他職種と連携のもとに援助をしていくことは意義があるのではないかと思われる。地域包括ケアシステムにおいては,24時間巡回型の在宅サービス等の整備が重視されているが,夜間の訪問サービスなど,整備が進みにくいサービスもあり,家族等の介護者も引き続き重要な要素であると考えられる。
今後,以上の点を明らかにするために,対象や期間を拡大してより一般化した研究を行い,地域包括ケアシステムにおける理学療法士の役割を明確にすることが今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
要介護者が在宅復帰し,在宅生活を継続していくためには,排泄動作の自立支援・介助軽減と介護者のサポートが重要であると示唆された。今後,地域包括ケアシステムの構築が進められていく中,理学療法士の役割として,介護者の支援に介入することも重要であると考えられる。
現在,日本においては少子高齢化が進み,要介護高齢者の数がますます増加することが予測されている。2025年には,地域包括ケアシステムの構築も計画されており,理学療法士にとって,要介護高齢者の在宅生活支援はさらに重要な機能になる。また,介護老人保健施設においては,平成24年の介護報酬改正で,在宅強化型老健が創設された。介護老人保健施設の役割として,在宅強化型老健を取得し,より在宅復帰を促進することが期待されている。
そこで,要介護者が在宅復帰し,さらに自宅での生活を継続するためには,どのような要因があり,理学療法士はどのような支援をしなければならないのかということを考察するために,本研究を実施したので報告する。
【方法】
平成22年1月から平成25年6月までに当施設から在宅復帰された方の主介護者のうち,アンケート調査が可能な状態にある方を対象に,介護負担や悩みなどに関してアンケート調査を行った。実施期間は,平成25年5月~7月までとした。アンケートは手渡しし,選択肢方式と自由記載で回答していただいた。37名にアンケートを実施し,36名の有効回答が得られた。アンケート結果は,単純集計と介護負担の有無,悩みの有無に対して主介護者の属性などとの関連についてクロス集計を行い,χ2検定(有意水準5%未満)を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはアンケートの趣旨を説明し,同意を得た上,署名していただいた。回収後は厳重に個人情報保護の管理を行った。
【結果】
回答者は平均年齢60.58歳(46歳~81歳,標準偏差10.61),女性が27名(75.0%),男性が9名(25.0%)だった。続柄は実子が16名(44.4%)が最も多く,次いで配偶者が12名(33.3%)だった。就労状況では50%の方が何らかの仕事に就かれていた。居住形態は,同居が26名(72.2%)で最も多く,次いで車で30分以内が8名(22.2%)だった。健康面に関して,19名(52.7%)の方が何らかの問題があると回答された。
介護負担に関しては,23名(63.9%)の方が何らかの負担を感じていると回答された。負担の内容としては,「夜間の排泄介助」が12名で最も多く,次いで「日中の排泄介助」が9名だった。悩みに関しては,27名(75.0%)の方が何らかの悩みがあると回答された。悩みの内容では,「健康面の不安」を挙げた方が18名で最も多く,次いで「仕事と介護の両立」が9名だった。在宅生活を継続するために維持してほしい項目は,「トイレ動作」が21名で最も多く,次いで「精神面の安定」が18名だった。在宅生活を維持するために,当施設にどのようなことを望みますか」という質問では,「リハビリテーションの充実」が最も多かった。
χ2検定では,「健康面の問題の有無」と「悩みの有無」でのみ有意差を認めた。
【考察】
アンケートの結果より,在宅復帰・在宅生活継続のためには,まず在宅復帰の際,できる限り介助負担を軽減する排泄手段を確立し,在宅復帰後のリハビリテーションを充実させ,機能を低下させないことが重要であると考えられる。2つ目に,介護者に対する健康面等のサポートが重要であると考えられる。介護者は,自身の健康面や要介護者の精神面の不安定から来るストレスにより悩みを抱えていることがうかがわれる。しかし,そのような介護者に対するサポート体制は確立されているとは言い難く,その役割を誰が担うかということも明確ではない。今後,在宅生活支援のケアマネジメントにおいて,理学療法士等のリハビリテーション職種も,介護者への健康問題へ早期に介入し,他職種と連携のもとに援助をしていくことは意義があるのではないかと思われる。地域包括ケアシステムにおいては,24時間巡回型の在宅サービス等の整備が重視されているが,夜間の訪問サービスなど,整備が進みにくいサービスもあり,家族等の介護者も引き続き重要な要素であると考えられる。
今後,以上の点を明らかにするために,対象や期間を拡大してより一般化した研究を行い,地域包括ケアシステムにおける理学療法士の役割を明確にすることが今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
要介護者が在宅復帰し,在宅生活を継続していくためには,排泄動作の自立支援・介助軽減と介護者のサポートが重要であると示唆された。今後,地域包括ケアシステムの構築が進められていく中,理学療法士の役割として,介護者の支援に介入することも重要であると考えられる。