第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 内部障害理学療法 口述

循環1

2014年5月31日(土) 09:30 〜 10:20 第5会場 (3F 303)

座長:田畑稔(豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科), 熊丸めぐみ(群馬県立小児医療センターリハビリテーション課)

内部障害 口述

[0671] Chronotropic Incompetenceに対する運動処方について

岡本賢太郎 (公益社団法人地域医療振興協会横須賀市立うわまち病院)

キーワード:運動処方, 変時不全, AT

【はじめに,目的】
心拍予備能の低下を示す患者Chronotropic Incompetence(以下,変時不全)に対して,以前我々は,予測最高心拍数(220-年齢)からKarvonen法(k=0.4-0.6)により導き出した目標心拍数が,実際に計測したAT時の心拍数(AT1分前の心拍数)に比べ,有意に高い値となる事を示した。今回は,呼気ガス分析併用心肺運動負荷試験(以下,CPX)により得られた症候限界時の心拍数を基に,Karvonen法で算出した目標心拍数と,実際のAT時の心拍数を求め,ガイドラインで推奨される心拍予備能の40-60%に該当するのか調べた。
【対象】
本研究の対象は,次の①から④に該当する61人とした。①急性期より心臓リハビリテーションを施行し,退院時にCPXを実施した患者。②β遮断薬を服用していない患者。③洞結節からの調節を受けない不整脈を有する患者。④変時不全として症候限界時の心拍数が予測最高心拍数の75%以下の患者。
【方法】
本研究に用いたデータは,治療の一環として行なったCPXから得られたデータを基に後方視的に分析した。同一被験者におけるAT時の心拍数と,症候限界時の心拍数から,Karvonen法により得られた心拍数の2群を比較検討した。Karvonen法の運動強度係数(k)値は,ガイドラインでATと同等とされる0.4-0.6とした。統計は,正規性の検定の後,対応のある2群の差の検定を行い,有意差を求めた。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,院内の倫理審査会の承認を得て行った。
【結果】
AT時心拍数とKarvonen法のk値=0.4では,有意差なし。k=0.5では,有意差を認めた(p<0.05)。k=0.6では,有意差を認めた(p<0.01)。
【考察】
ATレベルでの運動処方を考えた場合,CPXの普及が進んでいない現状では,症候限界性の運動負荷試験を行ない,変時不全の有無を確認の上で,Karvonen法などの予測式に当てはめ運動強度を決定する事が望ましい。その際の係数は,ATとの有意差を認めないk=0.4を上限に運動処方を始めると,安全に運動処方を行なえると考える。
【理学療法学研究としての意義】
CPXを有しない施設においても,ATを基準とした運動処方が行なえる一考案となる研究である。