第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 教育・管理理学療法 口述

管理運営系2

Sat. May 31, 2014 9:30 AM - 10:20 AM 第8会場 (4F 411+412)

座長:曾根理(医療法人社団三喜会鶴巻温泉病院リハビリテーション部)

教育・管理 口述

[0677] 急性期脳卒中における早期リハビリテーション実施状況とADL改善度との関連性

八木麻衣子1,2, 網本和2,3, 松本大輔2,4, 杉山統哉2,5, 長岡望2,6 (1.聖マリアンナ医科大学東横病院リハビリテーション室, 2.日本理学療法士協会リハビリテーション・データベース協議会, 3.首都大学東京健康福祉学部理学療法士学科, 4.畿央大学健康科学部理学療法学科, 5.独立行政法人労働者健康福祉機構中部労災病院中央リハビリテーション部, 6.東大宮総合病院リハビリテーション科)

Keywords:脳卒中, 急性期リハビリ, アウトカム

【はじめに,目的】
脳卒中診療においては,ガイドラインでも早期からのリハビリテーションの実施が推奨されている。しかし,現在まで早期リハビリテーションの実施状況とアウトカムとの関連性を検討した報告は少ない。そこで本研究は,リハビリテーション患者に関しての国内最大データベースである日本リハビリテーション・データベースに登録された脳梗塞および脳出血症例において,早期リハビリテーション実施状況と,ADLの改善度との関連性を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,日本リハビリテーション・データベースの脳卒中一般病棟版に2013年までに登録された6819症例のうち,取り込み基準(1)発症後3日以内に入院した症例,2)入院時にNational Institute Health of Stroke Scale(NIHSS)評価がされている症例,3)脳梗塞および脳出血症例,4)入院時・退院時のBarthel Index(BI)評価がされている症例,5)理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語聴覚士(ST)の実施単位数が記載されている症例,6)入院中にリハビリテーションが開始された症例)を満たした4755症例であった。
観察項目は,1)患者背景:年齢,2)脳卒中重症度:入院時NIHSSスコア,3)リハビリテーション実施状況:リハビリテーション開始までの日数,1日当たりPT,OT,ST実施単位数(1日当たり単位数),在院日数,4)ADL評価:入院時と退院時のBIスコア,とした。尚,1日当たり単位数は,入院中のPT,OT,STの実施総単位数を,在院日数で除した値とした。
統計学的解析は,入院時NIHSSスコアにより5点未満を軽症群(n=2178),5~10点を中等度群(n=1122),11~22点を重症度群(n=1046),23点以上を最重症群(n=409)とした。それぞれの群ごとに,退院時と入院時のBIスコアの差(⊿BI)を目的変数とし,年齢,リハ開始までの日数,1日当たり単位数,入院時のBIスコア,在院日数を説明変数としてStepwise法による重回帰分析を行い,関連する因子の抽出を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究に用いたデータは,リハビリテーション医療の向上を目指すものであり,日本リハビリテーション医学会研究倫理審査会で,疫学調査の倫理指針に照らして倫理上の問題がないと確認されている。
【結果】
軽症群,中等度群,重症群,最重症群のNIHSSスコアの平均は1.75±1.36,7.80±3.74,11.75±5.81,22.89±9.23であった。各因子の平均±標準偏差は以下の通りである。年齢(歳)は70.6±12.36,73.90±12.24,75.16±12.65,76.07±12.42,⊿BI(点)は28.43±24.45,33.10±25.37,20.13±24.07,6.99±17.63,リハビリテーション開始までの日数(日)は,2.15±2.95,2.43±11.28,3.39±16.81,3.72±5.92,1日当たり単位数(単位)は3.41±2.37,4.53±2.53,4.20±2.50,2.92±2.14,在院日数(日)は19.03±16.49,29.01±20.57,39.98±30.61,51.01±37.39,入院時のBIスコア(点)は53.48±29.01,24.63±23.09,5.02±10.43,0.60±4.26,であった。
⊿BIに関連する重回帰式において採用された説明変数は,軽症群では入院時BIスコア(回帰係数B=-0.591),年齢(-0.452),在院日数(-0.257),1日当たり単位数(0.506)(R2=0.447),中等度群では入院時BIスコア(-0.329),年齢(-0.627),1日当たり単位数(1.364)(R2=0.176),重度群では年齢(-0.794),1日当たり単位数(1.436),リハビリテーション開始までの日数(0.085)(R2=0.226),最重症群では年齢(-0.399),1日当たり単位数(1.632),(R2=0.187)となり,重症度に関わらず年齢と1日当たり単位数との関連が認められた。
【考察】
急性期発症後の脳梗塞と脳出血のリハビリテーション実施状況とADL改善度の関連性を検討した。ADL改善度との関連が認められた因子はNIHSSスコアによる重症度別群により異なっていたが,いずれの群においても年齢とともに,1日当たり単位数が説明変数として採用された。特に,重症度が中等度以上の群において回帰係数が大きくなる傾向を認めたことを考えても,脳卒中発症後の早期より,質的のみならず量的にも十分なリハビリテーションを提供できる環境の整備の必要性を示唆しているものと考えられた。今後は,各医療機関の医療提供体制との関連性も検討し,適切な人員配置標準を定めるための検討を継続する必要があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
脳卒中急性期リハビリテーションの提供体制の整備方針の策定に当たり,一定の知見を得た研究であると考えられた。