[0687] トランポリン揺れ刺激中に臥位を保持した重症心身障害児の体幹筋の活動の経時変化
キーワード:動作学的筋電図, 肢体不自由児, その他身体運動学に関わる研究
【目的】
トランポリン(以下Tr)は厳密なルールがなく反動を利用すれば様々な姿勢で跳躍することが可能であるため療育の場面でも多く用いられている。先行研究では運動負荷を調節でき有酸素運動として肥満や糖尿病患者に適しているといった報告や遷延性意識障害の患者に対して大脳皮質の血流量に変化をもたらすことから臨床でも有用であると報告されている。しかし,運動学的な解析は未だに行われていない。そこで本研究は痙直型脳性麻痺児(以下CP)を対象とした肢体不自由児に安静臥位をとらせ,他動的にトランポリンを揺らした際の筋活動の経時的変化を加速度計と同期させを明らかにした。
【方法】
対象はCP男子3名と健常若年男子3名。CPの移動機能・知能レベルは横地分類C1以上であり計測にあたり口頭指示を理解できること,健常若年者は整形外科疾患を要さないものを選出した。
実験条件:
被検者はTr中央に臥位をとる。計測者は被検者の左側方を跳躍する。その際に被検者が臥位でいる左側のTr下に段差ブロック10cmを挿入し計測者はその直上で跳躍を行った。着地時に足底が段差ブロックに接地することで揺れ刺激の強度を均一にした。跳躍回数は20回を2試行実施した。
計測方法:
表面筋電計および加速度計のサンプリング周波数は1000Hzで実施。貼付位置は臍から側方5cmの位置から腹直筋とし,右側のみ計測を行った。計測値は各試行の跳躍で刺激が安定している6~15回の合計10回から経時変化を算出した。
【倫理的配慮】
研究に先立ち国際医療福祉大学倫理審査委員会より承認を得て,被検者には書面にて同意を得た。
【結果】
加速度計より床鉛直(以下z軸)方向への加速度の最大値の間を一周期とし,その間のz軸方向の最小値と腹直筋の最大値を記録した時間を算出した。統計処理は対応のないt検定で危険率はp<0.05とした。
結果は健常者では加速度に対して筋活動が5.28±13msec遅れて算出された。CPでは81.33±46msec遅れて出現した。
【考察】
z軸方向への身体の加速から静止する際の運動エネルギーとTrのたわみにより体幹が他動的に屈曲されたことにより筋活動が得られた。先行研究より脊髄反射弓の関与が考えられた。しかし,今回の実験から健常若年者の方がCPよりも早くz軸方向への加速度に対して早く筋活動が得られた。このことはCPの前庭感覚障害による姿勢制御の遅れから影響されていると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
様々な治療器具が誕生する中でも根強く支持されるTrで臨床を想定した研究を行った。Trは専門職でなくとも一般人でも身体活動を促すことができる可能性が示唆された一方,中枢神経系障害を反映させる形となっていた。
トランポリン(以下Tr)は厳密なルールがなく反動を利用すれば様々な姿勢で跳躍することが可能であるため療育の場面でも多く用いられている。先行研究では運動負荷を調節でき有酸素運動として肥満や糖尿病患者に適しているといった報告や遷延性意識障害の患者に対して大脳皮質の血流量に変化をもたらすことから臨床でも有用であると報告されている。しかし,運動学的な解析は未だに行われていない。そこで本研究は痙直型脳性麻痺児(以下CP)を対象とした肢体不自由児に安静臥位をとらせ,他動的にトランポリンを揺らした際の筋活動の経時的変化を加速度計と同期させを明らかにした。
【方法】
対象はCP男子3名と健常若年男子3名。CPの移動機能・知能レベルは横地分類C1以上であり計測にあたり口頭指示を理解できること,健常若年者は整形外科疾患を要さないものを選出した。
実験条件:
被検者はTr中央に臥位をとる。計測者は被検者の左側方を跳躍する。その際に被検者が臥位でいる左側のTr下に段差ブロック10cmを挿入し計測者はその直上で跳躍を行った。着地時に足底が段差ブロックに接地することで揺れ刺激の強度を均一にした。跳躍回数は20回を2試行実施した。
計測方法:
表面筋電計および加速度計のサンプリング周波数は1000Hzで実施。貼付位置は臍から側方5cmの位置から腹直筋とし,右側のみ計測を行った。計測値は各試行の跳躍で刺激が安定している6~15回の合計10回から経時変化を算出した。
【倫理的配慮】
研究に先立ち国際医療福祉大学倫理審査委員会より承認を得て,被検者には書面にて同意を得た。
【結果】
加速度計より床鉛直(以下z軸)方向への加速度の最大値の間を一周期とし,その間のz軸方向の最小値と腹直筋の最大値を記録した時間を算出した。統計処理は対応のないt検定で危険率はp<0.05とした。
結果は健常者では加速度に対して筋活動が5.28±13msec遅れて算出された。CPでは81.33±46msec遅れて出現した。
【考察】
z軸方向への身体の加速から静止する際の運動エネルギーとTrのたわみにより体幹が他動的に屈曲されたことにより筋活動が得られた。先行研究より脊髄反射弓の関与が考えられた。しかし,今回の実験から健常若年者の方がCPよりも早くz軸方向への加速度に対して早く筋活動が得られた。このことはCPの前庭感覚障害による姿勢制御の遅れから影響されていると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
様々な治療器具が誕生する中でも根強く支持されるTrで臨床を想定した研究を行った。Trは専門職でなくとも一般人でも身体活動を促すことができる可能性が示唆された一方,中枢神経系障害を反映させる形となっていた。