第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 内部障害理学療法 ポスター

代謝1

2014年5月31日(土) 09:30 〜 10:20 ポスター会場 (内部障害)

座長:井垣誠(公立豊岡病院日高医療センターリハビリテーション技術科)

内部障害 ポスター

[0705] 2型糖尿病患者における血管機能維持効果を満たす機能的電気刺激による足関節他動運動条件のカットオフ値

木村朗, 田辺将也 (群馬パース大学)

キーワード:2型糖尿病, 他動運動, 機能的電気刺激

【はじめに】発症から5年以上経過した2型糖尿病患者(以下T2DM)の細小血管障害を含む末梢循環障害などの合併症予防に対し,PADの徴候をモニタリングすることは重要である。しかしながら,客観性の担保可能な下肢の静脈弁機能テストにおいて,運動学習が必要なケースが散見される。運動不足を伴うT2DMで下肢の肥大や浮腫がある場合,いわゆる運動が苦手な人(以下,運動不得手)では一定の関節可動域を保った自動運動の正しい定位および加速を伴う繰り返し動作が困難なことが多い。そこで我々は,電気刺激を手がかりにした運動療法(EMG-FB-STIM)を開発することで,運動不得手な2型糖尿病患者での実装性の確認と下肢血管機能の維持に役立つ機能的電気刺激における足関節他動運動を用いた下肢の静脈弁機能テストの実装性を確認した。本研究の目的は,同条件における標準的な閾値電位について実際に足部他動的背屈運動を生じさせるために有効な刺激条件のカットオフ値を明らかにすることであった。
【対象と方法】5年以上経過したT2DMおよびBMIが25(25.0-31. 1)以上の10名(DM群),40歳-68歳。男女比3:1。局所運動負荷は坐位にて足部背屈運動を3分間繰り返させた。感覚の脱失がないことを確認し,TA上部外側1/3に電極を貼付し,EMG-FB-STIM実施群(IG)と,同様の動作にて通電感のみ与えるコントロール群(CG)をブラインド下ランダムの順番に行い,効果指標としてVRT,baPWV,ABIを測定し,関節可動域を記録した。VRTの改善の有無をエンドポイントとして,duty比2:1にて,要因として電流の強さを設定し,4,8,12,16,20mAの5水準を設定した。これらの水準間において効果指標の改善度として,ベースライン時から他動運動を行わせた後の数量値との差が臨床上好ましい変化を示した場合にエンドポイントにて成功,変化がなかった場合および悪化した場合を失敗としてROC解析をIBMSPSSv20により行った。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者は,ヘルシンキ宣言に則り,説明を受け同意して参加した。
【結果】IGとCG間での運動療法の結果は,運動療法後VRTの好ましい短縮効果において,両群に有意な差が認められた。刺激設定条件は12mAでは,3名で定位が乱れ,7名においてのみ成功した。16mAでは9名が成功し,20mAでは9名が成功したが,通電感覚に違和感を訴えたため,中止した。4および8mAにおいて成功者は2名のみであったが,足部自動運動における加速度のREMは12mAでのものと有意な差を認めなかった。IGでのROC解析において16mA条件が77%の感度―特異度曲線面積を示した。
【考察】機能的電気刺激は他動的局所運動を作る際,これまで報告されている超音波画像所見によると,強い通電によって,求心性収縮に伴い,同筋への栄養血管は瞬間的に弛緩するが,間もなく収縮することが判明している。IGでのROC解析において16mA条件がこの水準間において,最も血管への圧迫時間が短く静脈の再灌流を促した可能性が考えられる。今後,多様なサンプルでの試行を継続するとともに,カットオフ値付近で筋収縮下の超音波画像による対象部分での検証が求められる。本研究の知見からは,具体的な刺激設定条件として16mA近辺の刺激強度のカットオフ値と推察される。
【理学療法学研究としての意義】機能的電気刺激療法と運動の組み合わせによる糖尿病患者の運動療法の開発は,理学療法学は有利さを持っており,この開発に関わる臨床知見および実験による知見は,1次予防から3次予防まで合併症予防に関わる上で体系的に積み上げられる可能性があり,重要な意義を有するだろう。