[0707] 小型足底剪断力測定器を用いた歩行時第1中足骨頭領域にかかる力学的負荷量の測定
キーワード:歩行, 剪断力, 再現性
【はじめに,目的】
歩行中,足底には力学的負荷(垂直・前後・内外側方向)が作用しており,前後・内外側方向に作用する力(以下;剪断力)は糖尿病足病変を悪化させる要因となること,また,歩行中の足底剪断力は第1中足骨頭領域で相対的に大きいことが指摘されている。足底にかかる剪断力は床反力計を用いて測定することが可能であるが,臨床場面で使用される機会は限定されており,日常的には足底剪断力の定量的評価は行われていない。そこで本研究では試作した足底剪断力測定器を用いて健常大学生,高齢者の歩行時第1中足骨頭領域にかかる力学的負荷量を測定し,測定値の再現性について検討を行った。
【方法】
対象は20歳代の大学生20名(男性10名,女性10名)と65歳以上の高齢者38名(男性12名,女性26名)とした。15mの直線歩行路を対象者が快適と思う速さで歩くよう説明し,加速・減速区間を除いた10m区間の歩数・歩行時間および第1中足骨頭領域にかかる剪断力を5回計測した。歩行中の剪断力は,小型無線記録機器と剪断力センサを用いて連続的に測定し,測定値は小型無線記録器に蓄積した。記録器のサンプリング周波数は200Hzに設定した。測定時は対象者の足の大きさに合ったサンダル(MedSurgTM,Darco社製)を着用し,剪断力センサが左足第1中足骨頭下に位置するように中敷きを加工し固定した。剪断力測定時の小型無線記録器の設定および操作は1名の検者が行った。蓄積した測定値はパソコンに転送し,解析ソフトを用いて最大値と最小値の差(Peak to Peak:P to P)および積分値(Shear Time Integral:STI)を算出した。検者内再現性は級内相関係数(以下,ICC)を用いて検討を行った。統計解析はPASW statistics17.0(IBM社製)を使用して行い,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は星城大学倫理委員会にて承認を得た後に行った。すべての対象者には本研究の主旨・参加の自由について文書および口頭で説明を行い,研究参加の同意は署名にて確認した。
【結果】
大学生の剪断力測定結果から算出したICCは,前後成分P to P 0.97,内外側成分P to P 0.84,前後成分STI0.91,内外側成分STI 0.84であった。高齢者の剪断力測定結果から算出したICCは,前後成分P to P 0.99,内外側成分P to P 0.96,前後成分STI 0.96,内外側成分STI 0.92であった。
【考察】
試作した剪断力測定器による測定値の再現性についてICCを算出して検討を行った結果,大学生・高齢者ともに良好な再現性が確認された。3次元タクタイルセンサによる足底剪断力測定の再現性を検討した先行研究では,ICCが0.93~0.98であったことから,同測定器の精度は臨床使用に堪えうるものであると報告されている。本研究においても先行研究と近似したICCを確認することができたことから,足底剪断力測定器として活用できる可能性があると考える。
内外側成分P to PおよびSTIのICCが大学生と高齢者で異なっている点については,理由を特定することはできなかった。この点は本研究の限界であると考える。また,本研究では同一検者が行った測定結果について再現性を確認したが,検者が異なる場合の再現性も確認する必要があると考えられ,今後の検討課題としたい。
【理学療法学研究としての意義】
足底にかかる剪断力の測定は床反力計やカスタマイズされた機器を用いて行われており,限られた環境下で実施にとどまっているのが現状である。
今回試作した足底剪断力測定器は小型で容易に持ち運びができ,歩行中に力学的負荷が集中する領域での測定が簡便に行えるため,実用化されれば臨床場面も日常的に剪断力測定が行える可能性がある。本研究で得られた測定結果の再現性に関する所見は,今後,理学療法の臨床場面における足底剪断力の定量的評価の確立に寄与するものと考える。
歩行中,足底には力学的負荷(垂直・前後・内外側方向)が作用しており,前後・内外側方向に作用する力(以下;剪断力)は糖尿病足病変を悪化させる要因となること,また,歩行中の足底剪断力は第1中足骨頭領域で相対的に大きいことが指摘されている。足底にかかる剪断力は床反力計を用いて測定することが可能であるが,臨床場面で使用される機会は限定されており,日常的には足底剪断力の定量的評価は行われていない。そこで本研究では試作した足底剪断力測定器を用いて健常大学生,高齢者の歩行時第1中足骨頭領域にかかる力学的負荷量を測定し,測定値の再現性について検討を行った。
【方法】
対象は20歳代の大学生20名(男性10名,女性10名)と65歳以上の高齢者38名(男性12名,女性26名)とした。15mの直線歩行路を対象者が快適と思う速さで歩くよう説明し,加速・減速区間を除いた10m区間の歩数・歩行時間および第1中足骨頭領域にかかる剪断力を5回計測した。歩行中の剪断力は,小型無線記録機器と剪断力センサを用いて連続的に測定し,測定値は小型無線記録器に蓄積した。記録器のサンプリング周波数は200Hzに設定した。測定時は対象者の足の大きさに合ったサンダル(MedSurgTM,Darco社製)を着用し,剪断力センサが左足第1中足骨頭下に位置するように中敷きを加工し固定した。剪断力測定時の小型無線記録器の設定および操作は1名の検者が行った。蓄積した測定値はパソコンに転送し,解析ソフトを用いて最大値と最小値の差(Peak to Peak:P to P)および積分値(Shear Time Integral:STI)を算出した。検者内再現性は級内相関係数(以下,ICC)を用いて検討を行った。統計解析はPASW statistics17.0(IBM社製)を使用して行い,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は星城大学倫理委員会にて承認を得た後に行った。すべての対象者には本研究の主旨・参加の自由について文書および口頭で説明を行い,研究参加の同意は署名にて確認した。
【結果】
大学生の剪断力測定結果から算出したICCは,前後成分P to P 0.97,内外側成分P to P 0.84,前後成分STI0.91,内外側成分STI 0.84であった。高齢者の剪断力測定結果から算出したICCは,前後成分P to P 0.99,内外側成分P to P 0.96,前後成分STI 0.96,内外側成分STI 0.92であった。
【考察】
試作した剪断力測定器による測定値の再現性についてICCを算出して検討を行った結果,大学生・高齢者ともに良好な再現性が確認された。3次元タクタイルセンサによる足底剪断力測定の再現性を検討した先行研究では,ICCが0.93~0.98であったことから,同測定器の精度は臨床使用に堪えうるものであると報告されている。本研究においても先行研究と近似したICCを確認することができたことから,足底剪断力測定器として活用できる可能性があると考える。
内外側成分P to PおよびSTIのICCが大学生と高齢者で異なっている点については,理由を特定することはできなかった。この点は本研究の限界であると考える。また,本研究では同一検者が行った測定結果について再現性を確認したが,検者が異なる場合の再現性も確認する必要があると考えられ,今後の検討課題としたい。
【理学療法学研究としての意義】
足底にかかる剪断力の測定は床反力計やカスタマイズされた機器を用いて行われており,限られた環境下で実施にとどまっているのが現状である。
今回試作した足底剪断力測定器は小型で容易に持ち運びができ,歩行中に力学的負荷が集中する領域での測定が簡便に行えるため,実用化されれば臨床場面も日常的に剪断力測定が行える可能性がある。本研究で得られた測定結果の再現性に関する所見は,今後,理学療法の臨床場面における足底剪断力の定量的評価の確立に寄与するものと考える。