第49回日本理学療法学術大会

Presentation information

発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

福祉用具・地域在宅2

Sat. May 31, 2014 9:30 AM - 10:20 AM ポスター会場 (生活環境支援)

座長:髙木章好(かすみがうら居宅介護支援センター訪問リハビリテーション部)

生活環境支援 ポスター

[0709] 回復期リハビリテーション病棟における「家族が述べる在宅復帰のための条件」と在宅復帰に関する実態調査

勢登香織 (南草津病院)

Keywords:回復期リハビリテーション, 在宅復帰, トイレ動作

【はじめに,目的】
回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)では,できるだけ早期に在宅復帰のための条件を明らかにし,それに基づいた理学療法の組み立てが必要となる。そのため,我々は入院時に家族面接を行い,家族に在宅復帰のための条件を聞くようにしている。それらの条件には,トイレ動作の自立やセルフケアの自立等が多くあげられるが,こうした条件は地域や社会的背景等の影響も反映することから,現場では絶えず検討しておく必要性が認められる。
そこで,本研究では,在宅復帰に大きな影響を及ぼすとされているトイレ動作の自立という条件に着目し,その条件のクリアの有無と在宅復帰との関係を調査し検討した。
【方法】
対象は,平成24年11月から平成25年11月までに当院回復期リハ病棟に入院した患者125名の中から,家族が在宅復帰の条件をトイレ動作の自立とした患者27名とした。
方法は,対象を条件のクリアの有無で,クリア群とアンクリア群の2群に分類し,次に,各群の1)人数,2)性別,3)平均年齢,4)疾患別,5)同居者数,6)入・退院時のFunctional Independence Measure(以下FIM)の合計点数(以下,FIM合計),運動項目合計点数(以下,FIM運動),認知項目合計点数(以下,FIM認知)の6項目,7)介護力(宮森ら1992)の①介護者の健康状態,②介護者の専念,③介護を代われるものの有無,④住宅の有無,⑤患者の病室の有無の5項目,8)在宅復帰率,の計17項目を調査した。最後に,2群間で各項目を比較し,6)のFIM合計,FIM運動,FIM認知については,各平均値を,クリアとアンクリア群,入院と退院時で比較し,統計学的検定(t検定)を行った。危険率は0.05未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
後方視的研究となるため,個人情報の取り扱いは十分に留意し,当院の倫理委員会の了承を得て実施した。
【結果】
結果,条件クリア群の内訳は1)13名,2)性別:男4,女9名,3)平均年齢:83.4±8.7歳,4)疾患別:運動器9名,脳血管4名,5)同居者数:2.6±1.0名,6)FIM:入・退院,FIM合計85.4±21.2・100.1±22.6,FIM運動56.5±15.5・72.0±17.6,FIM認知28.9±7.6・28.1±7.7,7)介護力:①健康10名,病弱3名,②可能7名,不可能6名,③いる6名,いない7名,④持家12名,賃貸1名,⑤有13名,無0名,8)在宅復帰率:100%であった。条件アンクリア群の内訳は1)14名,2)性別:男8,女6名,3)平均年齢:81.1±8.9歳,4)疾患別:運動器7名,脳血管7名,5)同居者数:2.9±1.5名,6)FIM:入・退院,FIM合計54.7±15.8・55.6±22.7,FIM運動33.8±12.9・35.3±22.7,FIM認知20.9±6.8・20.3±6.9,7)介護力:①健康7名,病弱7名,②可能7名,不可能7名,③いる2名,いない12名,④持家12名,賃貸2名,⑤有14名,無0名,8)在宅復帰率,42.9%であった。
次に,条件のクリアとアンクリア群によるFIMの比較では,クリア群の入,退院のFIM合計,FIM運動,FIM認知すべてにおいて,アンクリア群のそれよりも高い値を示した(P<0.05)。次に,入院と退院時によるFIM比較では,クリア群のFIM合計とFIM運動では,退院時の方がより高い値が示された(P<0.05)が,FIM認知には統計学的に有意な差は認められなかった(N.S.)。アンクリア群はFIM合計,FIM運動,FIM認知では,どの項目においても統計学的に有意な差は認められなかった(N.S.)。
【考察】
本研究の結果,2群の,1)人数,2)性別,3)平均年齢,4)疾患別,5)同居者数に,明らかな違いは認められなかった。次に,6)FIMをみていくと,クリア群とアンクリア群に,FIM合計,運動,認知ともにクリア群がアンクリア群よりも高い値を示していた。また,入,退院時についても,クリア群のFIM運動に有意に高い値が示されていた。これらからは,あらためてトイレ動作は運動・認知機能と関係が深い動作であることや,運動機能改善がトイレ自立と関連していることが示唆された。
他方,7)介護力をみていくと,クリア群とアンクリア群では,①~⑤の5項目に明らかに違いは認められなかった。しかしながら,興味深かったのは,各群ともに持家が多く,自宅に患者の病室があるものが多いことであった。これは3世帯同居率が高く,持ち家率が高いという当院周辺の地域性を反映しているものと考えられた。次に8)在宅復帰率をみていくとクリア群では100%であったが,アンクリア群においても42.9%となっていた。これについては,住居環境,家族の介護力等,当院を取り巻く地域特性が在宅復帰率に大きく影響したものと考えられる。今後は,さらに条件別や疾患別などの分析を加え,地域特性を生かした理学療法の展開に貢献していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の意義は,在宅復帰に大きな影響を及ぼすとされているトイレ動作の自立という条件に着目し,その条件のクリアの有無と在宅復帰との関係を明らかにしたところにある。