第49回日本理学療法学術大会

Presentation information

発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

福祉用具・地域在宅2

Sat. May 31, 2014 9:30 AM - 10:20 AM ポスター会場 (生活環境支援)

座長:髙木章好(かすみがうら居宅介護支援センター訪問リハビリテーション部)

生活環境支援 ポスター

[0713] 通所リハビリテーションでの目標設定(参加レベル)についての現状

竹山和宏, 橋場悠一, 常田衛, 橋本智子, 宝泉百合香 (入善老人保健施設こぶしの庭)

Keywords:通所リハビリ, ICF, 目標設定

【はじめに】
先行研究では,外来患者に対しての目標設定の項目は,歩行機能に関するものが多かったとの報告はあるが,通所リハビリでの参加レベルの目標設定に関する報告は少ない。また,高齢者リハビリテーション研究会では,専門職に求められることとして,状態像の異なる多くの高齢者に漠然と集団的・画一的に実施するのではなく,個々の利用者と協働して作成した個別的な目標に向けて利用者が主体的に取り組めるようにする必要がある。と報告している。そして,当施設でも,目標設定の重要さを認識し,本人・家族からの希望,興味関心などの聴取や,在宅訪問(月4回以上の利用者に対して),ケアマネージャーからの情報収集に努め目標を設定しているが,参加レベルでの具体的な目標設定は不十分であるように思われた。そこで,本研究の目的は,カルテを後方視的に調査し,目標設定についての現状や,個別的な目標設定ができていた症例と認知症,年齢,要介護度の関係を明らかにすることとした。
【方法】
対象は利用定員60名,リハスタッフ2名(OT1名,PT1名)の当施設において2012年4月から2013年3月まで,新規に通所リハビリを開始した利用者,女性40名,男性20名の計60名とした。この内,初期評価(利用開始から2週間以内)までに利用停止などで目標設定ができなかった6名を調査から除外した。対象者のリハビリ実施計画書(初期評価時)より,主目標(参加レベル)を抽出し目標が個別的(以下A群)か画一的(以下B群)かを判定した。尚,A群かB群かの判定は,リハスタッフ3名で行い,一つでも個別的な目標が設定されていればA群とし,施設の活動に参加し楽しむ,身の回りの事をする,通院,などはB群とした。さらに,個別的な目標設定ができていた例とHDS-R,年齢,要介護度の関係をスピアマンの順位相関係数を用い行った。統計解析はspearmanの順位相関係数マトリクス作成ツールvsn.1を使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
今回の報告にあたり,施設長の承認を得た。本研究の調査対象者に対しては,個人が特定されない形式で発表することの説明を口頭および書面にて行い同意を得た。その他,疫学研究に関する倫理指針(文部科学省,厚生労働省)に従い,リハビリ実施計画書から得られた個人情報を目的に必要な範囲を越えて取り扱わず,匿名化し統計解析を行った。
【結果】
対象者は54名。基本統計量として年齢は(平均81.9±6.7歳),HDS-Rは(平均13.2±8.3点),要介護度は(平均1.9±1.3)であった。個別的な目標が設定されていたのは17名,総数21個。対象者の内31%であった。内容は外出(近所の知人に会う,3輪自転車でショッピングセンターまで買い物に行く,家の周囲を散歩するなど):9個(43%),役割(家族の声かけにて茶碗洗いをする,草むしり,衣類の整理をするなど):6個(29%),余暇活動(流木磨き,テレビを見るなど):3個(14%),その他:3個(14%)であった。個別的な目標設定ができていた例とHDS-R,年齢,要介護度との関係では,相関は認められなかった。HDS-R(r=0.06),年齢(r=0.001),要介護度(r=0.13)であった。
【考察】
参加レベルでの目標設定は,日々,臨床の中で難しく感じていた。今回の結果で,個別的な目標設定ができていた例は31%であった。家族の介護負担が大きい重度認知症の方,90歳代後半の方,何年も寝たきり状態の方,個別性が重要といわれ理解はしていたが,これらの方の目標設定をどのようにすればよいか迷ってもいた。本人との意思疎通が図りにくい例では,目標設定が難しく漠然とした目標になりがちなのではないかとの仮説を立てた。しかし,調査した結果,HDS-R,要介護度などとの相関はないことが分かった。個別的な目標設定には,利用者側の要因ではなく職員の高い意識と情報収集能力,目標立案能力が必要と考えられた。
今後は,ICFや認知症の人のためのケアマネジメントセンター方式についてより理解を深めたい。また,コミュニケーションを促進するためのiPadアプリ(ADOC)の活用や,リハビリ実施計画書の項目に頻度を記入する欄を設け,達成度を測れるような形にしたい。利用者の目標を設定するには,自らが人生の明確な目標を持つとともに質の高い生活を送ることが必要と感じた。一例一例,丁寧に症例を積み重ね,日々の業務に取り組んでいきたい。
【理学療法学研究としての意義】
通所リハビリでの目標設定についての現状を調査したことで課題が明確になった。参加レベルでの目標を具体的に提示することで,他施設におけるリハビリマネジメントの参考になる。