第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 物理療法 ポスター

その他

Sat. May 31, 2014 9:30 AM - 10:20 AM ポスター会場 (物理療法)

座長:森下勝行(郡山健康科学専門学校応用理学療法学科)

物理療法 ポスター

[0717] 高周波治療器による温熱刺激が足関節柔軟性と軟部組織硬度に与える影響について

佐藤慎也 (県立広島大学保健福祉学部理学療法学科)

Keywords:高周波治療器, 関節可動域, 軟部組織硬度

【はじめに,目的】近年,海外のスポーツ分野を中心に高周波治療器Tecnosix-Red Coral(以下,Tecnosix)が用いられている。この機器の特徴として,導子によって熱の深達度を変更することが可能である。capacitive modeでは水分含有量の多い表在組織に対して有効であり,resistive modeは水分含有量の少ない深部組織に対してより有効であると考えられている。先行研究では,Tecnosixによる温熱刺激は表面・深部温度を上昇させると報告されているが,臨床的効果に関する報告は少ない。そこで,本研究はTecnosixによる温熱刺激方法の違いが組織の伸張性と硬度に与える影響について検討した。
【方法】健常学生32名(男性16名,女性16名)を対象とした。高周波治療器Tecnosixを使用し,実験条件はcapacitive照射群,resistive照射群,ダミー照射群,control群(以下,cap群,res群,ダミー群,cnt群)の4群とした。まず被験者に足関節柔軟性の計測を一度練習させた後,5分間の馴化時間をとり,照射前の計測を実施した。さらに5分間の馴化時間を設けた後,それぞれの条件で照射を実施した。照射部位は右下腿三頭筋筋腱移行部とし,導子に専用のクリームを塗布した後,ストローク法で照射を実施した。周波数は1000kHz,照射出力は50~55%とした。照射中は「Dose」による主観的温熱感を聴取し,DoseIIIが10分間維持できた時点,また照射開始から15分間経過した時点のいずれかで照射終了とした。表面温度の計測はサーモグラフィーFSV-1100を用い,照射前計測終了後の馴化時間から照射終了時まで行った。軟部組織硬度の計測にはNEUTONE TDM-N1を用いた。足関節底背屈中間位で腹臥位をとらせ,計測部位は右下腿三頭筋筋腱移行部とした。計測は照射前および照射後にそれぞれ5回ずつ行い,最大値と最小値を除いた残りの数値の平均値を各計測値とした。足関節柔軟性の計測はBennelらが考案した,Dosal Flexion Lungeによる壁から第一趾間距離の計測方法を用いた。足関節柔軟性および軟部組織硬度について前後差を求めた後,Kruskal-Wallis検定およびSteel-Dwassによる群間比較を行った。なお,統計学的有意水準は危険率5%未満を有意差あり,10%未満を有意傾向ありと判断した。
【倫理的配慮,説明と同意】全ての被験者に対し本研究の目的について十分に説明し,文書にて同意を得た。なお,本研究はすべてヘルシンキ宣言に基づいて実施した。
【結果】表面温度は照射群において,クリーム塗布後の温度低下とその後の温度上昇を認めた。さらに,照射群においてDoseIIIを維持することが可能であった。軟部組織硬度の前後差はcap群-1.96±1.33N,res群-2.46±1.75N,ダミー群-0.67±2.44N,cnt群1.00±1.69Nであった。cnt群と比較しcap群(p=0.02)およびres群(p=0.02)にて軟部組織硬度の低下を認めた。足関節柔軟性の前後差は,cap群8.13±8.63mm,res群9.75±6.11mm,ダミー群8.88±7.00mm,cnt群0.13±12.36mmであった。cnt群と比較しres群(p=0.07)およびダミー群(p=0.06)にて足関節柔軟性の増加傾向を認めた。
【考察】先行研究ではcap群,res群ともに約3℃の表面温度上昇が認められているが,本研究においてはcap群で約7℃,res群で約5℃の上昇が認められた。また,照射群でDoseIIIを維持することが可能であった。これより本研究では,出力を調節したことでより高い温熱効果をもたらすことが可能であったと考える。軟部組織硬度についてはcnt群に対し,cap群,res群で軟部組織硬度の低下が認められた。先行研究より温熱刺激はコラーゲン線維の伸張性を高め,軟部組織硬度の低下に作用することが報告されており,本研究においても類似した結果が得られた。足関節柔軟性について,本研究ではcnt群に対しres群,ダミー群で足関節柔軟性が増加する傾向を認めた。先行研究では,温熱刺激によって筋の伸張性が改善したと報告されており,本研究においてもこれに近い結果が得られたと考える。また,軟部組織に対する触圧刺激はマッサージ効果をもたらすと報告されている。本研究では導子による触圧刺激がマッサージ効果につながった可能性が示唆された。そのため,Tecnosixでは温熱効果だけでなく,導子によるマッサージ効果も期待される。
【理学療法学研究としての意義】Tecnosix照射は軟部組織に対し,温熱効果を発揮することが知られているが,エビデンスは少なく,本実験はその効果を立証するものである。また,被験者の主観的温熱感に基づき出力を調節することで,より高い温熱効果をもたらす可能性が示唆された。今後,他の物理療法機器との比較や温熱以外の効果についても検証していく必要がある。なお,本実験における利益相反はない。