[0720] 変形性膝関節症患者の矢状面骨盤傾斜の分類と膝アライメントの関連性
Keywords:変形性膝関節症, 矢状面骨盤傾斜, 膝アライメント
【はじめに,目的】変形性膝関節症(膝OA)患者の立位は,大きく骨盤前傾型(前傾型)と骨盤後傾型(後傾型)に分類される。福井は,各型の立位膝関節を観ると,共に屈曲位ではあるが,前傾型は後傾型に比べ,内反-伸展位となり,後傾型は前傾型に比べ,内反-屈曲位を呈していると述べている。また,ADLにおける姿勢は,各関節の可動域に影響すると言われており,前記姿勢をとり続けることで,膝屈曲拘縮の原因となることも考えられる。このことから,矢状面骨盤傾斜と膝伸展可動域・FTAには,なんらかの関係性や特徴があることが推測できる。しかし,このような内容の先行研究は見当たらない。本研究では矢状面骨盤傾斜や膝伸展可動域・FTAを調査し,関係性や特徴を見出すことで,OA患者やOA予備群に対する,アプローチを適切に実施するための根拠を得ることを目的とする。
【方法】対象は,H24年9月~H25年9月までに当院にて,内側型膝OAでOpe適応と診断を受けた,31名40肢(年齢:76.19±4.13)で膝OAグレードはIV以上である。方法は,1.対象を前傾型と後傾型に分類した。2.前・後傾型の分類は,福井による,上前腸骨棘(以下,ASIS)と上後腸骨棘(以下,PSIS)の高さを評価し,PSISが2~3横指高いものを基準とし,これよりPSISが高い場合を前傾位,ASISが高い場合を後傾位とする方法を用いた。本研究では,ASISとPSISの高低差が1横指以下を後傾型,3横指以上を前傾型とした。3.骨盤傾斜角の測定は,①肢位は,足踏みを6回行った,静止立位。②ASISとPSISの頂点を触察しテープを貼付。③ASISとPSISから,床と平行に壁との垂直線を取り,壁との接点に印付け(白紙上)。④床面との平行線とASISとPSISを結んだ線とのなす角を測定。4.膝伸展可動域は日本整形外科学会の基準をもとに測定。5.FTAは画像閲覧機器SYNAPSE(FUJIFILM製)の角度測定モードを使用し,立位全下肢画像を対象に測定した。6.統計処理は,①前傾型と後傾型間の骨盤傾斜角の差をマン・ホイットニー検定を用い比較検討した。②前傾型と後傾型それぞれにおける,膝伸展可動域との相関関係にはスピアマンの順位相関係数検定を用いた。③型分類を行わずに調査した,膝伸展角度-傾斜角・FTA-傾斜角・FTA-膝伸展角度においては,前2項目がスピアマンの順位相関係数検定,後者がピアソンの相関係数検定を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】全ての対象者には,本研究の趣旨を説明し,同意を得た上で実施した。
【結果】1.骨盤傾斜型分類の結果,内訳は①前傾型膝OA患者20名26肢(年齢:77.2±4.32歳)②後傾型膝OA患者11名14肢(年齢:73.9±3.96歳)であった。2.矢状面骨盤傾斜角において,前傾型・後傾型間に有意な差が認められた(P<0.01)。3.前傾型群と後傾型群それぞれにおいて,膝伸展可動域との間に相関関係は認められなかった。4.型分類を行わずに調査した,膝伸展角度-矢状面骨盤傾斜角・FTA-矢状面傾斜角・FTA-膝伸展角度の間にも相関関係は認められなかった。
【考察】本研究において,骨盤前・後傾型の分類方法は,有用であることが分かった。対象者に,骨盤中間位型はみられず,前傾型と後傾型のいずれかに該当していた。さらに分類を行わずに調査した,膝伸展角度-骨盤傾斜角・FTA-骨盤傾斜角で相関関係が認められなかった。以上のことから,膝OA群の静止立位については,骨盤中間位から逸脱していることが示唆された。静止立位,骨盤に限定するならば,膝OAに対するPTアプローチは,骨盤の傾斜に関係なく膝は屈曲位を呈するので,中間位を目指す必要性が推測される。石井は,歩行立脚期に骨盤後傾があるために,大腿骨内旋による,相対的な下腿骨外旋が困難となる結果,スクリューホームムーブメントが起きず,膝伸展が困難になると述べているように,歩行中の骨盤傾斜,つまり動的評価の重要性に着目している。本研究は,静止立位における骨盤傾斜の評価であり,今後は骨盤傾斜の動的評価の必要性も示唆された。
【理学療法学研究としての意義】骨盤前・後傾型の分類方法は,臨床上有用である。また,骨盤中間位型はみられず,前傾型・後傾型のいずれかに該当していたことや,骨盤傾斜と膝伸展角度・FTAに相関関係がなかったことから,他因子(骨盤以外の部位)を加味しつつ,骨盤中間位を目指すPTアプローチを行う必要性を感じた。
【方法】対象は,H24年9月~H25年9月までに当院にて,内側型膝OAでOpe適応と診断を受けた,31名40肢(年齢:76.19±4.13)で膝OAグレードはIV以上である。方法は,1.対象を前傾型と後傾型に分類した。2.前・後傾型の分類は,福井による,上前腸骨棘(以下,ASIS)と上後腸骨棘(以下,PSIS)の高さを評価し,PSISが2~3横指高いものを基準とし,これよりPSISが高い場合を前傾位,ASISが高い場合を後傾位とする方法を用いた。本研究では,ASISとPSISの高低差が1横指以下を後傾型,3横指以上を前傾型とした。3.骨盤傾斜角の測定は,①肢位は,足踏みを6回行った,静止立位。②ASISとPSISの頂点を触察しテープを貼付。③ASISとPSISから,床と平行に壁との垂直線を取り,壁との接点に印付け(白紙上)。④床面との平行線とASISとPSISを結んだ線とのなす角を測定。4.膝伸展可動域は日本整形外科学会の基準をもとに測定。5.FTAは画像閲覧機器SYNAPSE(FUJIFILM製)の角度測定モードを使用し,立位全下肢画像を対象に測定した。6.統計処理は,①前傾型と後傾型間の骨盤傾斜角の差をマン・ホイットニー検定を用い比較検討した。②前傾型と後傾型それぞれにおける,膝伸展可動域との相関関係にはスピアマンの順位相関係数検定を用いた。③型分類を行わずに調査した,膝伸展角度-傾斜角・FTA-傾斜角・FTA-膝伸展角度においては,前2項目がスピアマンの順位相関係数検定,後者がピアソンの相関係数検定を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】全ての対象者には,本研究の趣旨を説明し,同意を得た上で実施した。
【結果】1.骨盤傾斜型分類の結果,内訳は①前傾型膝OA患者20名26肢(年齢:77.2±4.32歳)②後傾型膝OA患者11名14肢(年齢:73.9±3.96歳)であった。2.矢状面骨盤傾斜角において,前傾型・後傾型間に有意な差が認められた(P<0.01)。3.前傾型群と後傾型群それぞれにおいて,膝伸展可動域との間に相関関係は認められなかった。4.型分類を行わずに調査した,膝伸展角度-矢状面骨盤傾斜角・FTA-矢状面傾斜角・FTA-膝伸展角度の間にも相関関係は認められなかった。
【考察】本研究において,骨盤前・後傾型の分類方法は,有用であることが分かった。対象者に,骨盤中間位型はみられず,前傾型と後傾型のいずれかに該当していた。さらに分類を行わずに調査した,膝伸展角度-骨盤傾斜角・FTA-骨盤傾斜角で相関関係が認められなかった。以上のことから,膝OA群の静止立位については,骨盤中間位から逸脱していることが示唆された。静止立位,骨盤に限定するならば,膝OAに対するPTアプローチは,骨盤の傾斜に関係なく膝は屈曲位を呈するので,中間位を目指す必要性が推測される。石井は,歩行立脚期に骨盤後傾があるために,大腿骨内旋による,相対的な下腿骨外旋が困難となる結果,スクリューホームムーブメントが起きず,膝伸展が困難になると述べているように,歩行中の骨盤傾斜,つまり動的評価の重要性に着目している。本研究は,静止立位における骨盤傾斜の評価であり,今後は骨盤傾斜の動的評価の必要性も示唆された。
【理学療法学研究としての意義】骨盤前・後傾型の分類方法は,臨床上有用である。また,骨盤中間位型はみられず,前傾型・後傾型のいずれかに該当していたことや,骨盤傾斜と膝伸展角度・FTAに相関関係がなかったことから,他因子(骨盤以外の部位)を加味しつつ,骨盤中間位を目指すPTアプローチを行う必要性を感じた。