[0724] 変形性膝関節症の体幹機能
キーワード:変形性膝関節症, 側腹筋, Draw-in
【目的】変形性膝関節症(膝OA)に対する理学療法は,膝関節のみならず下肢・体幹など全身的なアプローチが必要である。近年,体幹トレーニングとして,コアトレーニングの重要性が報告されており,中でも腹部引き込み運動(Draw-in)がよく用いられる。しかし臨床では,体幹機能が低下しているために,Draw-inをスムーズに行えない症例をしばしば経験する。膝OAに対する理学療法において体幹トレーニングは一般的に用いられているが,膝OA患者の体幹機能を客観的に調査した報告は少ない。そこで本研究の目的は膝OA患者の体幹機能を明らかにすることとした。
【対象及び方法】対象は,当院で膝OAと診断され,脊椎・腹部・下肢に手術の既往が無い23例(男性3例,女性20例,平均年齢68歳)(膝OA群)と健常者16例(男性3例,女性13例,平均年齢64歳)(健常群)とした。体幹機能は,超音波診断装置(Nemio17 TOSHIBA製)を用い,直立座位でDraw-inを3回行ってもらい,安静時側腹筋厚とDraw-in時側腹筋厚の平均変化率にて評価した。測定部位は,腋窩線上における肋骨辺縁と腸骨陵の中央部とし,プローブはその長軸が腋窩線上に直交するように置き,Bモード8.0MHzにて測定した。画像解析はImageJを用い,外腹斜筋(EO),内腹斜筋(IO),腹横筋(TA)これらの値を合計した側腹筋(LAB)の筋厚をそれぞれ測定した。検者は測定の信頼性を高めるため事前に測定の練習を十分行った同一者とし,被検者には測定前に,Draw-inの練習を行ってもらってから測定した。これらの条件で測定した筋厚変化率を健常群とOA群で比較した。また膝OA群内で,X-P立位正面画像の関節裂隙幅と膝伸展可動域に対するLAB筋厚変化率の相関を検討した。統計処理は,スチューデントt検定,マン・ホイットニ検定,ピアソン相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】大久保病院倫理委員会の承認を得て,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを説明し,同意を得ることができた場合のみ対象として計測を行った。
【結果】膝OA群と健常群の比較は以下の結果となった。EOは膝OA群115.2±6.2%,健常群129.2±13.8%。IOは膝OA群113.0±4.0%,健常群137.1±22.0%。TAは膝OA群121.5±7.1%,健常群156.1±29.7%。LABは膝OA群116.5±3.5%,健常群141.1±16.5%であり,全ての項目で膝OA群は健常群に比べ低値を示した(p<0.01)。すなわち,膝OAでは体幹機能が低下していた。LAB筋厚変化率と関節裂隙幅に正の相関(r=0.57 p<0.01)が認められた。またLAB筋厚変化率と膝伸展可動域に負の相関(r=-0.54 p<0.01)が認められた。すなわち,膝OAの進行に伴い,体幹機能が低下していた。
【考察】今回の結果より膝OA群は健常群に比べ,体幹筋機能が有意に低下していた。膝関節内反アライメントを制動する観点から股関節外転筋,大退四頭筋,ハムストリングス,大腿筋膜張筋,股関節内転筋が重要となってくる。これらの筋群は全て骨盤に起始を有するため,その機能を十分に発揮する為に側腹筋などのコアの安定性が重要となる。また,膝OA歩行においてはトレンデレンブルグ歩行などで生じる骨盤の側方傾斜は膝関節内側荷重応力を増大させると報告されており,膝OAに対する理学療法では膝関節だけでなく体幹機能も重視されている。今回の結果より膝OA群のLAB筋厚変化率は健常群の8割程度であり,理学療法を行ううえで体幹トレーニングの重要性を再確認した。また,膝関節の変形が進行するに伴い体幹機能は低下していた。さらに,膝関節伸展可動域とLAB筋厚変化率と負の相関が認められた。これは膝関節屈曲拘縮が強いほど体幹機能が低下していることを意味している。機序としては,立位で膝屈曲位・内反膝を呈すると運動連鎖により骨盤は後傾位となり,側腹筋の起始・停止が近づき短縮位となる。体幹筋の筋出力が低下したマルアライメント姿勢が膝OA進行に伴い固定化され体幹機能低下につながったと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】本研究により,膝OA群は健常群に比べ,体幹機能が低下しておりLAB筋厚変化率は健常群の8割程度であった。またOAの進行に伴い体幹機能は低下しており膝屈曲拘縮が強い症例程体幹機能は低下していた。今後は症例数を増やし,跛行やlateral thrustの有無,姿勢アライメントで体幹機能に差があるのか検討していきたい。
【対象及び方法】対象は,当院で膝OAと診断され,脊椎・腹部・下肢に手術の既往が無い23例(男性3例,女性20例,平均年齢68歳)(膝OA群)と健常者16例(男性3例,女性13例,平均年齢64歳)(健常群)とした。体幹機能は,超音波診断装置(Nemio17 TOSHIBA製)を用い,直立座位でDraw-inを3回行ってもらい,安静時側腹筋厚とDraw-in時側腹筋厚の平均変化率にて評価した。測定部位は,腋窩線上における肋骨辺縁と腸骨陵の中央部とし,プローブはその長軸が腋窩線上に直交するように置き,Bモード8.0MHzにて測定した。画像解析はImageJを用い,外腹斜筋(EO),内腹斜筋(IO),腹横筋(TA)これらの値を合計した側腹筋(LAB)の筋厚をそれぞれ測定した。検者は測定の信頼性を高めるため事前に測定の練習を十分行った同一者とし,被検者には測定前に,Draw-inの練習を行ってもらってから測定した。これらの条件で測定した筋厚変化率を健常群とOA群で比較した。また膝OA群内で,X-P立位正面画像の関節裂隙幅と膝伸展可動域に対するLAB筋厚変化率の相関を検討した。統計処理は,スチューデントt検定,マン・ホイットニ検定,ピアソン相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】大久保病院倫理委員会の承認を得て,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを説明し,同意を得ることができた場合のみ対象として計測を行った。
【結果】膝OA群と健常群の比較は以下の結果となった。EOは膝OA群115.2±6.2%,健常群129.2±13.8%。IOは膝OA群113.0±4.0%,健常群137.1±22.0%。TAは膝OA群121.5±7.1%,健常群156.1±29.7%。LABは膝OA群116.5±3.5%,健常群141.1±16.5%であり,全ての項目で膝OA群は健常群に比べ低値を示した(p<0.01)。すなわち,膝OAでは体幹機能が低下していた。LAB筋厚変化率と関節裂隙幅に正の相関(r=0.57 p<0.01)が認められた。またLAB筋厚変化率と膝伸展可動域に負の相関(r=-0.54 p<0.01)が認められた。すなわち,膝OAの進行に伴い,体幹機能が低下していた。
【考察】今回の結果より膝OA群は健常群に比べ,体幹筋機能が有意に低下していた。膝関節内反アライメントを制動する観点から股関節外転筋,大退四頭筋,ハムストリングス,大腿筋膜張筋,股関節内転筋が重要となってくる。これらの筋群は全て骨盤に起始を有するため,その機能を十分に発揮する為に側腹筋などのコアの安定性が重要となる。また,膝OA歩行においてはトレンデレンブルグ歩行などで生じる骨盤の側方傾斜は膝関節内側荷重応力を増大させると報告されており,膝OAに対する理学療法では膝関節だけでなく体幹機能も重視されている。今回の結果より膝OA群のLAB筋厚変化率は健常群の8割程度であり,理学療法を行ううえで体幹トレーニングの重要性を再確認した。また,膝関節の変形が進行するに伴い体幹機能は低下していた。さらに,膝関節伸展可動域とLAB筋厚変化率と負の相関が認められた。これは膝関節屈曲拘縮が強いほど体幹機能が低下していることを意味している。機序としては,立位で膝屈曲位・内反膝を呈すると運動連鎖により骨盤は後傾位となり,側腹筋の起始・停止が近づき短縮位となる。体幹筋の筋出力が低下したマルアライメント姿勢が膝OA進行に伴い固定化され体幹機能低下につながったと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】本研究により,膝OA群は健常群に比べ,体幹機能が低下しておりLAB筋厚変化率は健常群の8割程度であった。またOAの進行に伴い体幹機能は低下しており膝屈曲拘縮が強い症例程体幹機能は低下していた。今後は症例数を増やし,跛行やlateral thrustの有無,姿勢アライメントで体幹機能に差があるのか検討していきたい。