[0726] ハンドヘルドダイナモメーターを用いた股関節内旋・外旋筋力測定の再現性
Keywords:股関節内旋・外旋, 筋力, Hand Held Dynamometer
【はじめに,目的】
股関節は荷重関節であり,構造的に安定した関節といわれる。しかし,本邦での変形性股関節症の原因の多数を占める臼蓋形成不全では臼蓋の被覆減少に伴う不安定性を有するため,筋による安定性向上を目的とした理学療法が重要となる。なかでも,股関節の内旋・外旋筋は股関節の安定性に寄与するため,その筋力を正確に測定することは臨床的な意義が高いといえる。しかし,内旋・外旋筋力の測定は,座位で股関節90°屈曲位で測定する方法は報告されているものの,荷重肢位に近い股関節0°伸展位での評価方法に関する報告はない。そこで,本研究の目的は,股関節0°伸展位で行う内旋・外旋筋力の測定方法に再現性があるかを従来の座位で行う方法と比較し,検討することである。
【方法】
対象は健常者15名(男性9名,女性6名)の30股関節であり,対象者の属性は,年齢30.3±6.3歳,身長164.7±9.1cm,体重59.2±11.1kgであった。対象者には下肢の整形外科的疾患や関節痛を有する者はいなかった。本研究では同一検者が内旋・外旋の筋力測定を90°屈曲位,0°伸展位でそれぞれ2回行い,その再現性を検証するデザインとした。筋力の測定にはHand Held Dynamometer(以下HHD,JTECH Medical社,COMMANDER Muscle Testing)を使用した。測定肢位は腹臥位(股関節0°伸展位)と座位(股関節90°屈曲位)で行い,いずれの肢位とも,股関節内旋・外旋中間位,膝関節は90°屈曲位の姿勢で行った。測定は,5秒間の最大努力による等尺性収縮を3回行い,その平均値を採用した。再現性を高めるために,HHDの測定パッドの固定にはベルトを使用し,ベルトは下腿と垂直になるように設定した。測定パッドは内旋時で外果直上に,外旋時で内果直上とした。代償動作を防ぐため,腹臥位での測定時には骨盤帯と非測定側の下肢をベルトで固定し,両上肢でベッドの両端を把持させた。疲労による影響を考慮し,1回目と2回目の測定間には1日の休息を設けた。統計解析は級内相関係数によって比較検討した。統計ソフトはIBM SPSS statistics version21を使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
測定にあたり被験者本人に対して本研究の目的・内容を説明し,文章にて同意を得て実施した。
【結果】
股関節0°伸展位での外旋筋力は1回目100.4N±27.3N,2回目100.4N±27.9N,内旋筋力は1回目81.9N±24.3N,2回目83.5N±22.7Nであった。股関節90°屈曲位での外旋筋力は1回目72.1N±24.4N,2回目71.6N±25.4N,内旋筋力は1回目81.1N±24.8N,2回目82.0N±18.5Nであった。検者内の級内相関係数(ICC)は,股関節0°伸展位での外旋で0.90,内旋で0.90であり,股関節90°屈曲位での外旋で0.94,内旋で0.81であった。
【考察】
荷重位である股関節0°伸展位での股関節内旋・外旋筋力の測定方法を確立することを目的に,その再現性について検討した。90°屈曲位での測定では内旋の再現性がやや低下する傾向を認めたが,0°伸展位での測定は,内旋・外旋ともICCが0.90であり,その再現性はいずれとも優秀であった。その理由として,0°伸展位での測定は,腹臥位で行うため,体幹の固定が行いやすく,代償動作が生じにくいことも益すると考える。
股関節の外旋筋である梨状筋,外閉鎖筋は屈曲角度が増すと内旋筋の作用を有するようになるとされるが,股関節では関節角度の違いにより,同一方向の運動でも作用する筋が大きく変化することが知られている。本研究で,0°伸展位の方が90°屈曲位より,外旋筋力値が大きくなる傾向が認められたのはそうした背景によるものと考えられた。そのような意味からも0°伸展位での内旋・外旋筋力を測定することは有用であることが示唆された。
本研究の限界として,検者内のみでの検討であり検者間の再現性が不明であること,対象者数が少ないことがあげられる。
【理学療法学研究としての意義】
荷重位に近い股関節0°伸展位における股関節の内旋・外旋筋力の測定方法を確立することで,股関節疾患患者の荷重に対する股関節機能を評価することが可能となり,臨床上非常に有用なものとなると考える。また,臨床で簡便に使用できるHHDを用いた測定であり,固定用ベルトを装着するための特別なベッドやフレームが不要で,腹臥位が可能であれば検者一人で実施可能である。このことから,股関節疾患患者の理学療法評価や治療効果判定に有用な指標を提供できるものと考える。
股関節は荷重関節であり,構造的に安定した関節といわれる。しかし,本邦での変形性股関節症の原因の多数を占める臼蓋形成不全では臼蓋の被覆減少に伴う不安定性を有するため,筋による安定性向上を目的とした理学療法が重要となる。なかでも,股関節の内旋・外旋筋は股関節の安定性に寄与するため,その筋力を正確に測定することは臨床的な意義が高いといえる。しかし,内旋・外旋筋力の測定は,座位で股関節90°屈曲位で測定する方法は報告されているものの,荷重肢位に近い股関節0°伸展位での評価方法に関する報告はない。そこで,本研究の目的は,股関節0°伸展位で行う内旋・外旋筋力の測定方法に再現性があるかを従来の座位で行う方法と比較し,検討することである。
【方法】
対象は健常者15名(男性9名,女性6名)の30股関節であり,対象者の属性は,年齢30.3±6.3歳,身長164.7±9.1cm,体重59.2±11.1kgであった。対象者には下肢の整形外科的疾患や関節痛を有する者はいなかった。本研究では同一検者が内旋・外旋の筋力測定を90°屈曲位,0°伸展位でそれぞれ2回行い,その再現性を検証するデザインとした。筋力の測定にはHand Held Dynamometer(以下HHD,JTECH Medical社,COMMANDER Muscle Testing)を使用した。測定肢位は腹臥位(股関節0°伸展位)と座位(股関節90°屈曲位)で行い,いずれの肢位とも,股関節内旋・外旋中間位,膝関節は90°屈曲位の姿勢で行った。測定は,5秒間の最大努力による等尺性収縮を3回行い,その平均値を採用した。再現性を高めるために,HHDの測定パッドの固定にはベルトを使用し,ベルトは下腿と垂直になるように設定した。測定パッドは内旋時で外果直上に,外旋時で内果直上とした。代償動作を防ぐため,腹臥位での測定時には骨盤帯と非測定側の下肢をベルトで固定し,両上肢でベッドの両端を把持させた。疲労による影響を考慮し,1回目と2回目の測定間には1日の休息を設けた。統計解析は級内相関係数によって比較検討した。統計ソフトはIBM SPSS statistics version21を使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
測定にあたり被験者本人に対して本研究の目的・内容を説明し,文章にて同意を得て実施した。
【結果】
股関節0°伸展位での外旋筋力は1回目100.4N±27.3N,2回目100.4N±27.9N,内旋筋力は1回目81.9N±24.3N,2回目83.5N±22.7Nであった。股関節90°屈曲位での外旋筋力は1回目72.1N±24.4N,2回目71.6N±25.4N,内旋筋力は1回目81.1N±24.8N,2回目82.0N±18.5Nであった。検者内の級内相関係数(ICC)は,股関節0°伸展位での外旋で0.90,内旋で0.90であり,股関節90°屈曲位での外旋で0.94,内旋で0.81であった。
【考察】
荷重位である股関節0°伸展位での股関節内旋・外旋筋力の測定方法を確立することを目的に,その再現性について検討した。90°屈曲位での測定では内旋の再現性がやや低下する傾向を認めたが,0°伸展位での測定は,内旋・外旋ともICCが0.90であり,その再現性はいずれとも優秀であった。その理由として,0°伸展位での測定は,腹臥位で行うため,体幹の固定が行いやすく,代償動作が生じにくいことも益すると考える。
股関節の外旋筋である梨状筋,外閉鎖筋は屈曲角度が増すと内旋筋の作用を有するようになるとされるが,股関節では関節角度の違いにより,同一方向の運動でも作用する筋が大きく変化することが知られている。本研究で,0°伸展位の方が90°屈曲位より,外旋筋力値が大きくなる傾向が認められたのはそうした背景によるものと考えられた。そのような意味からも0°伸展位での内旋・外旋筋力を測定することは有用であることが示唆された。
本研究の限界として,検者内のみでの検討であり検者間の再現性が不明であること,対象者数が少ないことがあげられる。
【理学療法学研究としての意義】
荷重位に近い股関節0°伸展位における股関節の内旋・外旋筋力の測定方法を確立することで,股関節疾患患者の荷重に対する股関節機能を評価することが可能となり,臨床上非常に有用なものとなると考える。また,臨床で簡便に使用できるHHDを用いた測定であり,固定用ベルトを装着するための特別なベッドやフレームが不要で,腹臥位が可能であれば検者一人で実施可能である。このことから,股関節疾患患者の理学療法評価や治療効果判定に有用な指標を提供できるものと考える。