[0745] 心臓リハビリテーション外来患者における潜在的COPD併存率の調査及び併存群と非併存群の比較
Keywords:心臓リハビリテーション外来, COPD, 運動耐容能
【はじめに,目的】
近年,慢性閉塞性肺疾患(COPD)は肺のみならず全身性の炎症疾患と捉えられるようになり,さまざまな併存症を有することが明らかになっている。なかでも,喫煙という共通のリスク因子を有する心血管疾患はCOPDとの併存率が高く,心血管疾患患者においてCOPDの併存は生命予後を悪化させる因子の一つと考えられている。しかし,心臓リハビリテーション外来(心リハ外来)を受診する患者に,どの程度の割合で診断されていないCOPD患者が存在するのかを明らかにした報告はない。
そこで,当院の心リハ外来受診患者における潜在的なCOPD併存率を調査し,COPDが併存している群(併存群)と併存していない群(非併存群)の比較を行ったので報告する。
【方法】
2010年4月から2012年12月の期間中,当院心リハ外来を初回受診し,呼吸機能検査及び心肺運動負荷試験を実施した連続251例のうち,すでにCOPDと診断され治療を受けている5例を除く246例(平均年齢68.1±9.8歳,男性192例:女性54例)を対象とした。1秒率70%未満かつ閉塞性換気障害を来す他の疾患が否定され,医師によりCOPDと診断された例を併存群,それ以外の例を非併存群に分類し,潜在的COPD併存率および気流閉塞の重症度を調査した。また,両群間における,年齢,男女比,BMI,喫煙歴,喫煙例のブリンクマン指数,基礎疾患,最高酸素摂取量,VE/VCO2slopeを比較し,さらに併存群における%1秒量と最高酸素摂取量,VE/VCO2slopeそれぞれの相関関係を求めた。
統計学的検定として,年齢,BMI,最高酸素摂取量,VE/VCO2slopeの比較にはStudentのt検定,喫煙例のブリンクマン指数の比較にはMann-WhitneyのU検定,男女比,喫煙歴,基礎疾患の比較にはχ2検定,相関分析にはPearsonの相関係数を用いた。全ての検定において有意水準5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
全対象症例に個人を特定できない条件下にて検査結果を使用することを説明し同意を得た上で,本研究は当院倫理委員会にて承認を得た。
【結果】
新たにCOPDと診断された例は246例中48例で,潜在的COPD併存率は19.5%であった。気流閉塞の重症度はI期19例,II期26例,III期3例であった。併存群と非併存群の比較では,年齢(71.3±8.0歳vs. 67.3±10.0歳,p=0.02),男女比(男性90% vs. 75%,p=0.03),喫煙歴(有79% vs. 50%,p<0.01),喫煙例のブリンクマン指数(1083.8±574.9 vs. 735.0±608.3,p<0.01),VE/VCO2slope(31.3±5.5vs.28.6±5.3,p<0.01)が併存群で有意に高く,BMI(23.8±2.8 vs. 25.0±3.9,p=0.01),最高酸素摂取量(14.8±3.1ml/kg vs. 16.1±3.5ml/kg,p=0.02)が併存群で有意に低かった。併存群における最高酸素摂取量,VE/VCO2slopeはどちらも%1秒量と有意な相関関係を認めなかった。
【考察】
本邦におけるCOPDの疫学調査(NICE Study)では,40歳以上の8.6%にCOPDが存在すると報告されている。今回の検討で,心リハ外来患者ではさらに高率にCOPDを有する例が存在することが明らかとなった。これらの例がCOPDと診断されていなかった理由として,気流閉塞の重症度は軽症から中等症が9割以上を占め,COPDの諸症状が表面化していない,あるいは労作時の呼吸困難感を心血管疾患由来のものと判断され,COPDを疑い呼吸機能検査を行うまでには至らない例がほとんどであったことが考えられる。また併存群では,有意に最高酸素摂取量が低値であり,運動耐容能の低下にCOPDの影響を受けている可能性がある。
これらのことより,心リハ外来を受診する心血管疾患患者の喫煙歴や身体症状からCOPDの併存を疑い,見逃されることがないよう循環器科と呼吸器科の連携を図ることや,心臓リハビリテーションと呼吸リハビリテーションの双方の視点を合わせて介入していくことが必要である。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果は,心リハ外来を担当する場合に,潜在的にCOPDが併存している例の存在を意識することにつながり,早期発見の一助となる可能性がある。また,心血管疾患,COPDともに予後因子となる運動耐容能の改善へのアプローチ,患者教育の点などにおいて,心臓リハビリテーションと呼吸リハビリテーションの協同体制の重要性が示唆される。
近年,慢性閉塞性肺疾患(COPD)は肺のみならず全身性の炎症疾患と捉えられるようになり,さまざまな併存症を有することが明らかになっている。なかでも,喫煙という共通のリスク因子を有する心血管疾患はCOPDとの併存率が高く,心血管疾患患者においてCOPDの併存は生命予後を悪化させる因子の一つと考えられている。しかし,心臓リハビリテーション外来(心リハ外来)を受診する患者に,どの程度の割合で診断されていないCOPD患者が存在するのかを明らかにした報告はない。
そこで,当院の心リハ外来受診患者における潜在的なCOPD併存率を調査し,COPDが併存している群(併存群)と併存していない群(非併存群)の比較を行ったので報告する。
【方法】
2010年4月から2012年12月の期間中,当院心リハ外来を初回受診し,呼吸機能検査及び心肺運動負荷試験を実施した連続251例のうち,すでにCOPDと診断され治療を受けている5例を除く246例(平均年齢68.1±9.8歳,男性192例:女性54例)を対象とした。1秒率70%未満かつ閉塞性換気障害を来す他の疾患が否定され,医師によりCOPDと診断された例を併存群,それ以外の例を非併存群に分類し,潜在的COPD併存率および気流閉塞の重症度を調査した。また,両群間における,年齢,男女比,BMI,喫煙歴,喫煙例のブリンクマン指数,基礎疾患,最高酸素摂取量,VE/VCO2slopeを比較し,さらに併存群における%1秒量と最高酸素摂取量,VE/VCO2slopeそれぞれの相関関係を求めた。
統計学的検定として,年齢,BMI,最高酸素摂取量,VE/VCO2slopeの比較にはStudentのt検定,喫煙例のブリンクマン指数の比較にはMann-WhitneyのU検定,男女比,喫煙歴,基礎疾患の比較にはχ2検定,相関分析にはPearsonの相関係数を用いた。全ての検定において有意水準5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
全対象症例に個人を特定できない条件下にて検査結果を使用することを説明し同意を得た上で,本研究は当院倫理委員会にて承認を得た。
【結果】
新たにCOPDと診断された例は246例中48例で,潜在的COPD併存率は19.5%であった。気流閉塞の重症度はI期19例,II期26例,III期3例であった。併存群と非併存群の比較では,年齢(71.3±8.0歳vs. 67.3±10.0歳,p=0.02),男女比(男性90% vs. 75%,p=0.03),喫煙歴(有79% vs. 50%,p<0.01),喫煙例のブリンクマン指数(1083.8±574.9 vs. 735.0±608.3,p<0.01),VE/VCO2slope(31.3±5.5vs.28.6±5.3,p<0.01)が併存群で有意に高く,BMI(23.8±2.8 vs. 25.0±3.9,p=0.01),最高酸素摂取量(14.8±3.1ml/kg vs. 16.1±3.5ml/kg,p=0.02)が併存群で有意に低かった。併存群における最高酸素摂取量,VE/VCO2slopeはどちらも%1秒量と有意な相関関係を認めなかった。
【考察】
本邦におけるCOPDの疫学調査(NICE Study)では,40歳以上の8.6%にCOPDが存在すると報告されている。今回の検討で,心リハ外来患者ではさらに高率にCOPDを有する例が存在することが明らかとなった。これらの例がCOPDと診断されていなかった理由として,気流閉塞の重症度は軽症から中等症が9割以上を占め,COPDの諸症状が表面化していない,あるいは労作時の呼吸困難感を心血管疾患由来のものと判断され,COPDを疑い呼吸機能検査を行うまでには至らない例がほとんどであったことが考えられる。また併存群では,有意に最高酸素摂取量が低値であり,運動耐容能の低下にCOPDの影響を受けている可能性がある。
これらのことより,心リハ外来を受診する心血管疾患患者の喫煙歴や身体症状からCOPDの併存を疑い,見逃されることがないよう循環器科と呼吸器科の連携を図ることや,心臓リハビリテーションと呼吸リハビリテーションの双方の視点を合わせて介入していくことが必要である。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果は,心リハ外来を担当する場合に,潜在的にCOPDが併存している例の存在を意識することにつながり,早期発見の一助となる可能性がある。また,心血管疾患,COPDともに予後因子となる運動耐容能の改善へのアプローチ,患者教育の点などにおいて,心臓リハビリテーションと呼吸リハビリテーションの協同体制の重要性が示唆される。