[0747] 自主参加型体操に継続参加し転倒自己効力感が向上した男性高齢者は,精神的健康が向上する
Keywords:精神的健康度, 転倒時自己効力感, 自主参加型体操
【はじめに,目的】転倒自己効力感の尺度として,国際版転倒関連自己効力感尺度(FES-I)がある。これは将来の転倒を予測する因子であると言われている(Kim 2010)。我々が昨年度,神奈川県内のR公園でのラジオ体操会会員96名に調査した結果では,週6日以上運動している者が59.4%であるにもかかわらず,転倒の危険があるとされるFES-I得点が23点以上の者が63.5%であった。転倒自己効力感に関連する因子についての先行研究は本邦では横断的な研究が多く,縦断的な研究はほとんどない。そこで本研究は,高齢者においてFES-I得点が3年間で増加する者と維持・減少する者はベースライン調査時における違いがあるのか検討することを目的とする。
【方法】対象は,神奈川県内のR公園でのラジオ体操会会員から募集し,ベースライン調査(2009年)とフォローアップ調査(2013年)に参加した地域在住高齢者43名(平均年齢男性73.0±4.6歳,女性71.4±3.6歳)とした。基本属性として,年齢,体格指数,身体機能として,立位体前屈,等尺性膝伸展筋力,Timed Up and Go test,快適歩行時間,最速歩行時間を測定した。また,ラジオ体操の参加頻度を1,週1日未満,2.週1~3日,3.週4~5日4.週6日以上の4段階で質問した。転倒自己効力感としてFES-I,精神的健康として精神的健康状態表(WHO-5),手段的日常生活活動としてFrenchay Activities Indexを測定した。統計は,性別ごとに,3年間のFES-I増加群,維持・減少群の2群に分類した。ベースライン調査時の各項目について2群間で比較するため,マン・ホイットニーのU検定を用いた。有意差がみられた項目については,ベースライン調査時とフォローアップ調査時の差についてウィルコクソンの符号付順位検定を行った。なお,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究の対象者には,研究目的および内容に関して,書面および口頭にて十分説明を行った後,書面による同意を得た。また,本研究内容および研究手順は研究倫理委員会によって承認されたものである。
【結果】FES-I得点は,点数が低いほど転倒自己効力感が高くなる指標である。3年間のFES-I得点の増加群,維持・減少群におけるベースライン調査時の項目の群間比較において,男性でのWHO-5得点が増加群20.8±2.8点,維持・減少群15.5±2.4点で,有意に増加群で高かった。(p=0.0017)。その他基本属性,身体機能,手段的日常生活活動では有意な差はみられなかった(n.s.)。女性において,すべての項目で有意な差みられなかった(n.s.)。ラジオ体操会への参加頻度は,週6日以上参加した者が,男性で増加群64.3%,維持・減少群75.0%,女性では増加群50.0%,維持・減少群76.9%となり,男女ともに増加群,維持・減少群間に有意な差はみられなかった(n.s.)。男性でのWHO-5得点のベースライン調査時とフォローアップ調査時の比較において,増加群ではベースライン調査時20.8±2.8点,フォローアップ調査時19.7±3.8点で有意な差はみられなかった(n.s.)。一方,維持・減少群はベースライン調査時15.5±2.5点,フォローアップ調査時18.0±3.9点であり,フォローアップ調査時で有意に高くなった(p=0.035)。
【考察】男性でのWHO-5得点はベースライン調査時で増加群20.8±2.8点,維持・減少群15.5±2.5点であり,これは70~74歳の一般高齢者男性における点数(17.2±5.1)から大きく外れるものではなかった(岩佐2007)。この結果より,転倒自己効力感に関する因子としては,男性では身体機能よりも,精神的健康度など精神機能的側面が関連していることが示唆された。また,増加群,維持・減少群間にラジオ体操会への参加頻度に有意差はなく共に高頻度であったことから,運動習慣のある地域在住高齢者においても,転倒自己効力感を向上させるためには,身体機能だけでなく精神的健康を高く維持する必要があると考えられる。また,ラジオ体操への参加で転倒自己効力感が向上した男性高齢者は,精神的健康においても向上すると推測される。
【理学療法学研究としての意義】本研究では運動習慣のある地域在住高齢者においては身体機能ではなく,精神機能面へのアプローチが重要であることを明らかにした。このことから,今後地域において理学療法士が運動介入する際に運動機能以外へのアプローチを検討するための基礎データとなると考えられ,理学療法学研究としての意義があるといえる。
【方法】対象は,神奈川県内のR公園でのラジオ体操会会員から募集し,ベースライン調査(2009年)とフォローアップ調査(2013年)に参加した地域在住高齢者43名(平均年齢男性73.0±4.6歳,女性71.4±3.6歳)とした。基本属性として,年齢,体格指数,身体機能として,立位体前屈,等尺性膝伸展筋力,Timed Up and Go test,快適歩行時間,最速歩行時間を測定した。また,ラジオ体操の参加頻度を1,週1日未満,2.週1~3日,3.週4~5日4.週6日以上の4段階で質問した。転倒自己効力感としてFES-I,精神的健康として精神的健康状態表(WHO-5),手段的日常生活活動としてFrenchay Activities Indexを測定した。統計は,性別ごとに,3年間のFES-I増加群,維持・減少群の2群に分類した。ベースライン調査時の各項目について2群間で比較するため,マン・ホイットニーのU検定を用いた。有意差がみられた項目については,ベースライン調査時とフォローアップ調査時の差についてウィルコクソンの符号付順位検定を行った。なお,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究の対象者には,研究目的および内容に関して,書面および口頭にて十分説明を行った後,書面による同意を得た。また,本研究内容および研究手順は研究倫理委員会によって承認されたものである。
【結果】FES-I得点は,点数が低いほど転倒自己効力感が高くなる指標である。3年間のFES-I得点の増加群,維持・減少群におけるベースライン調査時の項目の群間比較において,男性でのWHO-5得点が増加群20.8±2.8点,維持・減少群15.5±2.4点で,有意に増加群で高かった。(p=0.0017)。その他基本属性,身体機能,手段的日常生活活動では有意な差はみられなかった(n.s.)。女性において,すべての項目で有意な差みられなかった(n.s.)。ラジオ体操会への参加頻度は,週6日以上参加した者が,男性で増加群64.3%,維持・減少群75.0%,女性では増加群50.0%,維持・減少群76.9%となり,男女ともに増加群,維持・減少群間に有意な差はみられなかった(n.s.)。男性でのWHO-5得点のベースライン調査時とフォローアップ調査時の比較において,増加群ではベースライン調査時20.8±2.8点,フォローアップ調査時19.7±3.8点で有意な差はみられなかった(n.s.)。一方,維持・減少群はベースライン調査時15.5±2.5点,フォローアップ調査時18.0±3.9点であり,フォローアップ調査時で有意に高くなった(p=0.035)。
【考察】男性でのWHO-5得点はベースライン調査時で増加群20.8±2.8点,維持・減少群15.5±2.5点であり,これは70~74歳の一般高齢者男性における点数(17.2±5.1)から大きく外れるものではなかった(岩佐2007)。この結果より,転倒自己効力感に関する因子としては,男性では身体機能よりも,精神的健康度など精神機能的側面が関連していることが示唆された。また,増加群,維持・減少群間にラジオ体操会への参加頻度に有意差はなく共に高頻度であったことから,運動習慣のある地域在住高齢者においても,転倒自己効力感を向上させるためには,身体機能だけでなく精神的健康を高く維持する必要があると考えられる。また,ラジオ体操への参加で転倒自己効力感が向上した男性高齢者は,精神的健康においても向上すると推測される。
【理学療法学研究としての意義】本研究では運動習慣のある地域在住高齢者においては身体機能ではなく,精神機能面へのアプローチが重要であることを明らかにした。このことから,今後地域において理学療法士が運動介入する際に運動機能以外へのアプローチを検討するための基礎データとなると考えられ,理学療法学研究としての意義があるといえる。