[0771] テーピングによる下腿回旋のアラインメント変化と歩行時の下肢筋のPreactivation
Keywords:Preactivation, 下腿回旋アラインメント, 歩行、走行
【はじめに,目的】
歩行におけるPreactivationは,立脚期の事前に生じる筋活動で,下肢の関節安定化を担う作用がある。変形性膝関節症患者(以下,膝OA)では,しばしば歩行の立脚初期から中期で,外側スラストなどの膝関節不安定性に起因する動的アラインメントの変化が起こる。膝OA患者では,筋力低下,関節可動域制限の影響も受けて,下腿回旋アラインメント異常を呈することが多く,立脚期の動的アラインメント異常を誘発する要因にもなる。この下腿回旋アラインメントとPreactivationの関係を検討することで,歩行における動的アラインメントについて筋電図学的に考察することができると考える。そこで,筋力低下,関節可動域制限などの機能障害を有さない健常者を対象にテーピングによる人為的な下腿回旋アライメント変化の要因が,歩行,走行における下肢筋のPreactivationに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,運動器疾患の既往を有さない健常男性10名(平均年齢19.5±1.3歳,身長171±3.7cm,体重:61.7kg±5.9kg)とした。また,ニトリート社製のテープEB50mmを用いて(このテープを貼付するためのアンカーテープにEB-H50mm,CB50mmも使用)対象者の下腿を膝関節20°屈曲位で可及的最大の内旋位および外旋位になるように固定した。下腿の回旋角度は上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結んだ線と膝蓋腱のなす角度を計測した。また,上記のアラインメントを保持する際,テープの貼付によって-20°の膝関節伸展制限が生じるため,コントロールとして対象者の下腿回旋アラインメントを変えずに膝関節伸展を制限するコントロールテープも貼付した。その後,対象者にはトレッドミル上を6km/hの速度で歩行,次いで走行させ,右側の内側広筋斜頭,大腿直筋,大殿筋,外側ハムストリング,内側ハムストリングス,前脛骨筋,腓腹筋より,テレメントリー筋電計MQ8(キッセイコムテック社)を用いて筋電図を記録した。そして足底に貼付したフットスイッチからの信号も筋電図と同期収録し,それをもとに各々の筋より踵接地の100ms前の平均振幅値を算出し,これを本研究でのPreactivationとした。また,右側の上前腸骨棘,大転子,膝関節外側裂隙,外果,第5中足骨頭の計5ヶ所にマーカーを貼付し,側方からデジタルビデオカメラを用い動作を60Hzのサンプリングで収録し,解析ソフト(Frame Dias,DKH)を用いて股・膝・足関節の矢状面角度を算出した。測定は歩容が安定した後,右下肢の3歩を対象として平均値を算出した。そしてコントロールを基準として,内旋位,外旋位をDunnett検定によって比較した。その際の有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には実験の目的および概要,結果の公表の有無と形式,個人情報の取り扱いについて説明し,同意を得た。なお,本研究は関西医療大学倫理委員会の承認のもとで実施した。
【結果】
テーピング前の下腿の回旋角度は15.1±0.6°であったが,内旋テープで11.4±1.1°,外旋テープで21.1±1.1°となった。筋電図の平均振幅値は下腿内旋位では歩行,走行ともに内側ハムストリングスのみ有意な増加を認めたが,その他は有意差を認めなかった。また,Preactivation時の3群間の股・膝・足関節の矢状面角度には有意差を認めなかった。
【考察】
本結果では下腿を内旋位にした際,歩行および走行の両条件で内側ハムストリングスのみ平均振幅値の増加が認めた。下腿を内旋位にすることで,前十字靭帯の緊張を介した反射性の筋活動がハムストリングスにみられるという報告もあるが,本研究では,どの機序が関与したのかを言及することができない。しかし,内旋位にすることで歩行のみならず走行においても再現性よく内側ハムストリングスのPreactivationの活動は増加した。膝OA患者においては膝内反に加え下腿外旋を伴っている場合が多く,動的アラインメントの変化は決して二次元で生じていない。本結果を参考にすると下腿内旋位に補正することで内側ハムストリングスのPreactivationも作用し,接地後に生じる下腿外旋が誘引となって起こる下肢の動的アラインメント変化を軽減させることが出来る可能性も考えられる。
【理学療法研究としての意義】
本研究ではトレッドミル上の歩行であるが,下腿の回旋アラインメント変化によってPreactivationに相違を生じることが明確になった。本結果より下腿回旋アラインメントの調整は関節安定化に貢献できる可能性が示唆された。
歩行におけるPreactivationは,立脚期の事前に生じる筋活動で,下肢の関節安定化を担う作用がある。変形性膝関節症患者(以下,膝OA)では,しばしば歩行の立脚初期から中期で,外側スラストなどの膝関節不安定性に起因する動的アラインメントの変化が起こる。膝OA患者では,筋力低下,関節可動域制限の影響も受けて,下腿回旋アラインメント異常を呈することが多く,立脚期の動的アラインメント異常を誘発する要因にもなる。この下腿回旋アラインメントとPreactivationの関係を検討することで,歩行における動的アラインメントについて筋電図学的に考察することができると考える。そこで,筋力低下,関節可動域制限などの機能障害を有さない健常者を対象にテーピングによる人為的な下腿回旋アライメント変化の要因が,歩行,走行における下肢筋のPreactivationに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,運動器疾患の既往を有さない健常男性10名(平均年齢19.5±1.3歳,身長171±3.7cm,体重:61.7kg±5.9kg)とした。また,ニトリート社製のテープEB50mmを用いて(このテープを貼付するためのアンカーテープにEB-H50mm,CB50mmも使用)対象者の下腿を膝関節20°屈曲位で可及的最大の内旋位および外旋位になるように固定した。下腿の回旋角度は上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結んだ線と膝蓋腱のなす角度を計測した。また,上記のアラインメントを保持する際,テープの貼付によって-20°の膝関節伸展制限が生じるため,コントロールとして対象者の下腿回旋アラインメントを変えずに膝関節伸展を制限するコントロールテープも貼付した。その後,対象者にはトレッドミル上を6km/hの速度で歩行,次いで走行させ,右側の内側広筋斜頭,大腿直筋,大殿筋,外側ハムストリング,内側ハムストリングス,前脛骨筋,腓腹筋より,テレメントリー筋電計MQ8(キッセイコムテック社)を用いて筋電図を記録した。そして足底に貼付したフットスイッチからの信号も筋電図と同期収録し,それをもとに各々の筋より踵接地の100ms前の平均振幅値を算出し,これを本研究でのPreactivationとした。また,右側の上前腸骨棘,大転子,膝関節外側裂隙,外果,第5中足骨頭の計5ヶ所にマーカーを貼付し,側方からデジタルビデオカメラを用い動作を60Hzのサンプリングで収録し,解析ソフト(Frame Dias,DKH)を用いて股・膝・足関節の矢状面角度を算出した。測定は歩容が安定した後,右下肢の3歩を対象として平均値を算出した。そしてコントロールを基準として,内旋位,外旋位をDunnett検定によって比較した。その際の有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には実験の目的および概要,結果の公表の有無と形式,個人情報の取り扱いについて説明し,同意を得た。なお,本研究は関西医療大学倫理委員会の承認のもとで実施した。
【結果】
テーピング前の下腿の回旋角度は15.1±0.6°であったが,内旋テープで11.4±1.1°,外旋テープで21.1±1.1°となった。筋電図の平均振幅値は下腿内旋位では歩行,走行ともに内側ハムストリングスのみ有意な増加を認めたが,その他は有意差を認めなかった。また,Preactivation時の3群間の股・膝・足関節の矢状面角度には有意差を認めなかった。
【考察】
本結果では下腿を内旋位にした際,歩行および走行の両条件で内側ハムストリングスのみ平均振幅値の増加が認めた。下腿を内旋位にすることで,前十字靭帯の緊張を介した反射性の筋活動がハムストリングスにみられるという報告もあるが,本研究では,どの機序が関与したのかを言及することができない。しかし,内旋位にすることで歩行のみならず走行においても再現性よく内側ハムストリングスのPreactivationの活動は増加した。膝OA患者においては膝内反に加え下腿外旋を伴っている場合が多く,動的アラインメントの変化は決して二次元で生じていない。本結果を参考にすると下腿内旋位に補正することで内側ハムストリングスのPreactivationも作用し,接地後に生じる下腿外旋が誘引となって起こる下肢の動的アラインメント変化を軽減させることが出来る可能性も考えられる。
【理学療法研究としての意義】
本研究ではトレッドミル上の歩行であるが,下腿の回旋アラインメント変化によってPreactivationに相違を生じることが明確になった。本結果より下腿回旋アラインメントの調整は関節安定化に貢献できる可能性が示唆された。