[0781] 心サルコイドーシス患者に対しての心臓リハビリテーションの経験
Keywords:心サルコイドーシス, 心臓リハビリテーション, 運動耐容能
【はじめに,目的】我が国のサルコイドーシス有病率は10万人に対して10~20人であり,心病変合併頻度は67.8%と高い。心サルコイドーシスに特異的な臨床症状はなく,病変の部位・範囲により多彩な臨床症状を呈する。現在,心サルコイドーシスに対する心臓リハビリテーション(以下心リハ)のプロトコルは明らかにされておらず,報告も少ない。今回,心サルコイドーシス患者に対して心リハを施行した結果,有害事象無く筋力,運動耐容能の維持・改善を認めるなどの経験を得たため報告する。
【方法】症例は50歳代男性。食品製造業。30歳代より心電図異常,不整脈指摘も精査せず。40歳頃より高血圧症指摘あるも未治療であった。仕事中15分間の強い左前胸部痛あり受診,下壁誘導のST低下あり。精査の結果サルコイドーシスとして特定疾患申請し認可され,ステロイド導入のため入院となった。入院時検査所見は,心電図は洞調律,上室性期外収縮,心エコーで前壁・中隔・高度低収縮~無収縮,後壁・下壁・心尖部低収縮,中隔基部菲薄化,カテーテル検査でForrester I型,左室駆出率37.1%を認めた。プログラムは,心臓リハビリテーション指導士(理学療法士)による監視の下,5日/週,40分~60分,入院期間の2ヶ月間心リハを実施した。運動メニューは①ウォーミングアップ(低強度の上下肢レジスタンストレーニングを含む)②自転車エルゴメーター20~30分③クーリングダウンとした。運動強度はBorg指数11~13とし,Karvonenの式で得られた脈拍数を超えないよう実施した。介入開始時,1ヶ月,2ヶ月時に6分間歩行,握力,膝伸展筋力を計測し運動機能を評価した。
【倫理的配慮,説明と同意】患者に本研究の趣旨を十分説明し,書面で同意を得た。
【結果】運動機能では6分間歩行(m)は開始時525,1ヶ月後630,2ヶ月後645,握力(kg)は開始時23/25,1ヶ月後27/27,2ヶ月後30/31,膝伸展筋力(Nm/kg)は開始時2.10/1.91,1ヶ月後1.93/1.51,2ヶ月後1.89/1.58であった。検査所見ではBNP(pg/ml)は開始時145,2ヶ月後42.3であった。運動中,運動後の有害事象は認めなかった。
【考察】心サルコイドーシスに対する治療は,1)免疫抑制療法,2)心不全治療,3)不整脈治療に要約されると言われている。本症例でも1),2)に対して薬物療法による介入がなされており,今回理学療法は2)に対して運動療法,3)に対して運動前後の不整脈モニタリングが可能と考えた。心肺運動負荷試験の設備がない状況での運動処方が課題であったが,血圧,脈拍数,Borg指数をモニタリングしながら介入した。その結果,BNP値は改善し心不全の増悪も認めなかったことから,運動の過負荷を避ける事ができたと言える。心疾患患者の上肢および下肢筋力は予後規定因子となり得ると言われており,上下肢筋力を評価し訓練することは意味のあることと思われる。今回評価を行うことで随時プログラムを検討することができ,筋力,運動耐容能の維持・改善を図ることができたと考える。
【理学療法学研究としての意義】心サルコイドーシスに対する心リハの具体的なプロトコルは明らかにされておらず,報告も少ない。今回の報告は心サルコイドーシスに対する心リハ介入方策の一助となると考える。
【方法】症例は50歳代男性。食品製造業。30歳代より心電図異常,不整脈指摘も精査せず。40歳頃より高血圧症指摘あるも未治療であった。仕事中15分間の強い左前胸部痛あり受診,下壁誘導のST低下あり。精査の結果サルコイドーシスとして特定疾患申請し認可され,ステロイド導入のため入院となった。入院時検査所見は,心電図は洞調律,上室性期外収縮,心エコーで前壁・中隔・高度低収縮~無収縮,後壁・下壁・心尖部低収縮,中隔基部菲薄化,カテーテル検査でForrester I型,左室駆出率37.1%を認めた。プログラムは,心臓リハビリテーション指導士(理学療法士)による監視の下,5日/週,40分~60分,入院期間の2ヶ月間心リハを実施した。運動メニューは①ウォーミングアップ(低強度の上下肢レジスタンストレーニングを含む)②自転車エルゴメーター20~30分③クーリングダウンとした。運動強度はBorg指数11~13とし,Karvonenの式で得られた脈拍数を超えないよう実施した。介入開始時,1ヶ月,2ヶ月時に6分間歩行,握力,膝伸展筋力を計測し運動機能を評価した。
【倫理的配慮,説明と同意】患者に本研究の趣旨を十分説明し,書面で同意を得た。
【結果】運動機能では6分間歩行(m)は開始時525,1ヶ月後630,2ヶ月後645,握力(kg)は開始時23/25,1ヶ月後27/27,2ヶ月後30/31,膝伸展筋力(Nm/kg)は開始時2.10/1.91,1ヶ月後1.93/1.51,2ヶ月後1.89/1.58であった。検査所見ではBNP(pg/ml)は開始時145,2ヶ月後42.3であった。運動中,運動後の有害事象は認めなかった。
【考察】心サルコイドーシスに対する治療は,1)免疫抑制療法,2)心不全治療,3)不整脈治療に要約されると言われている。本症例でも1),2)に対して薬物療法による介入がなされており,今回理学療法は2)に対して運動療法,3)に対して運動前後の不整脈モニタリングが可能と考えた。心肺運動負荷試験の設備がない状況での運動処方が課題であったが,血圧,脈拍数,Borg指数をモニタリングしながら介入した。その結果,BNP値は改善し心不全の増悪も認めなかったことから,運動の過負荷を避ける事ができたと言える。心疾患患者の上肢および下肢筋力は予後規定因子となり得ると言われており,上下肢筋力を評価し訓練することは意味のあることと思われる。今回評価を行うことで随時プログラムを検討することができ,筋力,運動耐容能の維持・改善を図ることができたと考える。
【理学療法学研究としての意義】心サルコイドーシスに対する心リハの具体的なプロトコルは明らかにされておらず,報告も少ない。今回の報告は心サルコイドーシスに対する心リハ介入方策の一助となると考える。