[0784] 訪問リハビリテーションを利用している要介護者に対する主介護者の介護負担感に影響する因子
キーワード:介護負担, 多施設研究, 訪問リハビリテーション
【はじめに,目的】近年,要介護者数が急速に増加する中で老老介護が新たな問題となっている(高齢社会白書,2011)。介護の実態調査では,身体的負担として介護者には腰痛を持っている人の割合が高いこと(鈴木ら,2012),精神的負担としてQuality of lifeが低いことや抑うつ度が高いこと(安田,2011)が明らかである。このように,介護負担は主介護者の健康状態を悪化させるため,要介護者が増加する日本において喫緊の課題と言える。すでに本邦では,主介護者の介護負担感に関連する因子として,主介護者の外出頻度が高いことや社会的サポートが有ることなどが明らかである。一方,要介護者の身体機能・生活機能に着目した研究では,要介護者の日常生活活動(ADL)能力に関して統一された見解がなく,要介護度に関しても主介護者の介護負担感には影響しない(山崎,2012)。しかし,要介護者の身体機能・生活機能など外面的なものではなく,要介護者の生活意欲など精神機能に着目した報告はない。そこで本研究の目的は,主介護者に直接会って調査することができる訪問リハビリテーションの利用者を対象とし,主介護者の介護負担感に要介護者の精神機能が寄与しているか明らかにすることである。
【方法】対象は,神奈川県内と東京都内の2事業所の訪問リハビリテーションを利用している要介護者54名(男性35名,女性19名,平均年齢80.4±7.8歳)とその主介護者54名(男性13名,女性41名,平均年齢71.9±11.7歳)とした。調査は要介護者と主介護者の両者に対し,対象者の自宅にて質問紙による面接調査法で行った。要介護者から,服薬種類数,地域高齢者の社会的孤立の指標として日本語版Lubben Social Network Scale短縮版(LSNS-6)を聴取した。主介護者から,年齢,性別,介護期間,最近2週間における1日の平均介護時間,要介護者の意欲の指標としてVitality Index,介護負担感の指標としてZarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)を聴取した。また,各事業所のカルテから,要介護者の年齢,性別,要介護度,ADLの指標としてFunctional Independence Measure(FIM)の情報を得た。統計は介護負担感に影響する因子を明らかにするために,J-ZBI得点と各項目とのSpearman順位相関係数を算出した。そして,J-ZBI得点と有意な単相関が認められた項目を独立変数,J-ZBI得点を従属変数として,ステップワイズ法を用いて重回帰分析を行った。なお,有意水準は5%とした。解析には,SPSS Statistics 21.0を使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究の対象者には,研究目的,内容,プライバシーおよび個人情報の管理,協力中止の自由に関して,書面および口頭にて説明を行った後,書面による同意を得た。また,本研究内容および研究手順は研究倫理審査委員会によって承認されたものである。
【結果】要介護者の年齢(80.4±7.8歳),要介護度(要支援1が1名,要支援2が3名,要介護1が4名,要介護2が21名,要介護3が12名,要介護4が7名,要介護5が6名),FIM得点90.2±27.0(点/126点満点),服薬種類数(中央値5種類 最小値1種類 最大値15種類),LSNS-6得点9.7±4.4(点/30点満点),Vitality Index得点8.5±1.5(点/10点満点)。介護期間73.9±67.6(ヵ月),最近2週間における1日の平均介護時間9.1±7.9(時間)のうち,J-ZBIと有意な単相関が見られたのは,服薬種類数(r=0.364,p<0.05,n=54),介護期間(r=0.460,p<0.05,n=54),最近2週間における1日の平均介護時間(r=0.276,p<0.05,n=54),Vitality Index得点(r=-0.480,p<0.05,n=54)だった。また,単相関が認められたこの4項目を独立変数,J-ZBIを従属変数として重回帰分析を行った結果,J-ZBIに寄与していたのは,服薬種類数(標準化係数β=0.318),介護期間(標準化係数β=0.284),Vitality Index得点(標準化係数β=-0.529)だった(重決定係数R2=0.469)。最近2週間における1日の平均介護時間は独立変数から除外された。
【考察】主介護者の介護負担感には要介護者の意欲が寄与していたが,要介護度やADL能力は寄与していなかった。このことから,主介護者の介護負担感には要介護者の身体機能・生活機能が保たれているかよりも,要介護者が自身の生活に対して意欲的・自主的かどうかが重要と言える。一方,主介護者の介護負担感には介護期間が寄与していたのに対し,最近2週間における平均介護時間は除外された。このことから,1日の介護時間が少なくても,介護を長く続けている主介護者に対しては社会的サポートを利用したレスパイト・ケアが必要だと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】主介護者の介護負担感には,要介護者の生活に対する意欲を保つことが有効であること,介護年数が長い主介護者には,より個別に介護負担感の軽減を図る必要があることが示唆された。
【方法】対象は,神奈川県内と東京都内の2事業所の訪問リハビリテーションを利用している要介護者54名(男性35名,女性19名,平均年齢80.4±7.8歳)とその主介護者54名(男性13名,女性41名,平均年齢71.9±11.7歳)とした。調査は要介護者と主介護者の両者に対し,対象者の自宅にて質問紙による面接調査法で行った。要介護者から,服薬種類数,地域高齢者の社会的孤立の指標として日本語版Lubben Social Network Scale短縮版(LSNS-6)を聴取した。主介護者から,年齢,性別,介護期間,最近2週間における1日の平均介護時間,要介護者の意欲の指標としてVitality Index,介護負担感の指標としてZarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)を聴取した。また,各事業所のカルテから,要介護者の年齢,性別,要介護度,ADLの指標としてFunctional Independence Measure(FIM)の情報を得た。統計は介護負担感に影響する因子を明らかにするために,J-ZBI得点と各項目とのSpearman順位相関係数を算出した。そして,J-ZBI得点と有意な単相関が認められた項目を独立変数,J-ZBI得点を従属変数として,ステップワイズ法を用いて重回帰分析を行った。なお,有意水準は5%とした。解析には,SPSS Statistics 21.0を使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究の対象者には,研究目的,内容,プライバシーおよび個人情報の管理,協力中止の自由に関して,書面および口頭にて説明を行った後,書面による同意を得た。また,本研究内容および研究手順は研究倫理審査委員会によって承認されたものである。
【結果】要介護者の年齢(80.4±7.8歳),要介護度(要支援1が1名,要支援2が3名,要介護1が4名,要介護2が21名,要介護3が12名,要介護4が7名,要介護5が6名),FIM得点90.2±27.0(点/126点満点),服薬種類数(中央値5種類 最小値1種類 最大値15種類),LSNS-6得点9.7±4.4(点/30点満点),Vitality Index得点8.5±1.5(点/10点満点)。介護期間73.9±67.6(ヵ月),最近2週間における1日の平均介護時間9.1±7.9(時間)のうち,J-ZBIと有意な単相関が見られたのは,服薬種類数(r=0.364,p<0.05,n=54),介護期間(r=0.460,p<0.05,n=54),最近2週間における1日の平均介護時間(r=0.276,p<0.05,n=54),Vitality Index得点(r=-0.480,p<0.05,n=54)だった。また,単相関が認められたこの4項目を独立変数,J-ZBIを従属変数として重回帰分析を行った結果,J-ZBIに寄与していたのは,服薬種類数(標準化係数β=0.318),介護期間(標準化係数β=0.284),Vitality Index得点(標準化係数β=-0.529)だった(重決定係数R2=0.469)。最近2週間における1日の平均介護時間は独立変数から除外された。
【考察】主介護者の介護負担感には要介護者の意欲が寄与していたが,要介護度やADL能力は寄与していなかった。このことから,主介護者の介護負担感には要介護者の身体機能・生活機能が保たれているかよりも,要介護者が自身の生活に対して意欲的・自主的かどうかが重要と言える。一方,主介護者の介護負担感には介護期間が寄与していたのに対し,最近2週間における平均介護時間は除外された。このことから,1日の介護時間が少なくても,介護を長く続けている主介護者に対しては社会的サポートを利用したレスパイト・ケアが必要だと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】主介護者の介護負担感には,要介護者の生活に対する意欲を保つことが有効であること,介護年数が長い主介護者には,より個別に介護負担感の軽減を図る必要があることが示唆された。