[0785] 低負荷反復運動による耳朶皮膚表面温度の変化について
キーワード:低負荷反復運動, 耳朶, 温度
【はじめに,目的】運動療法を行う際,運動実施状況をモニタリングし,定量的情報として取り扱う様々な方法が実施されている。非侵襲的かつ簡便で生体反応から運動実施状況をモニタリングし,定量的情報として取り扱う事が出来れば,国民の健康向上の一役を担えるかもしれないと考える。日常生活場面で取り扱われる事の多い生体反応として体温上昇が挙げられる。運動による体温上昇をモニタリングする際,衣類などに被覆されておらず発汗等の影響が少ない身体部位として耳朶が考えられるが,耳朶皮膚表面温度を利用した運動実施に関する報告は散見されない。そこで本研究では,健康な学生を対象に低負荷反復のマシントレーニングを実施した際,体温(腋下温)や耳朶皮膚表面温度を計測,運動実施による温度変化を比較検討し,運動療法を行う際の基礎的データ収集を目的とした。
【方法】対象は,鹿児島医療技術専門学校理学療法学科在籍中の学生で,ボランティアとして参加協力が得られた健康な女性13名とした。対象者の服装は半袖・半ズボン,室温は空調にて約24度と設定し,エアコン等の風が直接当たらない様に配慮した。事前にトレーニング機器(チェストプレス)を使用して最大筋力を測定。最大筋力の約20%を,今回は低負荷と規定した。5分間の安静時をベースラインとし,運動を実施。低負荷反復運動10回を1セットとした。反復スピードはメトロノームにて120テンポ(2Hz)とした。セット間に30秒間の休憩時間を設定し,計3セット実施。温度測定部位は,1)デジタル体温計(テルモ電子体温計C203)にて安静時ならびに運動終了直後の腋下温を測定,2)赤外線放射温度計(DUAL赤外線放射温度計AD-5612A)にて安静時・運動終了直後・1分後・2分後・3分後・4分後・5分後の耳朶皮膚表面温度を測定した。統計学的分析は,腋下温に関して,安静時・運動終了直後の2群間で対応のあるt検定を行った。耳朶皮膚表面温度に関して,安静時をベースラインに運動終了直後・1分後・2分後・3分後・4分後・5分後の温度変化量を算出し,温度変化量間の多重比較検定を行った。いずれも有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,鹿児島医療技術専門学校倫理委員会の承認を得た上で,ヘルシンキ宣言に遵守して実施した。なお,対象者には,本研究の趣旨および目的を書面および口頭にて説明し,同意を得た。
【結果】腋下温に関して,安静時腋下温は36.76±0.30度,運動終了直後腋下温は36.63±0.30度であった。安静時腋下温と運動終了直後腋下温間に有意差は認めなかった。次に耳朶皮膚表面温度に関して,安静時31.32±0.70度,運動終了直後31.57±0.76度,1分後31.71±0.74度,2分後31.79±0.73度,3分後31.83±0.73度,4分後31.51±0.58度,5分後31.26±0.58度であった。耳朶皮膚表面温度は,安静時と比べて,運動終了直後から3分後にかけて温度上昇傾向を示し,4分後・5分後と温度下降傾向の推移を示した。安静時をベースラインに算出した温度変化量に関して,運動終了直後0.25±0.32度,1分後0.39±0.32度,2分後0.46±0.50度,3分後0.51±0.48度,4分後0.19±0.42度,5分後-0.06±0.32度であった。2分後と5分後間(P<0.05),3分後と5分後間(P<0.01)に有意差を認めた。
【考察】赤外線放射温度計を利用した耳朶皮膚表面温度測定は,非侵襲的かつ簡便に計測する事ができた。耳朶皮膚表面温度変化から,運動実施後の温度変化をとらえる可能性が示唆された。今回の研究の限界は,深部体温や自律神経系の計測が同時に行えておらず,温度変化と運動実施との関係性を直接的に計測出来ていない。今後は複数のパラメーターを組み合わせ,生体反応の関係性を踏まえたさらなる研究が必要である。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,運動による体温上昇の計測において,衣類などに被覆されておらず発汗等の影響が少ない身体部位として耳朶に着目し,非侵襲的かつ簡便に皮膚表面温度を測定する事で,運動実施状況をモニタリングするための基礎的データを収集したものであり,理学療法学研究としての意義がある。
【方法】対象は,鹿児島医療技術専門学校理学療法学科在籍中の学生で,ボランティアとして参加協力が得られた健康な女性13名とした。対象者の服装は半袖・半ズボン,室温は空調にて約24度と設定し,エアコン等の風が直接当たらない様に配慮した。事前にトレーニング機器(チェストプレス)を使用して最大筋力を測定。最大筋力の約20%を,今回は低負荷と規定した。5分間の安静時をベースラインとし,運動を実施。低負荷反復運動10回を1セットとした。反復スピードはメトロノームにて120テンポ(2Hz)とした。セット間に30秒間の休憩時間を設定し,計3セット実施。温度測定部位は,1)デジタル体温計(テルモ電子体温計C203)にて安静時ならびに運動終了直後の腋下温を測定,2)赤外線放射温度計(DUAL赤外線放射温度計AD-5612A)にて安静時・運動終了直後・1分後・2分後・3分後・4分後・5分後の耳朶皮膚表面温度を測定した。統計学的分析は,腋下温に関して,安静時・運動終了直後の2群間で対応のあるt検定を行った。耳朶皮膚表面温度に関して,安静時をベースラインに運動終了直後・1分後・2分後・3分後・4分後・5分後の温度変化量を算出し,温度変化量間の多重比較検定を行った。いずれも有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,鹿児島医療技術専門学校倫理委員会の承認を得た上で,ヘルシンキ宣言に遵守して実施した。なお,対象者には,本研究の趣旨および目的を書面および口頭にて説明し,同意を得た。
【結果】腋下温に関して,安静時腋下温は36.76±0.30度,運動終了直後腋下温は36.63±0.30度であった。安静時腋下温と運動終了直後腋下温間に有意差は認めなかった。次に耳朶皮膚表面温度に関して,安静時31.32±0.70度,運動終了直後31.57±0.76度,1分後31.71±0.74度,2分後31.79±0.73度,3分後31.83±0.73度,4分後31.51±0.58度,5分後31.26±0.58度であった。耳朶皮膚表面温度は,安静時と比べて,運動終了直後から3分後にかけて温度上昇傾向を示し,4分後・5分後と温度下降傾向の推移を示した。安静時をベースラインに算出した温度変化量に関して,運動終了直後0.25±0.32度,1分後0.39±0.32度,2分後0.46±0.50度,3分後0.51±0.48度,4分後0.19±0.42度,5分後-0.06±0.32度であった。2分後と5分後間(P<0.05),3分後と5分後間(P<0.01)に有意差を認めた。
【考察】赤外線放射温度計を利用した耳朶皮膚表面温度測定は,非侵襲的かつ簡便に計測する事ができた。耳朶皮膚表面温度変化から,運動実施後の温度変化をとらえる可能性が示唆された。今回の研究の限界は,深部体温や自律神経系の計測が同時に行えておらず,温度変化と運動実施との関係性を直接的に計測出来ていない。今後は複数のパラメーターを組み合わせ,生体反応の関係性を踏まえたさらなる研究が必要である。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,運動による体温上昇の計測において,衣類などに被覆されておらず発汗等の影響が少ない身体部位として耳朶に着目し,非侵襲的かつ簡便に皮膚表面温度を測定する事で,運動実施状況をモニタリングするための基礎的データを収集したものであり,理学療法学研究としての意義がある。