第49回日本理学療法学術大会

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身体運動学9

2014年5月31日(土) 11:20 〜 12:10 ポスター会場 (基礎)

座長:宮﨑純弥(京都橘大学健康科学部理学療法学科)

基礎 ポスター

[0836] 立位における寛骨大腿リズムと寛骨後傾の性差の検討

野邉和泉, 岡村求, 川良真史, 吉澤雄斗, 荒木智子 (了徳寺大学健康科学部理学療法学科)

キーワード:寛骨大腿リズム, 股関節, 性差

【はじめに,目的】寛骨大腿リズムは股関節の屈曲に伴って骨盤後傾が生じる動きであり,股関節屈曲運動時の骨盤後方傾斜と大腿挙上の強調した動きを示す。骨盤の構造は性差の報告があるが,寛骨大腿リズムに関する報告は少ない。本研究は骨盤大腿リズムに関して,左右の仙腸関節の運動に着目し,股関節屈曲時の寛骨後傾角度の角度変化を明らかにし,その性差を明らかにすることである。
【方法】対象は股関節,脊柱および立位保持に影響する神経学的,整形外科的な既往症のない成人男女20名である。年齢は21.3±0.4歳,身長は166.5±9.5cm,体重は59.9±8.5kgであった。BMIは21.6±2.6kg/cm2であった。測定は先行研究(古後,2011)に準じて,基本的立位から利き足の股関節の自動屈曲を行ったときの寛骨後傾角度を測定した。股関節の自動屈曲角度は0°,45°,90°,最大屈曲位とした。寛骨後傾角度は傾斜計を用い,上前腸骨棘(ASIS)と上後腸骨棘(PSIS)を結ぶ線を寛骨後傾線として測定した。なお,水平線よりも前傾している状態をマイナス表示とした。測定検者は2名が担当し,3回の反復測定を行った。統計学的解析は一元配置分散分析を用いて比較検討した。寛骨後傾角度の変化量については,反復測定分散分析を用いて,その後の多重比較検定についてはScheffeの方法を用いた。統計学的分析にはStatcel3.0を用い,危険率はいずれの検討においても5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】被験者には本研究の目的と内容を充分に説明し,書面による同意を得たのちに測定を行った。
【結果】基本的立位での寛骨後傾角度は男子で-14.7±4.9°,女子で-10.7±4.5°だった。性差においては,股関節屈曲0~45°では左右とも男女間に有意な差はみられなかった。股関節屈曲90°~最大屈曲位においては左右ともに有意な性差がみられた(p<0.05)。また股関節屈曲角度増加に伴う寛骨後傾角度の変化量では,股関節屈曲角度が増すにつれ,寛骨の後傾角度が増加した(p<0.05)。さらに寛骨後傾角度には左右差がみられた。股関節屈曲角度に占める同側骨盤後傾角度の割合は股関節屈曲45°,90,最大屈曲位で男子ではそれぞれ,39.6%,30.4%,29.6%,女子では27.6%,20.4%,21.4%であった。利き足側の股関節屈曲に伴った対側寛骨後傾角度の割合(右股関節屈曲時における左寛骨後傾角度の右寛骨後傾角度の割合)は45°,90°,最大屈曲位で,男子はそれぞれ51.1%,54.4%,56.4%,女子ではそれぞれ34.6%,37.5%,49.8%と性差がみられた。
【考察】基本的立位(股関節屈曲0°)における寛骨後傾最大角度は男子で22.3±5.9°,女子で16.0±7.2°で先行研究よりも大きな値となった。その理由としては,傾斜計を用いた測定であることと,立位の測定により,体幹の固定がなく腰仙関節,腰椎による伸展運動の影響によるものと考えられる。次に股関節屈曲90°以上で寛骨後傾角度に性差があり,股関節屈曲90°以降は男女で寛骨後傾角度が異なることが明らかとなった。また左右差に関しては男女ともに左右の寛骨後傾角度に差があり,左右の仙腸関節の関与が考えられた。さらに股関節屈曲角度に占める骨盤後傾角度の割合は先行研究では股関節屈曲に伴って徐々に増加すると報告されているが,我々の結果では男女とも股関節まで最も高い値を示した。古後は股関節屈曲に伴って寛骨後傾角度が増加すると報告しており,吉尾らによると骨盤固定位での股関節屈曲は健常成人で約70°と報告している。しかしながら本研究では立位における股関節屈曲において,まず寛骨後傾が先行して股関節屈曲が始まり,屈曲90°以降でさらに寛骨後傾が関与したと考えられた。立位の股関節屈曲において,寛骨後傾の角度変化の起きるタイミングについては規定できていなかったと考える。股関節屈曲の角度変化が大きくなくとも骨盤の前後傾は可能であり,今後は個人差も含めた骨盤固定位での股関節角度の変化,股関節角度変化に伴う骨盤後傾の開始のタイミングの把握を含めて股関節と寛骨後傾の関連を性差,左右差を考慮し評価していく必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】腰背部痛や股関節痛の正確な評価のためにはその部位における動きを正確に把握することが重要であると考える。また性差や左右差を把握することにより,より個別性の高い評価,治療が可能になると考えられ,理学療法学研究として有意義であると考える。