[0838] Trunk Impairment ScaleとFunctional Assessment for Control of Trunkの比較
キーワード:Trunk Impairment Scale, Functional Assessment for Control of Trunk, 表面筋電図
【はじめに,目的】
体幹機能評価として,Trunk Impairment Scale(TIS)が推奨されており,ADLとの相関も報告されている。一方,奥田らにより開発されたFunctional Assessment for Control of Trunk(FACT)においてもADLと高い相関を示すことが報告されている。各評価ともにADLとの関連が報告されているが,評価内容は一致していない。このことは,指標となる体幹筋が異なっている可能性を示唆する。しかしながら各評価の筋活動の特徴は明らかとなっていない。各評価における筋活動の特徴を明らかにすることで,指標となる筋に合わせた評価が可能となり,ADLとの関係性も明らかになると考えられる。よって,本研究の目的は,TISとFACTの各課題を表面筋電図にて測定し比較・検討することとした。
【方法】
対象は健常成人男性10名(年齢:29.5±7.2歳)とし,TISの各課題7項目とFACTの各課題10項目において,腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・脊柱起立筋の左右8筋の筋活動を表面筋電図(Noraxon社製myosystem1400)にて測定した。まず,ダニエルスらの徒手筋力テストの測定方法にて,最大随意収縮(MVC)を7秒間測定し,内5秒間でMVCを求めた。各動作は5秒間で行い,10回実施した。各動作の開始と終了をビデオ画面上にて確認した。背臥位での安静筋電図を測定(平均振幅+3×標準偏差)し,以上を筋活動ありと定義した。測定したデータは整流平滑化処理を実施し平均振幅を算出,各動作における平均振幅から正規化した筋活動量(%MVC)を算出した。時間・量の正規化を行い,各動作における筋活動パターンを算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】
阪奈中央病院倫理委員会の承認を得て,ヘルシンキ宣言に基づいて対象者の保護に留意し,説明と同意を得た。
【結果】
TISでは「自動脚組み」の右12.1%MVC,左13.1%MVCが最も高く,その他の項目は1.7~4.8%MVCの筋活動であった。FACTでは,「両下肢挙上」が右29.8%MVC,左26.7%MVCと高い筋活動を示したが,その他の動作では,1.8~10.0%MVCの筋活動が中心であった。[外腹斜筋]TISでは「自動脚組み」の右62.4%MVC,左44.5%MVCが最も高く,続いて「ベッド触る」が右49.6%MVC,左54.3%MVC,「骨盤挙上」が右49.8%MVCと高い筋活動を認めた。FACTでは,「両下肢挙上」の右69.7%MVC,左65.4%MVCが最も高く,続いて「右後方振り向き」で左62.5%MVCであり,その他の動作では3.1~40.1%MVCの筋活動を認めた。[内腹斜筋]TISでは「自動脚組み」が右22.6%MVC,左29.8%MVCで最も高く,その他の動作も3.5~25.6%MVCの筋活動を認めた。FACTでは「両下肢挙上」が右53.1%MVC,左53.0%MVCと最も高いが,その他の動作は2.4~19.1%MVCであった。[脊柱起立筋]TISでは「骨盤挙上」の右43.4%MVCが最も高く,続いて「下部体幹回旋」が右39.0%MVC,左22.4%MVC,「ベッド触る」が左30.6%MVC,「上部体幹回旋」が右29.3%MVC,左23.2%MVCの筋活動を認めた。FACTでは,「右前方リーチ」が右58.7%MVC,左34.7%MVCと最も高い筋活動を示した。続いて「臀部右移動」で右55.3%MVC,左39.2%MVC,「右骨盤挙上」で右49.1%MVC,「骨盤前後移動」で右45.5%MVC,左39.6%MVCの筋活動を認めたが,「両下肢挙上」では右13.1%MVC,左11.1%MVCと低い筋活動を認めた。
【考察】
各筋活動に注目すると,腹直筋では,TISはFACTと比較して半分以下の筋活動しか確認されなかったが,FACTにおいては腹直筋に高い筋活動を必要とする課題構成であった。外腹斜筋では,両者共に外腹斜筋の高い筋活動を必要とする課題構成であった。内腹斜筋では,TISでの筋活動は少なく,FACTは高い筋活動を必要とする課題構成であった。脊柱起立筋では,TIS・FACT共に脊柱起立筋の筋活動が中心の課題構成であるが,FACTに関しては,脊柱起立筋の筋活動を低く保つことが必要な課題もあり,動作内で筋活動量の上下が大きい課題が含まれている。総括すると,TISは腹直筋の筋活動が全体的に低い課題構成となっており,腹直筋については個別で測定することが望ましいと考える。FACTに関しては腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・脊柱起立筋全体が活動することから,体幹筋の筋活動を総合的に評価できる課題構成となっていることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
健常人での筋活動パターンを知ることで,脳卒中症例における体幹機能評価において,動作観察における分析の一助となると考えられる。
体幹機能評価として,Trunk Impairment Scale(TIS)が推奨されており,ADLとの相関も報告されている。一方,奥田らにより開発されたFunctional Assessment for Control of Trunk(FACT)においてもADLと高い相関を示すことが報告されている。各評価ともにADLとの関連が報告されているが,評価内容は一致していない。このことは,指標となる体幹筋が異なっている可能性を示唆する。しかしながら各評価の筋活動の特徴は明らかとなっていない。各評価における筋活動の特徴を明らかにすることで,指標となる筋に合わせた評価が可能となり,ADLとの関係性も明らかになると考えられる。よって,本研究の目的は,TISとFACTの各課題を表面筋電図にて測定し比較・検討することとした。
【方法】
対象は健常成人男性10名(年齢:29.5±7.2歳)とし,TISの各課題7項目とFACTの各課題10項目において,腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・脊柱起立筋の左右8筋の筋活動を表面筋電図(Noraxon社製myosystem1400)にて測定した。まず,ダニエルスらの徒手筋力テストの測定方法にて,最大随意収縮(MVC)を7秒間測定し,内5秒間でMVCを求めた。各動作は5秒間で行い,10回実施した。各動作の開始と終了をビデオ画面上にて確認した。背臥位での安静筋電図を測定(平均振幅+3×標準偏差)し,以上を筋活動ありと定義した。測定したデータは整流平滑化処理を実施し平均振幅を算出,各動作における平均振幅から正規化した筋活動量(%MVC)を算出した。時間・量の正規化を行い,各動作における筋活動パターンを算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】
阪奈中央病院倫理委員会の承認を得て,ヘルシンキ宣言に基づいて対象者の保護に留意し,説明と同意を得た。
【結果】
TISでは「自動脚組み」の右12.1%MVC,左13.1%MVCが最も高く,その他の項目は1.7~4.8%MVCの筋活動であった。FACTでは,「両下肢挙上」が右29.8%MVC,左26.7%MVCと高い筋活動を示したが,その他の動作では,1.8~10.0%MVCの筋活動が中心であった。[外腹斜筋]TISでは「自動脚組み」の右62.4%MVC,左44.5%MVCが最も高く,続いて「ベッド触る」が右49.6%MVC,左54.3%MVC,「骨盤挙上」が右49.8%MVCと高い筋活動を認めた。FACTでは,「両下肢挙上」の右69.7%MVC,左65.4%MVCが最も高く,続いて「右後方振り向き」で左62.5%MVCであり,その他の動作では3.1~40.1%MVCの筋活動を認めた。[内腹斜筋]TISでは「自動脚組み」が右22.6%MVC,左29.8%MVCで最も高く,その他の動作も3.5~25.6%MVCの筋活動を認めた。FACTでは「両下肢挙上」が右53.1%MVC,左53.0%MVCと最も高いが,その他の動作は2.4~19.1%MVCであった。[脊柱起立筋]TISでは「骨盤挙上」の右43.4%MVCが最も高く,続いて「下部体幹回旋」が右39.0%MVC,左22.4%MVC,「ベッド触る」が左30.6%MVC,「上部体幹回旋」が右29.3%MVC,左23.2%MVCの筋活動を認めた。FACTでは,「右前方リーチ」が右58.7%MVC,左34.7%MVCと最も高い筋活動を示した。続いて「臀部右移動」で右55.3%MVC,左39.2%MVC,「右骨盤挙上」で右49.1%MVC,「骨盤前後移動」で右45.5%MVC,左39.6%MVCの筋活動を認めたが,「両下肢挙上」では右13.1%MVC,左11.1%MVCと低い筋活動を認めた。
【考察】
各筋活動に注目すると,腹直筋では,TISはFACTと比較して半分以下の筋活動しか確認されなかったが,FACTにおいては腹直筋に高い筋活動を必要とする課題構成であった。外腹斜筋では,両者共に外腹斜筋の高い筋活動を必要とする課題構成であった。内腹斜筋では,TISでの筋活動は少なく,FACTは高い筋活動を必要とする課題構成であった。脊柱起立筋では,TIS・FACT共に脊柱起立筋の筋活動が中心の課題構成であるが,FACTに関しては,脊柱起立筋の筋活動を低く保つことが必要な課題もあり,動作内で筋活動量の上下が大きい課題が含まれている。総括すると,TISは腹直筋の筋活動が全体的に低い課題構成となっており,腹直筋については個別で測定することが望ましいと考える。FACTに関しては腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・脊柱起立筋全体が活動することから,体幹筋の筋活動を総合的に評価できる課題構成となっていることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
健常人での筋活動パターンを知ることで,脳卒中症例における体幹機能評価において,動作観察における分析の一助となると考えられる。