第49回日本理学療法学術大会

Presentation information

発表演題 ポスター » 内部障害理学療法 ポスター

循環2

Sat. May 31, 2014 11:20 AM - 12:10 PM ポスター会場 (内部障害)

座長:山田純生(名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻)

内部障害 ポスター

[0856] 回復期病院における心臓リハビリテーションの効果

山本智史1, 遠藤宗幹2, 青山敏行3, 池田絢子1 (1.IMS板橋リハビリテーション病院リハビリテーション科, 2.IMS板橋リハビリテーション病院心臓リハビリテーション科, 3.茨城県立医療大学保健医療学部理学療法学科)

Keywords:回復期, 心臓リハビリテーション, 冠危険因子

【はじめに,目的】運動耐容能は心疾患症例の生命予後や再入院率・生活の質(Quality of Life:QOL)に深く関与するとされており,回復期・維持期における病院や自宅での有酸素運動は包括的な心臓リハビリテーションプログラムの一部として患者教育とともに重要視されている。しかしながら,心大血管疾患を主病名とした回復期病院への入院適応はなく,回復期病院で心臓リハビリテーション(心リハ)が実施できるような設備が整っている施設も少ない。また,急性期病院では早期退院・早期社会復帰・外来での運動の継続を勧めているが,退院後の外来心リハ実施施設・外来通院患者ともに少ない状況である。心疾患を呈した症例は再入院率が高く,再入院率を減少させるためには運動耐容能の向上,冠危険因子の是正や心不全状態の安定が重要である。よって本研究では,回復期病院である当院へ入院し,心リハを実施した症例の運動耐容能・冠危険因子・心不全因子へ与える効果について検討した。
【方法】2009年7月から2013年9月までの心大血管疾患入院症例(心疾患治療後の廃用もしくは心疾患合併の脳血管・運動器リハ症例)のうち入院期間内に心肺運動負荷試験(CPX)が可能となった107例(男性67例,女性40例,75.4±9.4歳)を対象とし,後方視的に調査を行った。CPXは200m連続歩行を獲得した時点で実施し,2回目はその1ヶ月後とした。介入については,1日2回,歩行・エルゴメータによる有酸素運動を嫌気性代謝域値で30分(歩行に関してはATHRで実施),筋力強化練習,看護師・薬剤師・管理栄養士による患者教育講義(糖尿病,高血圧,高脂血症,服薬管理,食事管理)を実施した。心リハの効果として,運動耐容能は最大酸素摂取量・6分間歩行,冠危険因子についてはHbA1c・HDL-c・TGを調査し,心不全の程度に対する評価としてBNP・NAd,また,日常生活動作能力に関してはFIM,連続歩行距離を介入前後で比較した。入・退院時で比較した。統計学的解析はMann-WhitneyのU検定にて解析した。有意水準はp<0.05とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究に関しては当院倫理委員会の規定に基づき,ヘルシンキ宣言に則って実施した。
【結果】初回CPX実施までに,入院後,平均34(±25)日間の運動療法を必要とした。心リハ効果は,PeakVO2で11.6±3.1kg/ml/minから13.2±3.4kg/ml/min(p<0.001),6分間歩行で292±121mから332±127m(p<0.05),HDL-cで42.2±10.7mg/dlから47.5±18.4mg/dl(p<0.001),BNPで151±132pg/dlから108±98pg/dl(p<0.01),NAdで0.60±0.32ng/mlから0.52±0.27ng/ml(p<0.05)と各項目で有意に改善した。日常生活動作項目は,FIMで101±18点から117±9,連続歩行距離では141±146mから821±629mと全例で改善した。また,状態悪化により2回目のCPXが実施できなかった症例はいなかった。
【考察】本研究において,回復期病院に入院した心大血管疾患症例に対する回復期での心リハ効果を検討した結果,運動耐容能・HDL-c・心不全関連項目・ADL能力に関する多くの項目で有意な改善が認められた。これに関しては1ヶ月の集中的な有酸素運動の効果として運動耐容能の向上や交感神経活性の抑制,食事・薬物療法による冠危険因子の是正によるものであると考えられる。また,CPXを施行できるまでに平均1ヶ月程度の期間を要していた。回復期病院に転院する症例は,前医での加療による廃用症候群が重度であり,ADL障害を呈していることが多い。そのため,200m連続歩行の獲得に時間を要しており,CPXを施行し,運動処方するためには,長期の介入期間が必要であることが考えられる。また,2回目のCPXを施行できなかった例がいなかったことから,低左心機能症例であってもリハビリ中のアラーム設定を明確にし,心疾患に対するリスク管理を把握した上で積極的な有酸素運動を行うことで,状態悪化なく実施可能となり,急性期病院と比べて緊急時の対応設備が整っていない中で安全に介入することが可能であった。
【理学療法学研究としての意義】回復期で入院中に集中的な心リハを行っている施設は少なく,本研究は回復期心リハの基礎的なデータとして有用である。また,回復期で入院中に集中的に心リハを行なったことで1ヶ月で上記改善が示されており,外来での心リハ効果を検証したいくつかの先行研究と比べ短い期間で同程度の効果が認められている。今後は効果検証のため,外来との比較・検討を行っていきたいと考える。