第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

福祉用具・地域在宅3

2014年5月31日(土) 11:20 〜 12:10 ポスター会場 (生活環境支援)

座長:佐藤健三(近森リハビリテーション病院訪問リハビリテーションちかもり)

生活環境支援 ポスター

[0857] 通所リハビリテーション利用中の独居高齢者と非独居高齢者の運動機能特性と移動性の実態

渡邊修司, 増田幸泰, 小玉陽子, 中野壮一郎, 大田やよい, 中西延光, 東理加, 北村智之 (府中恵仁会病院)

キーワード:地域在住高齢者, 運動機能, 移動性

【はじめに,目的】
我が国では高齢化率の上昇および世帯構造の変化により,2030年には高齢者世帯の37.7%が一人暮らしになると予測されており,独居高齢者数の増加は社会的関心事となっている。小林らによる,在宅高齢者を独居,非独居に分類した先行研究では,独居高齢者が生活を継続する為には,セルフケア,移動,コミュニケーション,社会的認知といった日常生活活動(以下,ADL)項目の高い自立度の必要性が示唆されている。しかし,在宅高齢者において独居,非独居分類での運動機能特性と移動性に着目した研究を目にすることは少ない。
そこで本研究では,独居高齢者(以下,独居群)には手段的日常生活動作(以下,IADL)の遂行機能がより求められ,非独居高齢者(以下,同居群)に比べ移動性が広く,それに伴い運動機能も高いと予測し,両群間の運動機能特性と移動性の実態を明らかにする事を目的とした。
【方法】
対象は当院通所リハビリテーション利用者の中で歩行が自立している者とし,独居群(男性1名,女性7名,平均年齢78.5±6.7歳)と同居群(男性7名,女性3名,平均年齢76.9±7.2歳)に分類した。身体機能の測定項目は身長,体重,10m歩行(快適,最大),timed up and go test(以下TUG),握力,等尺性膝伸展筋力,長坐体前屈,棒反応テスト,ten step test(以下TST),functional reach test(以下FRT),6分間歩行を測定した。また,移動性の指標としてLife-Space Assessment(以下,LSA)を測定した。
統計学的分析にはMann-WhitneyのU検定を用いて独居群と同居群にて各項目の比較を行った。統計処理にはSPSS21.0を用い,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき計画され,研究概要及び方法を本人へ説明し,同意を得たうえで測定を実施した。
【結果】
各項目の平均値(独居群・同居群)は身長(153.1±7.1cm・158.1±6.0cm),体重(56.7±9.2kg・58.2±10.8kg),10m歩行快適速度(52.2±6.2m/min・55.6±9.4 m/min),10m歩行最大速度(69.2±10.2 m/min・70.1±10.6 m/min),TUG(11.8±2.0秒・11.3±2.6秒),握力(0.3±0.1kg・0.4±0.1kg),等尺性膝伸展筋力(0.3±0.1kgf/kg・0.3±0.1 kgf/kg)長坐体前屈(27.9±10.8cm・19.9±11.0cm),棒反応テスト(32.2±6.9cm・29.7±4.7cm),TST(10.9±3.6秒・11.5±2.6秒),FRT(28.8±4.8cm・26.7±8.4cm),6分間歩行(274.8±59.4m・267.0±60.5m),LSA(72.9±15.1点・54.2±8.5点)であった。統計学的な検定の結果としては運動機能の各項目では有意な差は認められず,LSAのみで有位な差を認めた(p<0.05)。
【考察】
本研究の結果,両群で運動機能に有意差は認められなかったが,独居群は同居群に比べ移動性が高かった。この結果から,独居群は先行研究の結果と同様にIADL遂行の為,移動性は高くなっており,同居群では同居家族のIADL支援により,移動性は低下していると考えられた。また,両群間で運動機能に有意差が生じなかった理由として,今回の対象は通所リハビリテーション利用などにより,一定の運動機能を維持している可能性が考えられた。
独居群では独居生活継続に高い自立度と移動性の確保が必要である為,運動機能をより個別的に評価し,運動機能維持を図る必要があると考えられる。また,同居群では移動性の低下が身体活動量の低下を助長し,廃用症候群の要因となり得る為,家族構成にも考慮した上で移動性の向上を促すサービスやアプローチを介護支援専門員や家族と共に検討する必要があると考えられた。
以上のことから在宅高齢者の理学療法介入の際は運動機能や社会的な背景などをより個別的に評価していく必要性が示唆された。
今回測定したLSAは屋外を含めた移動性の指標であるが,今後は屋内での移動性や,家庭内での役割,家族支援の有無,利用サービスの種類等も含め調査し,運動機能を比較検討していくことで,より詳細な両群間の運動機能特性の相違が明らかとなるのではないかと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
独居高齢者と非独居高齢者間の運動機能特性と移動性の相違を明らかにすることは,在宅高齢者に対して理学療法士が個別的かつ効率的なプログラムを作成する際の一助となる。