[0859] リハビリテーション特化型デイケアを利用する脳卒中者の歩行能力と要介護度の2年間における経時的変化
キーワード:通所リハビリテーション, 介護保険, 後方視的研究
【はじめに,目的】
医療保険でのリハビリテーション(以下,リハビリ)の機会が制限される流れのなか,介護保険制度に基づく要介護認定を受けた対象者に対するリハビリは,身体機能の維持・向上や日常生活動作の改善のために,その重要性が増している。近年では,リハビリに特化したデイケアが増加しており,要介護者の日常生活活動の低下や介護量増加の予防が積極的に行われている。しかしながら,リハビリ特化型デイケアを利用する脳卒中者について,長期的な利用による効果と要介護度の経時的変化を検討した報告はない。そこで本研究では,当院併設のデイケアを利用開始後2年以上が経過した脳卒中者について,後方視的に日常生活活動に関連する歩行能力と要介護度の経時的変化を調査し,デイケアの介護予防に対する効果の検討を目的とした。
【方法】
2007年5月から2011年9月の間に当院併設のデイケアを利用した463名のうち以下の基準を満たす者を解析対象とした。選択基準は,当デイケアを2年以上継続して利用,開始時の歩行能力が監視以上,指示理解が良好,初回発作の脳梗塞および脳出血とした。除外基準は,著明な疼痛・拘縮があり歩行が困難,経時的に評価が困難であった者とした。
調査項目は,歩行速度,要介護度とした。歩行速度はデイケア利用開始前と利用後3ヶ月,6ヶ月,12ヶ月および24ヶ月,要介護度は利用開始前,12ヶ月後,24ヶ月後の結果を抽出した。歩行速度は,10 m歩行の快適歩行を2回測定し平均値を算出した。歩行改善の変化は,臨床的意義のある最小変化量(MCID)0.1m/s(Perera et al,2006)を基準に,利用開始前と比較し,経時的な変化を検討した。要介護度は利用開始前を基準に要介護度別に7群で分類し,経時的な変化を検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
当院倫理審査会の承認を得て,後方視的研究として実施した。
【結果】
選択基準を満たす解析の対象者は,104名(男性54名,女性50名)であり,年齢は64.3±10.2歳(平均値±標準偏差),発症後日数は182日(中央値,最小90日-最大4720日)であった。利用開始前の要介護度ごとの人数は,要支援1が6名,要支援2が14名,要介護1が20名,要介護2が29名,要介護3が23名,要介護4が8名,要介護5が4名であった。
対象者全体での歩行速度の変化は,利用開始前と比較し平均値で,3ヶ月後0.06 m/s,6ヶ月後0.08 m/s,12ヶ月後0.11 m/s,24ヶ月後0.14 m/sの改善であった。また歩行速度は,MCIDを基準として,利用開始前と比較し24ヶ月後において56.7%で改善を認め,MCIDに達していないが改善しているものが29.8%であった。一方,MCIDを基準として低下していたのは13.5%であった。要介護度ごとにおける歩行速度の改善は,12ヶ月後,24ヶ月後の順に,要支援1が33.3%,66.7%,要支援2が42.9%,42.9%,要介護1が60%,40%,要介護2が48.3%,48.3%,要介護3が65.2%,78.3%,要介護4が25%,62.5%,要介護5が50%,50%であった。
要介護度の変化は利用開始前と比較し,24ヶ月後に,要介護度が改善したものは29.8%であり,不変61.5%,低下8.7%であった。各要介護区分における改善の変化は,12ヶ月後と24ヶ月後の順に,要支援1が0%,0%,要支援2が0%,7.1%,要介護1が15%,15%,要介護2が6.9%,20.7%,要介護3が26.1%,56.5%,要介護4が62.5%,62.5%,要介護5が50%,75%であった。
【考察】
リハビリ特化型デイケアを利用した脳卒中者において,1年間の利用においてMCIDを超える歩行速度の改善を認めた。さらに2年間利用することで,全体の半数以上で改善し,1年間の利用と比べさらに改善傾向であった。また介護度別の歩行速度の改善では,全ての要介護区分で半数近くまたは半数以上の改善が認められた。これは歩行能力の改善に,要介護に関わらず長期的にリハビリ特化型デイケアを利用することの有効性を示していると考えられる。
平成24年度の介護給付費実態調査(平成24年5月から平成25年4月までの1年間)によると,介護度の改善は全体の20%といわれ,本研究では29.8%とこれを上回る改善を認めた。本研究の結果は,2年間の継続が可能であった対象におけるものであるという違いはあるが,生活期の脳卒中者においてリハビリ特化型デイケアの利用が重要であることが示唆された。今後,脱落者の解析や対象者を増やしての前向き調査を行うことで,リハビリ特化型デイケアを利用する効果とその重要性を検討していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
生活期脳卒中者がリハビリ特化型デイケアを利用することで歩行能力や要介護度の維持,改善に有効なことを経時的変化から初めて示した。これは理学療法が介護保険制度内で脳卒中リハビリに関わることの有効性を示した点で意義がある。
医療保険でのリハビリテーション(以下,リハビリ)の機会が制限される流れのなか,介護保険制度に基づく要介護認定を受けた対象者に対するリハビリは,身体機能の維持・向上や日常生活動作の改善のために,その重要性が増している。近年では,リハビリに特化したデイケアが増加しており,要介護者の日常生活活動の低下や介護量増加の予防が積極的に行われている。しかしながら,リハビリ特化型デイケアを利用する脳卒中者について,長期的な利用による効果と要介護度の経時的変化を検討した報告はない。そこで本研究では,当院併設のデイケアを利用開始後2年以上が経過した脳卒中者について,後方視的に日常生活活動に関連する歩行能力と要介護度の経時的変化を調査し,デイケアの介護予防に対する効果の検討を目的とした。
【方法】
2007年5月から2011年9月の間に当院併設のデイケアを利用した463名のうち以下の基準を満たす者を解析対象とした。選択基準は,当デイケアを2年以上継続して利用,開始時の歩行能力が監視以上,指示理解が良好,初回発作の脳梗塞および脳出血とした。除外基準は,著明な疼痛・拘縮があり歩行が困難,経時的に評価が困難であった者とした。
調査項目は,歩行速度,要介護度とした。歩行速度はデイケア利用開始前と利用後3ヶ月,6ヶ月,12ヶ月および24ヶ月,要介護度は利用開始前,12ヶ月後,24ヶ月後の結果を抽出した。歩行速度は,10 m歩行の快適歩行を2回測定し平均値を算出した。歩行改善の変化は,臨床的意義のある最小変化量(MCID)0.1m/s(Perera et al,2006)を基準に,利用開始前と比較し,経時的な変化を検討した。要介護度は利用開始前を基準に要介護度別に7群で分類し,経時的な変化を検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
当院倫理審査会の承認を得て,後方視的研究として実施した。
【結果】
選択基準を満たす解析の対象者は,104名(男性54名,女性50名)であり,年齢は64.3±10.2歳(平均値±標準偏差),発症後日数は182日(中央値,最小90日-最大4720日)であった。利用開始前の要介護度ごとの人数は,要支援1が6名,要支援2が14名,要介護1が20名,要介護2が29名,要介護3が23名,要介護4が8名,要介護5が4名であった。
対象者全体での歩行速度の変化は,利用開始前と比較し平均値で,3ヶ月後0.06 m/s,6ヶ月後0.08 m/s,12ヶ月後0.11 m/s,24ヶ月後0.14 m/sの改善であった。また歩行速度は,MCIDを基準として,利用開始前と比較し24ヶ月後において56.7%で改善を認め,MCIDに達していないが改善しているものが29.8%であった。一方,MCIDを基準として低下していたのは13.5%であった。要介護度ごとにおける歩行速度の改善は,12ヶ月後,24ヶ月後の順に,要支援1が33.3%,66.7%,要支援2が42.9%,42.9%,要介護1が60%,40%,要介護2が48.3%,48.3%,要介護3が65.2%,78.3%,要介護4が25%,62.5%,要介護5が50%,50%であった。
要介護度の変化は利用開始前と比較し,24ヶ月後に,要介護度が改善したものは29.8%であり,不変61.5%,低下8.7%であった。各要介護区分における改善の変化は,12ヶ月後と24ヶ月後の順に,要支援1が0%,0%,要支援2が0%,7.1%,要介護1が15%,15%,要介護2が6.9%,20.7%,要介護3が26.1%,56.5%,要介護4が62.5%,62.5%,要介護5が50%,75%であった。
【考察】
リハビリ特化型デイケアを利用した脳卒中者において,1年間の利用においてMCIDを超える歩行速度の改善を認めた。さらに2年間利用することで,全体の半数以上で改善し,1年間の利用と比べさらに改善傾向であった。また介護度別の歩行速度の改善では,全ての要介護区分で半数近くまたは半数以上の改善が認められた。これは歩行能力の改善に,要介護に関わらず長期的にリハビリ特化型デイケアを利用することの有効性を示していると考えられる。
平成24年度の介護給付費実態調査(平成24年5月から平成25年4月までの1年間)によると,介護度の改善は全体の20%といわれ,本研究では29.8%とこれを上回る改善を認めた。本研究の結果は,2年間の継続が可能であった対象におけるものであるという違いはあるが,生活期の脳卒中者においてリハビリ特化型デイケアの利用が重要であることが示唆された。今後,脱落者の解析や対象者を増やしての前向き調査を行うことで,リハビリ特化型デイケアを利用する効果とその重要性を検討していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
生活期脳卒中者がリハビリ特化型デイケアを利用することで歩行能力や要介護度の維持,改善に有効なことを経時的変化から初めて示した。これは理学療法が介護保険制度内で脳卒中リハビリに関わることの有効性を示した点で意義がある。