[0860] FIM100点未満の高齢者において自宅退院を向上させるための患者要因の検討
キーワード:高齢者, 機能的自立度評価表, 自宅退院
【はじめに】
超高齢社会を迎え,当病棟へ入院する対象者も高齢化及び重症化している。連携パスなどでは自宅退院の到達目標をFIM100点としており,100点未満で自宅退院できた場合でも家族を含む環境を要因としている報告が多い。今回当病棟に入棟した高齢者80名中,FIM100点以上は入棟時7名,退棟時19名であり,FIM100点未満の入院患者が増加しているが,自宅退院は38名であり,そのうち19名が100点未満であった。そこで退院月の動作能力が自宅退院に関係していると考え,FIM,トイレ動作,トイレ移乗,基本動作,寝返りから起き上がり,立ち上がりから歩行の6評価項目を使用し比較検討を行った。その結果,FIM100点未満の自宅退院に影響した要因を示す結果が得られたので報告する。
【方法】
対象は平成24年6月から1年間で当院回復期病棟に入院した70歳以上の運動器疾患30名,脳血管疾患14名,廃用症候群(術後・肺炎等)36名の計80名(男性26名,女性54名),平均年齢84.79±5.69歳である。方法は,退院月のFIMの総点数,FIMのトイレ動作,トイレ移乗,基本動作評価の総点数,基本動作評価の寝返り・起き上がり,立ち上がり・歩行の6評価項目を使用しFIM100点以上で自宅退院した群19名(平均年齢81.58±5.62,男性4名,女性15名)と100点未満で自宅退院した群19名(平均年齢85.68±5.75,男性6名,女性13名)を比較した。また同様に6項目を100点未満で自宅退院した群19名と100点未満で自宅退院できなかった群40名(平均年齢85.88±5.4,男性15名,女性25名)を比較した。基本動作評価は当院独自で使用している基本動作評価表(以下BMW:Basic-motion Measure in Wajinkai-hospital)で,寝返り(①患側・②非患側),起き上がり(③on elbow・④on hand・⑤off hand),立ち上がり(⑥屈曲相・⑦臀部挙上相・⑧伸展相),⑨歩行の9項目を,FIMを参考に7段階尺度で点数化した評価表である。なお解析ソフトはSTAT VIEWを使用し,Mann-WhitneyのU検定とt検定(対応なし)にて解析した。有意水準は5%とした。
【説明と同意】
本研究は所属の倫理委員会の承認を得て,患者・患者家族に研究の目的・方法を十分に説明した上で協力の可否を問い,同意書にて同意を得た。
【結果】
自宅退院でFIM100点以上群と100点未満群の比較は,FIM(p<0.0001),トイレ動作(p<0.05),トイレ移乗(p<0.0001),BMW(p<0.05),立ち上がり・歩行(p<0.0001)で有意にFIM100点以上群が高かった。しかし寝返り・起き上がりに関しては(p=0.3891)と有意差を認めなかった。FIM100点未満で自宅退院した群と自宅退院できなかった群の比較は,FIM(p<0.001),トイレ動作(p<0.05),トイレ移乗(p<0.001),BMW(p<0.05),寝返り・起き上がり(p<0.001),立ち上がり・歩行(p<0.05)の全ての項目で有意に自宅退院群が高かった。年齢・性差等に関して,自宅退院の比較では疾患別では脳血管疾患が2名と少ないため判別困難。FIM100点未満の比較では,トイレ動作で運動器疾患が廃用症候群に比べ有意に高かった(p<0.05)。
【考察】
超高齢社会が進む中,高齢者では個々に既往歴が複数あり疾患別に分類するのが難しい。加えて個々の姿勢アライメントが異なり,厳密な動作分析等も難しい状況にある。その中でFIM100点未満であっても在宅復帰に必要な動作能力を得ると自宅退院の可能性は高くなると考える。今回の結果より100点未満(自宅・自宅以外)での比較では,全6評価項目においてより能力が高い方が自宅退院の可能性が高くなる要因と示唆されるが,自宅退院(100点以上・未満)の比較から寝返り・起き上がりがその要因として最も必要な動作能力と考えられる。理学療法士及び作業療法士法では,「理学療法とは…主としてその基本動作能力の回復を図るために…」とある。基本動作能力の回復は重要であり,特に寝返り・起き上がりが可能であれば,さまざまな福祉サービスの提供により自宅に退院できる可能性が向上することが示唆される。
【理学療法研究としての意義】
連携パス等において自宅退院の到達目標がFIM100点という認識は低いと考える。FIMの点数が低くても自宅退院できる要因(本人の動作能力など)を探究することが重要である。そのためには,応用動作やADLを中心としたFIMとともに基本動作能力を示す指標を取り入れることが必要である。
超高齢社会を迎え,当病棟へ入院する対象者も高齢化及び重症化している。連携パスなどでは自宅退院の到達目標をFIM100点としており,100点未満で自宅退院できた場合でも家族を含む環境を要因としている報告が多い。今回当病棟に入棟した高齢者80名中,FIM100点以上は入棟時7名,退棟時19名であり,FIM100点未満の入院患者が増加しているが,自宅退院は38名であり,そのうち19名が100点未満であった。そこで退院月の動作能力が自宅退院に関係していると考え,FIM,トイレ動作,トイレ移乗,基本動作,寝返りから起き上がり,立ち上がりから歩行の6評価項目を使用し比較検討を行った。その結果,FIM100点未満の自宅退院に影響した要因を示す結果が得られたので報告する。
【方法】
対象は平成24年6月から1年間で当院回復期病棟に入院した70歳以上の運動器疾患30名,脳血管疾患14名,廃用症候群(術後・肺炎等)36名の計80名(男性26名,女性54名),平均年齢84.79±5.69歳である。方法は,退院月のFIMの総点数,FIMのトイレ動作,トイレ移乗,基本動作評価の総点数,基本動作評価の寝返り・起き上がり,立ち上がり・歩行の6評価項目を使用しFIM100点以上で自宅退院した群19名(平均年齢81.58±5.62,男性4名,女性15名)と100点未満で自宅退院した群19名(平均年齢85.68±5.75,男性6名,女性13名)を比較した。また同様に6項目を100点未満で自宅退院した群19名と100点未満で自宅退院できなかった群40名(平均年齢85.88±5.4,男性15名,女性25名)を比較した。基本動作評価は当院独自で使用している基本動作評価表(以下BMW:Basic-motion Measure in Wajinkai-hospital)で,寝返り(①患側・②非患側),起き上がり(③on elbow・④on hand・⑤off hand),立ち上がり(⑥屈曲相・⑦臀部挙上相・⑧伸展相),⑨歩行の9項目を,FIMを参考に7段階尺度で点数化した評価表である。なお解析ソフトはSTAT VIEWを使用し,Mann-WhitneyのU検定とt検定(対応なし)にて解析した。有意水準は5%とした。
【説明と同意】
本研究は所属の倫理委員会の承認を得て,患者・患者家族に研究の目的・方法を十分に説明した上で協力の可否を問い,同意書にて同意を得た。
【結果】
自宅退院でFIM100点以上群と100点未満群の比較は,FIM(p<0.0001),トイレ動作(p<0.05),トイレ移乗(p<0.0001),BMW(p<0.05),立ち上がり・歩行(p<0.0001)で有意にFIM100点以上群が高かった。しかし寝返り・起き上がりに関しては(p=0.3891)と有意差を認めなかった。FIM100点未満で自宅退院した群と自宅退院できなかった群の比較は,FIM(p<0.001),トイレ動作(p<0.05),トイレ移乗(p<0.001),BMW(p<0.05),寝返り・起き上がり(p<0.001),立ち上がり・歩行(p<0.05)の全ての項目で有意に自宅退院群が高かった。年齢・性差等に関して,自宅退院の比較では疾患別では脳血管疾患が2名と少ないため判別困難。FIM100点未満の比較では,トイレ動作で運動器疾患が廃用症候群に比べ有意に高かった(p<0.05)。
【考察】
超高齢社会が進む中,高齢者では個々に既往歴が複数あり疾患別に分類するのが難しい。加えて個々の姿勢アライメントが異なり,厳密な動作分析等も難しい状況にある。その中でFIM100点未満であっても在宅復帰に必要な動作能力を得ると自宅退院の可能性は高くなると考える。今回の結果より100点未満(自宅・自宅以外)での比較では,全6評価項目においてより能力が高い方が自宅退院の可能性が高くなる要因と示唆されるが,自宅退院(100点以上・未満)の比較から寝返り・起き上がりがその要因として最も必要な動作能力と考えられる。理学療法士及び作業療法士法では,「理学療法とは…主としてその基本動作能力の回復を図るために…」とある。基本動作能力の回復は重要であり,特に寝返り・起き上がりが可能であれば,さまざまな福祉サービスの提供により自宅に退院できる可能性が向上することが示唆される。
【理学療法研究としての意義】
連携パス等において自宅退院の到達目標がFIM100点という認識は低いと考える。FIMの点数が低くても自宅退院できる要因(本人の動作能力など)を探究することが重要である。そのためには,応用動作やADLを中心としたFIMとともに基本動作能力を示す指標を取り入れることが必要である。