[0871] 両側同時人工膝関節単顆置換術患者の術後2週間での歩行動作についての報告
Keywords:人工膝関節単顆置換術, 動作分析, 歩行
【目的】
当院では,入院期間短縮の必要性など医療経済的,社会的希求により人工膝関節単顆置換術(以下UKA)後2週間での退院プログラムを展開している。最小侵襲手術法(Minimally Invasive Surgery:MIS)での早期リハビリテーションの重要性はますます加速しつつある。そのために,後療法の妥当性を検証するための定量的な評価が重要となっている。今回我々は,当院において今後増加が予想される両側同時UKA患者の歩行を,術前と退院時での評価・経過観察の指標とする目的に三次元動作分析装置で定量的に測定した。その結果を比較・検討したため報告する。
【方法】
対象は,当院整形外科にて両側同時UKAを施行し,術前より独歩可能な患者8症例(女性5人,男性3人,年齢71.8±9.3歳,身長152.0±8.8cm,体重59.4±5.0kg,BMI25.8±2.6,FTA右181.6±3.1度,左182.1±3.5度)とした。左右の重複歩距離・時間,歩隔,歩行速度,踵接地時の膝関節角度(以下HS角度),膝関節最大屈曲角度(以下屈曲角度)を三次元動作分析装置(ライブラリー社製GE-60)によって計測した。課題は,裸足にて杖などの歩行補助具は使用せずに,路上における10mの直線自由歩行とし,動作を習熟させるために複数回施行した後に5回測定した。体表面上に直径15mmの反射標点を貼り付け空間座標データを計測した。歩行が定常化する4歩行周期目以降の位置に,測定域として2m3の補正空間を設定し,空間内を移動する反射標点をサンプリング周波数120Hzで撮影した。解析は,三次元動作解析ソフト(MoveTr32)により,平均的な波形を抽出するために最小二乗法により最適化を行った。1歩行周期を100%として正規化し5歩行周期を平均し小数点2桁目を四捨五入して一人の歩行データとした。測定は,術前は手術日の前日に行い,術後は退院日(術後17.9±1.1日)の前日に行った。左右脚と術前後での測定値を,ShapiroWilk検定にて正規分布している値は対応のあるt検定を,正規分布していない値はWilcoxonの符号付順位和検定にて有意差を求めた。有意水準は5%未満とした。測定項目は平均±標準偏差で表記した。
【説明と同意】
主治医同席のもと,本研究の目的および方法について,十分に説明し書面にて同意を得た。なお本研究は,本学医学部の倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】
重複歩距離は術前右93.0±15.4cm,左92.4±14.0cm,術後右88.1±21.8cm,左87.2±22.0cm,重複歩時間は術前右1.2±0.2sec,左1.2±0.2sec,術後右1.3±0.3sec.左1.3±0.3secであった。歩隔は術前8.3±3.0cm,術後8.5±3.3cmであった。歩行速度は術前78.4±19.9cm/sec,術後70.4±22.3cm/secであった。HS角度は術前右171.7±4.8度,左171.8±5.1度,術後右172.1±5.2度,左173.7±4.2度,屈曲角度は術前右54.7±8.9度,左49.4±13.5度,術後右49.3±8.0度,左42.6±12.6度であった。統計解析では,左膝関節の屈曲角度が術前後で有意差(P=0.019)を示した。また,3症例において術後にdouble knee actionが観察された。
【考察】
術前後での左膝関節の屈曲角度で有意差が認められたが,その他の術前後と左右での優位差は認められなかった。先行研究では,日本人の利き足は70%が右脚と報告されており,今回の検査時も多くが右脚からの踏み出しであったことから,左脚が非利き足のため体重を支える軸足になったためと考察した。また,術後2週間では疼痛の残存と筋力や協調性が十分に回復していないため,残存機能を過剰努力で使用した結果,屈曲角度が低下したと考察した。術後にdouble knee actionが観察された3症例のうち2症例は,計測値が術前より改善していたが,要因の特定までは至らなかった。今回の研究では,筆者の研究と比較して,結果的に個体差が大きく歩行様式の特定には至らなかった。今後は,TKAとの比較も含めて症例数を重ねこれらの要因を追究する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
両側同時UKA患者を対象とし,術後2週間での歩行を定量的に測定した報告は少ない。今回の研究で行った,術後2週間時点での歩行を定量的に評価・測定することは,入院期間が短縮傾向にある時流において今後も重要になるため,症例数を重ねて継続する意義がある。
当院では,入院期間短縮の必要性など医療経済的,社会的希求により人工膝関節単顆置換術(以下UKA)後2週間での退院プログラムを展開している。最小侵襲手術法(Minimally Invasive Surgery:MIS)での早期リハビリテーションの重要性はますます加速しつつある。そのために,後療法の妥当性を検証するための定量的な評価が重要となっている。今回我々は,当院において今後増加が予想される両側同時UKA患者の歩行を,術前と退院時での評価・経過観察の指標とする目的に三次元動作分析装置で定量的に測定した。その結果を比較・検討したため報告する。
【方法】
対象は,当院整形外科にて両側同時UKAを施行し,術前より独歩可能な患者8症例(女性5人,男性3人,年齢71.8±9.3歳,身長152.0±8.8cm,体重59.4±5.0kg,BMI25.8±2.6,FTA右181.6±3.1度,左182.1±3.5度)とした。左右の重複歩距離・時間,歩隔,歩行速度,踵接地時の膝関節角度(以下HS角度),膝関節最大屈曲角度(以下屈曲角度)を三次元動作分析装置(ライブラリー社製GE-60)によって計測した。課題は,裸足にて杖などの歩行補助具は使用せずに,路上における10mの直線自由歩行とし,動作を習熟させるために複数回施行した後に5回測定した。体表面上に直径15mmの反射標点を貼り付け空間座標データを計測した。歩行が定常化する4歩行周期目以降の位置に,測定域として2m3の補正空間を設定し,空間内を移動する反射標点をサンプリング周波数120Hzで撮影した。解析は,三次元動作解析ソフト(MoveTr32)により,平均的な波形を抽出するために最小二乗法により最適化を行った。1歩行周期を100%として正規化し5歩行周期を平均し小数点2桁目を四捨五入して一人の歩行データとした。測定は,術前は手術日の前日に行い,術後は退院日(術後17.9±1.1日)の前日に行った。左右脚と術前後での測定値を,ShapiroWilk検定にて正規分布している値は対応のあるt検定を,正規分布していない値はWilcoxonの符号付順位和検定にて有意差を求めた。有意水準は5%未満とした。測定項目は平均±標準偏差で表記した。
【説明と同意】
主治医同席のもと,本研究の目的および方法について,十分に説明し書面にて同意を得た。なお本研究は,本学医学部の倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】
重複歩距離は術前右93.0±15.4cm,左92.4±14.0cm,術後右88.1±21.8cm,左87.2±22.0cm,重複歩時間は術前右1.2±0.2sec,左1.2±0.2sec,術後右1.3±0.3sec.左1.3±0.3secであった。歩隔は術前8.3±3.0cm,術後8.5±3.3cmであった。歩行速度は術前78.4±19.9cm/sec,術後70.4±22.3cm/secであった。HS角度は術前右171.7±4.8度,左171.8±5.1度,術後右172.1±5.2度,左173.7±4.2度,屈曲角度は術前右54.7±8.9度,左49.4±13.5度,術後右49.3±8.0度,左42.6±12.6度であった。統計解析では,左膝関節の屈曲角度が術前後で有意差(P=0.019)を示した。また,3症例において術後にdouble knee actionが観察された。
【考察】
術前後での左膝関節の屈曲角度で有意差が認められたが,その他の術前後と左右での優位差は認められなかった。先行研究では,日本人の利き足は70%が右脚と報告されており,今回の検査時も多くが右脚からの踏み出しであったことから,左脚が非利き足のため体重を支える軸足になったためと考察した。また,術後2週間では疼痛の残存と筋力や協調性が十分に回復していないため,残存機能を過剰努力で使用した結果,屈曲角度が低下したと考察した。術後にdouble knee actionが観察された3症例のうち2症例は,計測値が術前より改善していたが,要因の特定までは至らなかった。今回の研究では,筆者の研究と比較して,結果的に個体差が大きく歩行様式の特定には至らなかった。今後は,TKAとの比較も含めて症例数を重ねこれらの要因を追究する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
両側同時UKA患者を対象とし,術後2週間での歩行を定量的に測定した報告は少ない。今回の研究で行った,術後2週間時点での歩行を定量的に評価・測定することは,入院期間が短縮傾向にある時流において今後も重要になるため,症例数を重ねて継続する意義がある。