第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

骨・関節20

Sat. May 31, 2014 11:20 AM - 12:10 PM ポスター会場 (運動器)

座長:福迫剛(鹿児島赤十字病院リハビリテーション科)

運動器 ポスター

[0877] 関節リウマチ患者に対する高速度エクササイズの効果

宮坂淳介1, 南角学1, 西川徹1, 田仲陽子1, 伊藤宣2,4, 布留守敏2,4, 藤井隆夫2,3, 橋本求2,3, 三森経世3, 柿木良介1,4, 松田秀一4 (1.京都大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.京都大学医学部附属病院リウマチセンター, 3.京都大学医学部附属病院免疫膠原病内科, 4.京都大学医学部附属病院整形外科)

Keywords:関節リウマチ, 運動療法, 身体機能

【はじめに,目的】
関節リウマチ患者(以下,RA)に対する治療としては薬物療法,手術療法に加え,運動療法が重要とされている。これまでRA患者を対象としたエクササイズ効果として,筋力あるいは持久力の向上について報告されているが,適切な負荷量については一致した見解はない。近年,変形性関節症に対する下肢低負荷・高速度エクササイズが下肢筋力や動作能力の向上に有効であると報告されているが,RA患者においてその有効性は不明である。本研究の目的は,RA患者において高速度エクササイズが疼痛,筋力および歩行能力に及ぼす効果を明らかにすることである。
【方法】
当院通院中の女性RA患者16名(年齢57.3±14.9歳,身長157.0±5.5cm,体重51.4±10.4kg)を対象とし,無作為に低速度エクササイズ群(以下,低速度群)7名と高速度エクササイズ群(以下,高速度群)9名に群分けを行った。エクササイズ内容は,股関節外転,膝関節伸展および足関節底屈運動とし,それぞれエラスティックバンドを用いて自覚的強度にて「ややきつい」となる程度の負荷をかけた。高速度群では可能な限り速い速度でバンドを伸張,1秒保持,2秒でスタートポジションに戻る設定とし,低速度群では2秒でバンドを伸張した後は高速度群と同様の設定とした。1日10回を開始後2週間は2セット,3週間目からは3セット行い,合計8週間継続した。エクササイズ開始前と8週間の介入終了後に,Visual Analogue Scaleによる疼痛評価,股関節外転および膝関節伸展筋力測定,5回立ち座りテスト(以下,SST),Timed up and goテスト(以下,TUG)およびSF-36によるQOL評価を施行し,介入前後で比較した。なお,股関節外転および膝関節伸展筋力測定にはそれぞれHand-Held Dynamometer(日本MEDIX社製)およびIsoforce GT330(OG技研社製)を使用した。各測定値の介入前後の比較には,ウィルコクソン検定を用い,有意水準を5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は京都大学医の倫理委員会の承認を得ており,各対象者には本研究の趣旨ならびに目的を詳細に説明し,参加の同意を得た。
【結果】
基本属性(年齢,身長,体重)については,両群間で有意差を認めなかった。介入前の股関節外転筋力平均は高速度群0.77±0.39Nm/kg,低速度群0.87±0.19Nm/kgであり,介入後はそれぞれ0.99±0.45Nm/kgおよび1.08±0.23Nm/kgと有意に増加した。平均膝関節伸展筋力においても,介入前は高速度群1.35±0.66Nm/kg,低速度群1.79±0.78Nm/kgであったが,介入後はそれぞれ1.59±0.67Nm/kgおよび1.93±0.71Nm/kgと両群とも有意に増加した。SSTとTUGについては高速度群でのみ有意に改善した(高速度群SST;介入前10.01±1.89秒 介入後8.23±2.05秒,TUG;介入前8.05±1.88秒 介入後6.82±1.52秒,低速度群SST;介入前10.28±3.37秒 介入後8.62±2.85秒,TUG;介入前7.43±3.00秒 介入後7.07±3.27秒)。疼痛(介入前;高速度群1.62cm 低速度群1.43cm,介入後;高速度群1.47cm 低速度群1.17cm)およびSF-36の各尺度数値は,両群とも介入前後においては有意差を認めなかった。
【考察】
本研究の結果,下肢筋力については高速度群と低速度群の両群において有意な増加が認められ,加えて,SSTおよびTUGについては高速度群においてのみ有意な改善がみられた。高速度エクササイズにより筋力だけでなく歩行等の身体機能が向上するという本研究の結果は,高齢者あるいは下肢変形性関節症患者を対象とした先行研究と同様の結果であった。このことから,関節リウマチ患者に対する高速度エクササイズは立ち上がり,着座あるいは方向転換を伴う歩行等の基本動作能力を,疼痛を増悪させることなく,改善させる可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果は,関節リウマチ患者の身体機能向上のための有効なトレーニング方法立案の一助となることを示唆しており,理学療法学研究として意義あるものと考えられた。