[0878] Tergumed®700とHHDを用いた座位での体幹筋力測定法の検討
Keywords:HHD, 筋力測定, 体幹
【はじめに,目的】
従来から,腰痛症における機能低下の原因の一つとして体幹筋力の弱化が示されており,体幹筋力測定は重要な機能評価である。体幹筋力測定方法として,ハンドヘルドメーター(以下;HHD)は客観性,簡便性,コスト面において有用であると考えるが,測定方法・条件などを詳細に検討する必要がある。腹臥位での体幹伸展運動は腰部椎間板に与える負荷が大きく,腰痛患者や高齢者では徒手筋力検査(MMT)の規定肢位そのものが不可能である。腰痛治療のための(筋力増強・評価)医療機器であるTergumed®700(以下;Tergumed)は,ドイツにおいてclassI認証および品質と安全の認証(TUV)を取得している。Tergumedは固定力が大きく,より正確な客観的測定・評価が可能である。しかし,高価かつ測定の簡便性には優れていない。そこで,本研究では,HHDでもTergumedに遜色なく正確な測定は可能であるかどうかを知る目的で,HHDを用いた椅座位での体幹筋力測定とTergumedを用いた体幹筋力測定を比較し,検討することとした。
【方法】
対象は,健常成人男性42名(効果量:0.4とした時,検定力1-β力は60%)とした。平均年齢32.4±6.8歳,平均身長168.6±7.1cm,平均体重66.7±9.8kgであった。測定にはHHD(徒手筋力計モービィMT-100;酒井医療社製)とTergumed(Back flexion,Back stretcher;Proxomed®社製)を用いた。また,表面筋電計(Noraxon社製テレマイオDTS)を用いて,筋力測定中の筋活動を両側の最長筋部,腸肋筋部,腰部多裂筋部,腹直筋,外腹斜筋,大腿直筋,大殿筋,大腿二頭筋から導出した。
HHDの測定肢位は,膝関節屈曲90度・足関節底背屈0度の椅座位とした。抵抗部位は,体幹屈曲筋力(屈曲)測定では両鎖骨下の中心,体幹伸展筋力(伸展)測定では両肩甲骨下角(T7)の高さの中心とした。HHD測定法として,屈曲筋力は徒手にてHHDを固定する徒手圧迫法を,伸展筋力は壁面にてHHDを固定する壁面圧迫法を用いた。Tergumedの測定肢位は,膝関節屈曲90度・足関節底背屈0度の座位とした。抵抗部位は屈曲測定では両鎖骨下の中心,伸展測定では両肩甲棘の高さの中心とした。
統計的解析は,HHDとTergumedの関係には相関係数と級内相関係数ICC(3,1),%IEMGの比較にはTukeyの多重比較法を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り行った。対象者には,本研究の主旨と方法に関して十分な説明を行い,承諾を得た後,測定を行った。なお,本研究は福島県立医科大学会津医療センター倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
TergumedとHHDの筋力測定は,屈曲がr=0.801(p<0.05),伸展がr=0.813(p<0.05)であり,いずれも高い相関があった。級内相関係数は屈曲がICC(3,1)=0.863(95%信頼区間;0.701-0.879),伸展がICC(3,1)=0.887(0.739-0.891)であった。筋電積分値は体幹屈曲では,Tergumedを用いた測定で,腹直筋と外腹斜筋が他の筋に対し有意に高値(p<0.05)を示し,HHDを用いた測定で,外腹斜筋が他の筋に対し有意に高値(p<0.05)を示した。体幹伸展では,Tergumedを用いた測定で,最長筋部,腸腰筋部,腰部多裂筋部が他の筋に対し有意に高値(p<0.05)を示し,HHDを用いた測定でも同様の結果であった。
【考察】
本研究の結果から,端座位での体幹筋力測定は,主動作筋の活動を反映した筋力測定方法であると考える。体幹伸展筋力測定においては,HHDならびにTergumedいずれを用いても主動作筋の活動による測定が可能である。しかし,体幹屈曲筋力評価においては,HHDは外腹斜筋の影響をより強く反映した。これにより,腹直筋の筋活動を得るためにはより強固な固定が必要となる可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】
本研究において,座位での体幹筋力評価方法が十分に体幹筋力を評価可能であることが示唆された。Tergumedの正確性・再現性は臨床評価に重要であることは言うまでもない。HHDによる座位での簡便かつ正確な体幹筋力の測定は,腰痛や変形のため腹臥位をとれない患者に対してより効率の良い評価方法であり,短時間での測定が可能なため,臨床における理学療法効果の判定に有用な評価バッテリーであると考える。
従来から,腰痛症における機能低下の原因の一つとして体幹筋力の弱化が示されており,体幹筋力測定は重要な機能評価である。体幹筋力測定方法として,ハンドヘルドメーター(以下;HHD)は客観性,簡便性,コスト面において有用であると考えるが,測定方法・条件などを詳細に検討する必要がある。腹臥位での体幹伸展運動は腰部椎間板に与える負荷が大きく,腰痛患者や高齢者では徒手筋力検査(MMT)の規定肢位そのものが不可能である。腰痛治療のための(筋力増強・評価)医療機器であるTergumed®700(以下;Tergumed)は,ドイツにおいてclassI認証および品質と安全の認証(TUV)を取得している。Tergumedは固定力が大きく,より正確な客観的測定・評価が可能である。しかし,高価かつ測定の簡便性には優れていない。そこで,本研究では,HHDでもTergumedに遜色なく正確な測定は可能であるかどうかを知る目的で,HHDを用いた椅座位での体幹筋力測定とTergumedを用いた体幹筋力測定を比較し,検討することとした。
【方法】
対象は,健常成人男性42名(効果量:0.4とした時,検定力1-β力は60%)とした。平均年齢32.4±6.8歳,平均身長168.6±7.1cm,平均体重66.7±9.8kgであった。測定にはHHD(徒手筋力計モービィMT-100;酒井医療社製)とTergumed(Back flexion,Back stretcher;Proxomed®社製)を用いた。また,表面筋電計(Noraxon社製テレマイオDTS)を用いて,筋力測定中の筋活動を両側の最長筋部,腸肋筋部,腰部多裂筋部,腹直筋,外腹斜筋,大腿直筋,大殿筋,大腿二頭筋から導出した。
HHDの測定肢位は,膝関節屈曲90度・足関節底背屈0度の椅座位とした。抵抗部位は,体幹屈曲筋力(屈曲)測定では両鎖骨下の中心,体幹伸展筋力(伸展)測定では両肩甲骨下角(T7)の高さの中心とした。HHD測定法として,屈曲筋力は徒手にてHHDを固定する徒手圧迫法を,伸展筋力は壁面にてHHDを固定する壁面圧迫法を用いた。Tergumedの測定肢位は,膝関節屈曲90度・足関節底背屈0度の座位とした。抵抗部位は屈曲測定では両鎖骨下の中心,伸展測定では両肩甲棘の高さの中心とした。
統計的解析は,HHDとTergumedの関係には相関係数と級内相関係数ICC(3,1),%IEMGの比較にはTukeyの多重比較法を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り行った。対象者には,本研究の主旨と方法に関して十分な説明を行い,承諾を得た後,測定を行った。なお,本研究は福島県立医科大学会津医療センター倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
TergumedとHHDの筋力測定は,屈曲がr=0.801(p<0.05),伸展がr=0.813(p<0.05)であり,いずれも高い相関があった。級内相関係数は屈曲がICC(3,1)=0.863(95%信頼区間;0.701-0.879),伸展がICC(3,1)=0.887(0.739-0.891)であった。筋電積分値は体幹屈曲では,Tergumedを用いた測定で,腹直筋と外腹斜筋が他の筋に対し有意に高値(p<0.05)を示し,HHDを用いた測定で,外腹斜筋が他の筋に対し有意に高値(p<0.05)を示した。体幹伸展では,Tergumedを用いた測定で,最長筋部,腸腰筋部,腰部多裂筋部が他の筋に対し有意に高値(p<0.05)を示し,HHDを用いた測定でも同様の結果であった。
【考察】
本研究の結果から,端座位での体幹筋力測定は,主動作筋の活動を反映した筋力測定方法であると考える。体幹伸展筋力測定においては,HHDならびにTergumedいずれを用いても主動作筋の活動による測定が可能である。しかし,体幹屈曲筋力評価においては,HHDは外腹斜筋の影響をより強く反映した。これにより,腹直筋の筋活動を得るためにはより強固な固定が必要となる可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】
本研究において,座位での体幹筋力評価方法が十分に体幹筋力を評価可能であることが示唆された。Tergumedの正確性・再現性は臨床評価に重要であることは言うまでもない。HHDによる座位での簡便かつ正確な体幹筋力の測定は,腰痛や変形のため腹臥位をとれない患者に対してより効率の良い評価方法であり,短時間での測定が可能なため,臨床における理学療法効果の判定に有用な評価バッテリーであると考える。