第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 神経理学療法 ポスター

その他2

Sat. May 31, 2014 11:20 AM - 12:10 PM ポスター会場 (神経)

座長:寄本恵輔(国立精神・神経医療研究センターリハビリテーション部)

神経 ポスター

[0886] ポリオ罹患者のQOLに関与する因子についての検討

木村公宣1, 花田菜摘1, 緒方友登1, 村上武史1, 久原聡志1, 明日徹1, 舌間秀雄1, 松嶋康之2, 蜂須賀研二2 (1.産業医科大学病院リハビリテーション部, 2.産業医科大学病院リハビリテーション医学講座)

Keywords:ポリオ, QOL, 筋力

【はじめに,目的】
ポリオ罹患後,数十年を経て,新たな筋力低下や筋萎縮などの症状が出現するポリオ後症候群(以下PPS)が注目されている。ポリオ罹患者はPPSを発症するとActivities of Daily Living(以下ADL),Quality of Life(以下QOL)の低下を引き起こすとされている。ポリオ罹患者は,日常生活の中で残存機能の代償による能力維持に努め,機能障害への対処法を駆使している。先行研究では,ポリオ羅患者は,経年的に筋力やQOLが低下しているという報告がある。また,身体的側面のQOLが低下し,精神的側面のQOLは維持されているとの報告もあり,身体的側面のQOLを維持向上させることが大切である。そこで今回,ポリオ罹患者の身体的側面のQOL低下に影響を与える要因について検討した。
【方法】
当院では2001年から1回/年ポリオ相談会を開催しており,そこで各種検査・測定を実施している。2011年に当院にて開催されたポリオ相談会に参加した53名(年齢61.3±6.8歳)を対象とした。患者背景項目として,年齢,性別,罹病期間,歩行状況,歩行補助具(杖,車椅子)使用の有無,Body Mass Index(以下BMI)を,検査・測定項目としてBarthel Index(以下BI),Manual Muscle Testing(以下MMT)による大腿四頭筋,ハムストリングス,前脛骨筋の合計値(麻痺重度側,計15点),応用的ADL評価(Frenchay Activities Index;FAI),日常生活満足度の評価(Satisfaction in Daily Life;SDL),健康関連QOL評価(Mos 36-Item Short-Form Health Survey;SF-36)を抽出した。SF-36の身体的側面のQOLサマリースコア(Physical Component Summary;PCS)の平均値38点(国民標準値50点,参加者平均値37.6点)を基準として,38点以上を高QOL群,38点未満を低QOL群に分類し,各項目について比較した。統計解析にはχ2検定,対応のないt検定を用い,有意水準はそれぞれ5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
当院ポリオ相談会に参加したポリオ罹患者に対して,十分な説明を行い,検査・測定結果の使用の同意を得ている。
【結果】
高QOL群は29名,低QOL群は24名であった。患者背景項目は,低QOL群では杖使用あるいは車椅子使用者が有意に多かった。その他の項目では2群間で有意差を認めなかった。検査・測定項目は,MMTは高QOL群(5.4±4.9)が低QOL群(3.9±3.2)より有意に高値であった(p=0.02)。BIは,高QOL群(97.8±6.2)は低QOL群(86.7±16.5)より有意に高値であった(p<0.01)。SDL合計値,FAI合計値では両群間に有意差は認められなかった。しかし,SDLの歩行関連項目は,高QOL群(4.1±1.1)が低QOL群(2.8±2.8)より有意に高値であった(p=0.03)。今回,参加者の精神的側面のQOLサマリースコア(Mental Component Summary;MCS)は53.7点(国民標準値50点)と保たれていた。
【考察】
今回の結果から先行研究と同様にMCSは維持され,PCSは低い結果であった。PCSの低いポリオ罹患者は,PCSの高いポリオ罹患者に比べ,歩行補助具を使用しており,筋力低下ならびにADL低下を呈していることが明らかになった。またSDLの歩行関連項目においても,PCSの低いポリオ罹患者はPCSの高いポリオ罹患者に比べ,有意に低下していることが認められた。以上のことからポリオ罹患者のPCSには,下肢筋力,自力での歩行能力,ADLが影響している可能性が考えられた。我々理学療法士は,年1回のポリオ相談会で下肢筋力や移動能力低下によりADL低下を示す患者に対し,歩行能力の維持・向上を図ることで,ポリオ罹患者のQOLを維持させることが可能かもしれない。歩行能力の維持・向上を図る具体的な手段として,装具検討等を行うことも重要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
ポリオ罹患者のQOLの要因について,筋力とADLが影響していることを明らかにした。当院では毎年ポリオ相談会を実施しており,今後,縦断的な研究に発展させることができる。