[0888] 地域在住高齢者の歩行不安感に影響を及ぼす因子
Keywords:歩行不安, 敏捷性, 転倒予防
【目的】
転倒に対する不安感は高齢者の活動性やQOLを低下させ,生活圏の減少はやがて廃用障害を招き総合的に転倒リスクを増加させる。
転倒は予防の見地から考えると転倒の「前兆」である歩行不安感について解明すべきであるが,これまで歩行不安感とその要因について論じた報告は極めて少ない。
本研究の目的は地域在住高齢者の歩行不安感に影響を及ぼす因子を同定することである。
【方法】
H25年10月30日に秋田市で開催された市民健康フォーラムの体力年齢調査に参加した者のうち研究の主旨に同意が得られた地域在住高齢者15名[平均年齢66.7歳(SD_7.7歳)]を対象とした。
対象者の性別,年齢,過去一年間の転倒歴の有無,疼痛の有無とその程度(visual analog scale;VAS)及び5m最大歩行時間,30秒立ち上がりテスト,開眼片脚立位時間,長座位前屈,棒反応を独立変数,歩行不安感を従属変数とした重回帰分析を行った。また,Pearsonの相関係数を用いて各変数間の相関を求めた。
長座位前屈の測定にはリーチ計測器CK-101(SAKAI医療社製),棒反応の測定には落下棒CK-102(SAKAI医療社製),転倒不安感の評価にはTinettiの転倒不安感尺度の「近所を歩くことの不安」項目を用いた。
解析にはStatView5.0を用い有意水準は5%とした。また,各体力要素の測定結果は年齢階級別基準表(厚労省)を基に「低い」~「かなり高い」までの5段階で評価した。
【倫理的配慮,説明と同意】
参加者には書面で研究の主旨を説明し,同意を得て実施した。また,個人情報の漏洩には十分配慮した。
【結果】
歩行不安感を感じている者は15名中4名(26.7%)で,うち2名はVAS=5以上の痛みを有していた。重回帰分析の結果,棒反応,性別が有意な変数として選択された(自由度調整R2=0.69,p<0.0001)。
また,歩行不安感と有意な相関を認めた因子は,棒反応(r=-0.70,p<0.01),性別(r=-0.77,p<0.001),痛み(r=0.54,p<0.05)であり,長座位前屈(r=0.63,p<0.05)と痛み(r=-0.60,p<0.05)は棒反応と有意な相関を認めた。
なお,各体力要素の平均値(SD)は,5m最大歩行時間2.3 sec(SD_0.3 sec),開眼片脚立位時間99.4sec(SD_34.4 sec),30秒立ち上がりテスト24.1回(SD_6.9回),長座位前屈39.8cm(SD_7.8cm),棒反応22.3cm(SD_6.0cm)であり,各年代別の体力水準と比較して「標準」~「かなり高い」とする結果であった。
【考察】
棒反応は敏捷性を反映する指標として体力検査でよく用いられる。本調査では,敏捷性の低下及び性別(女性)が地域在住高齢者の歩行不安感に影響を及ぼす因子となる可能性が示唆された。
また,痛みが歩行不安感の増加及び敏捷性の低下と強い相関を示したことは痛みがそれら増悪の遠因となっている可能性を示すものであり,敏捷性の改善以外にも介入の余地を示唆する貴重な知見といえる。
なお「5m最大歩行時間」,「開眼片脚立位時間」で「高い」~「かなり高い」とした体力水準を有していても歩行不安を感じている者が相当程度(26.7%)いたことは,歩行能力やバランス能力が高くても歩行不安を感じている者が存在することを示すものであり臨床上,言及する価値がある。
【理学療法学研究としての意義】
転倒を予防するにはその前兆である「歩行不安」を感じている段階で介入すべきであり,それには従来のような下肢筋パワー及びバランス能力に関する取り組みだけでなく「敏捷性の低下」や「痛み」の存在も視野に入れて介入することは意義がある。
転倒に対する不安感は高齢者の活動性やQOLを低下させ,生活圏の減少はやがて廃用障害を招き総合的に転倒リスクを増加させる。
転倒は予防の見地から考えると転倒の「前兆」である歩行不安感について解明すべきであるが,これまで歩行不安感とその要因について論じた報告は極めて少ない。
本研究の目的は地域在住高齢者の歩行不安感に影響を及ぼす因子を同定することである。
【方法】
H25年10月30日に秋田市で開催された市民健康フォーラムの体力年齢調査に参加した者のうち研究の主旨に同意が得られた地域在住高齢者15名[平均年齢66.7歳(SD_7.7歳)]を対象とした。
対象者の性別,年齢,過去一年間の転倒歴の有無,疼痛の有無とその程度(visual analog scale;VAS)及び5m最大歩行時間,30秒立ち上がりテスト,開眼片脚立位時間,長座位前屈,棒反応を独立変数,歩行不安感を従属変数とした重回帰分析を行った。また,Pearsonの相関係数を用いて各変数間の相関を求めた。
長座位前屈の測定にはリーチ計測器CK-101(SAKAI医療社製),棒反応の測定には落下棒CK-102(SAKAI医療社製),転倒不安感の評価にはTinettiの転倒不安感尺度の「近所を歩くことの不安」項目を用いた。
解析にはStatView5.0を用い有意水準は5%とした。また,各体力要素の測定結果は年齢階級別基準表(厚労省)を基に「低い」~「かなり高い」までの5段階で評価した。
【倫理的配慮,説明と同意】
参加者には書面で研究の主旨を説明し,同意を得て実施した。また,個人情報の漏洩には十分配慮した。
【結果】
歩行不安感を感じている者は15名中4名(26.7%)で,うち2名はVAS=5以上の痛みを有していた。重回帰分析の結果,棒反応,性別が有意な変数として選択された(自由度調整R2=0.69,p<0.0001)。
また,歩行不安感と有意な相関を認めた因子は,棒反応(r=-0.70,p<0.01),性別(r=-0.77,p<0.001),痛み(r=0.54,p<0.05)であり,長座位前屈(r=0.63,p<0.05)と痛み(r=-0.60,p<0.05)は棒反応と有意な相関を認めた。
なお,各体力要素の平均値(SD)は,5m最大歩行時間2.3 sec(SD_0.3 sec),開眼片脚立位時間99.4sec(SD_34.4 sec),30秒立ち上がりテスト24.1回(SD_6.9回),長座位前屈39.8cm(SD_7.8cm),棒反応22.3cm(SD_6.0cm)であり,各年代別の体力水準と比較して「標準」~「かなり高い」とする結果であった。
【考察】
棒反応は敏捷性を反映する指標として体力検査でよく用いられる。本調査では,敏捷性の低下及び性別(女性)が地域在住高齢者の歩行不安感に影響を及ぼす因子となる可能性が示唆された。
また,痛みが歩行不安感の増加及び敏捷性の低下と強い相関を示したことは痛みがそれら増悪の遠因となっている可能性を示すものであり,敏捷性の改善以外にも介入の余地を示唆する貴重な知見といえる。
なお「5m最大歩行時間」,「開眼片脚立位時間」で「高い」~「かなり高い」とした体力水準を有していても歩行不安を感じている者が相当程度(26.7%)いたことは,歩行能力やバランス能力が高くても歩行不安を感じている者が存在することを示すものであり臨床上,言及する価値がある。
【理学療法学研究としての意義】
転倒を予防するにはその前兆である「歩行不安」を感じている段階で介入すべきであり,それには従来のような下肢筋パワー及びバランス能力に関する取り組みだけでなく「敏捷性の低下」や「痛み」の存在も視野に入れて介入することは意義がある。