第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 基礎理学療法 口述

生体評価学2

2014年5月31日(土) 13:00 〜 13:50 第4会場 (3F 302)

座長:谷口圭吾(札幌医科大学保健医療学部理学療法学科)

基礎 口述

[0897] 三次元動作解析装置を用いた肩関節角度算出方法の検討

海津陽一1,2, 山路雄彦2 (1.日高病院回復期リハビリ室, 2.群馬大学大学院保健学研究科)

キーワード:三次元動作解析装置, 肩関節角度, 座標系設定方法

【はじめに,目的】
三次元動作解析装置を用いた研究は多く行われているが,反射マーカ位置からセグメント位置を推測するという方法上,その妥当性が議論されている。異なるマーカ位置による角度算出値の違いに関する報告は認める一方,同一マーカ位置を用いるが座標系算出手順が異なる場合の角度算出値の違いを検討したものは見られない。本研究では体幹座標系設定方法の違いによるが肩関節角度算出値に及ぼす影響を明らかとすることを目的とした。
【方法】
対象は健常成人男性10人(年齢24.8±1.2歳)の左右上肢20肢を対象とした。測定には3次元動作解析装置(VICON社製NEXUS)を用いた。計測手順として,まず検者がゴニオメータを用いて被験者に角度条件を設定し,そのポジションを3次元動作解析装置(250Hz)にて1秒間計測した。角度条件は,前額面において①肩関節外転45度,②外転90度,水平面において③水平内転45度,④水平外転10度,回旋方向について肩関節外転90度肢位における⑤外旋45度,⑥外旋90度の計6条件の測定を行った。なお,角度設定の定義は,日本整形外科学会による関節可動域の定義に従った。ここまでの手順を,それぞれの角度条件につき3試行実施した。計測結果から肩関節角度を算出する際に用いる体幹座標系を,体幹中心点から計測側肩関節中心に向かうベクトルをマーカ位置から求める方法(方法A),体幹長軸ベクトルをマーカ位置から求める方法(方法B),非計測側肩関節中心から体幹中心点に向かうベクトルをマーカ位置から求める方法(方法C)という異なる3種類の方法により設定した。肩関節角度は,方法A,B,Cの3種類の方法によって求められた体幹座標系のベクトルと,上腕骨長軸ベクトルの成す角度(回旋方向のみ前腕長軸ベクトルを利用)を計算することによって求めた。体幹座標系設定方法A,B,Cにおける角度算出値に対し,一元配置分散分析を行い,有意差が認められた場合に多重比較検定を行った。更に,運動方向ごとの角度変化量についても一元配置分散分析,多重比較検定を行った。なお,統計解析ソフトはSPSSを用い,有意水準を5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究にあたり対象者には研究の趣旨を説明し,書面にて同意署名を得た。
【結果】
前額面上での外転45度における算出値は,方法A(51.59±4.5度),方法B(40.6±2.9度),方法C(24.5±3.3度),また外転90度における算出値は,方法A(82.9±4.9度),方法B(82.5±2.9度),方法C(67±3.9度)であった。外転角度において,方法A,Bは方法Cと比較し有意に大きい値を認め,外転45度から外転90度への角度変化量について,方法Aは,方法B,Cと比較し有意に小さかった。水平面上での水平内転45度における算出値は,方法A(41.2±3.9度),方法B(38.1±3.8度),方法C(40.6±3.6度),また水平外転10度(-10度)における算出値は,方法A(4.4±5度),方法B(-10.2±4.7度),方法C(-19.9±6.8度)であった。水平内転45度では,方法間の有意差は認めず,水平外転10度,水平内転45度から水平外転10度への角度変化量について,方法C,B,Aの順に大きく,グループ間に有意差を認めた。回旋方向での外旋45度における算出値は,方法A(44.9±4.2度),方法B(45.1±4度),方法C(45.5±4.4度),また外旋90度における算出値は,方法A(82.1±3.6度),方法B(82.1±3.2度),方法C(81.9±3.6度)であった。外旋角度における方法間の角度算出値,角度変化量について有意差は認めなかった。
【考察】
前額面上,水平面上での運動における角度変化量において,方法Aは,方法B,Cと比較して小さい値を認めた。方法Aは,計測側肩関節中心を含むベクトルを用いて体幹座標系を設定している。そのため,計測側肩甲胸郭関節の拳上,上方回旋運動によって体幹座標系が移動し,「肩関節複合体としての角度から,肩甲胸郭関節の運動範囲を除外した角度」を反映すると考える。一方,方法B,Cは計測側肩甲胸郭関節の運動に影響されるベクトルを体幹座標系設定の際に用いていないために,「肩関節複合体としての角度」を反映すると考えられる。水平面での角度変化量において,方法Cが最も大きな値となったが,これは非計測側肩甲胸郭関節の内転,外旋によって体幹座標系が移動したためと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
三次元動作解析装置を用いて肩関節角度を算出する際に,肩関節複合体としての角度を求めたいのか,あるいは肩甲上腕関節の運動を反映した角度を求めたいのかという研究の目的によって体幹座標系設定方法を選択していく必要性が示唆された。