[0924] 中学生野球選手におけるセルフチェックテスト “Check 9” の有用性
Keywords:障害予防, 投球障害, 成長期
【目的】
成長期の野球選手の障害予防の取り組みとしては,各年代の選手に対するメディカルチェックから各種大会のメディカルサポート,各種講演など多くの活動が行なわれている。しかし,実際の障害発生件数の明らかな減少に至っているとは言い難い。また,成人野球選手の多くが成長期段階から何らかの障害を有しているともいわれている。ゆえに,成長期野球選手の障害を予防することは我々理学療法士にとって非常に重要な課題であると考える。そこで我々は学童期から実施可能なセルフチェックテスト“Check 9”と野球選手に重要なストレッチ項目を抽出した“Stretching 9”を含めた“Top 9”を独自に作成し,全日本軟式野球連盟主催成長期のスポーツ障害予防・指導者講習会においてもその啓発活動を行なっている。そこで今回はその中の“Check 9”の有用性を検討することを目的に各テストと障害の有無との関連を検討した。
【方法】
対象は,中学校軟式野球部に在籍する男子中学生27名(年齢:13.2±0.8歳,身長:157.5±8.5cm,体重:49.4±10.0kg)とした。基本情報について,年齢,学年,ポジションを聴取した。肩・肘関節痛の有無は理学療法士が投球時痛をインタビューにて聴取した。肩関節または肘関節に疼痛を有する者を障害群,有さない者を対照群とした。Check 9の構成要素は,ショルダーモビリティテスト,Finger Floor Distance(FFD),Heel Buttock Distance(HBD),股関節内旋テスト,しゃがみ込み,片脚立位(またはフォワードベンド),フォワードベンチ,サイドベンチ,クロスモーションの9項目であり,今回はよりセルフチェックが簡便に行なえるようクロスモーションを除き片脚立位とフォワードベンドを独立させた9項目で評価を行なった。各テストの結果は動作・運動が正確に行なえる場合を陰性,行なえない場合を陽性とし,理学療法士1名で判定を行なった。統計学的解析では,各評価項目においてカイ二乗検定を行い,対照群に対する障害群のオッズ比を算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者全員および保護者,チーム責任者に本研究内容,対象者の有する権利について十分に説明を行い参加の同意を得た。
【結果】
障害群は15名,対照群は12名であった。対照群に対して障害群では軸脚HBD(p=0.004),非軸脚HBD(p=0.038),非軸脚股関節内旋(p=0.013),非軸脚フォワードベンド(p=0.047)で有意に陽性者の人数が多かった。オッズ比(95%信頼区間)は対照群に対して障害群でそれぞれ,軸脚HBDが12.0倍(1.9-74.0),非軸脚HBDが5.5倍(1.0-28.9),非軸脚股関節内旋が8.3倍(1.5-46.9),フォワードベンドが7.5倍(1.2-47.0)であった。
【考察】
今回の研究より,HBD,股関節内旋,フォワードベンドのテストで陽性であった者は肩・肘関節に疼痛を有しやすいことが明らかになった。つまりは,大腿四頭筋の柔軟性,股関節内旋可動域,動的な立位バランスの低下が障害発生の要因となりうると考えられる。またオッズ比より,軸脚大腿四頭筋の柔軟性低下,軸脚股関節内旋の可動域低下が障害発生に大きく影響を及ぼすことが示唆された。群間で有意な差が認められなかった項目についても障害予防には重要であるとされており,それに加え今回の客観的な検討により,我々が作成した“Check 9”は野球選手の障害予防におけるセルフチェックとして有用であるといえる。さらには“Stretching 9”には今回障害要因として示唆された項目に対するストレッチングが含まれており,障害予防プログラムとして“Top 9”の有用性を検討していくことが重要であると考える。本研究は横断的研究であり実際に障害発生との因果関係は明確ではない。今後縦断的な調査を行うことが課題である。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,成長期野球選手における身体機能のセルフチェックの有用性を明らかにしたものであり,障害予防の一指標として非常に意義があると考える。
成長期の野球選手の障害予防の取り組みとしては,各年代の選手に対するメディカルチェックから各種大会のメディカルサポート,各種講演など多くの活動が行なわれている。しかし,実際の障害発生件数の明らかな減少に至っているとは言い難い。また,成人野球選手の多くが成長期段階から何らかの障害を有しているともいわれている。ゆえに,成長期野球選手の障害を予防することは我々理学療法士にとって非常に重要な課題であると考える。そこで我々は学童期から実施可能なセルフチェックテスト“Check 9”と野球選手に重要なストレッチ項目を抽出した“Stretching 9”を含めた“Top 9”を独自に作成し,全日本軟式野球連盟主催成長期のスポーツ障害予防・指導者講習会においてもその啓発活動を行なっている。そこで今回はその中の“Check 9”の有用性を検討することを目的に各テストと障害の有無との関連を検討した。
【方法】
対象は,中学校軟式野球部に在籍する男子中学生27名(年齢:13.2±0.8歳,身長:157.5±8.5cm,体重:49.4±10.0kg)とした。基本情報について,年齢,学年,ポジションを聴取した。肩・肘関節痛の有無は理学療法士が投球時痛をインタビューにて聴取した。肩関節または肘関節に疼痛を有する者を障害群,有さない者を対照群とした。Check 9の構成要素は,ショルダーモビリティテスト,Finger Floor Distance(FFD),Heel Buttock Distance(HBD),股関節内旋テスト,しゃがみ込み,片脚立位(またはフォワードベンド),フォワードベンチ,サイドベンチ,クロスモーションの9項目であり,今回はよりセルフチェックが簡便に行なえるようクロスモーションを除き片脚立位とフォワードベンドを独立させた9項目で評価を行なった。各テストの結果は動作・運動が正確に行なえる場合を陰性,行なえない場合を陽性とし,理学療法士1名で判定を行なった。統計学的解析では,各評価項目においてカイ二乗検定を行い,対照群に対する障害群のオッズ比を算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者全員および保護者,チーム責任者に本研究内容,対象者の有する権利について十分に説明を行い参加の同意を得た。
【結果】
障害群は15名,対照群は12名であった。対照群に対して障害群では軸脚HBD(p=0.004),非軸脚HBD(p=0.038),非軸脚股関節内旋(p=0.013),非軸脚フォワードベンド(p=0.047)で有意に陽性者の人数が多かった。オッズ比(95%信頼区間)は対照群に対して障害群でそれぞれ,軸脚HBDが12.0倍(1.9-74.0),非軸脚HBDが5.5倍(1.0-28.9),非軸脚股関節内旋が8.3倍(1.5-46.9),フォワードベンドが7.5倍(1.2-47.0)であった。
【考察】
今回の研究より,HBD,股関節内旋,フォワードベンドのテストで陽性であった者は肩・肘関節に疼痛を有しやすいことが明らかになった。つまりは,大腿四頭筋の柔軟性,股関節内旋可動域,動的な立位バランスの低下が障害発生の要因となりうると考えられる。またオッズ比より,軸脚大腿四頭筋の柔軟性低下,軸脚股関節内旋の可動域低下が障害発生に大きく影響を及ぼすことが示唆された。群間で有意な差が認められなかった項目についても障害予防には重要であるとされており,それに加え今回の客観的な検討により,我々が作成した“Check 9”は野球選手の障害予防におけるセルフチェックとして有用であるといえる。さらには“Stretching 9”には今回障害要因として示唆された項目に対するストレッチングが含まれており,障害予防プログラムとして“Top 9”の有用性を検討していくことが重要であると考える。本研究は横断的研究であり実際に障害発生との因果関係は明確ではない。今後縦断的な調査を行うことが課題である。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,成長期野球選手における身体機能のセルフチェックの有用性を明らかにしたものであり,障害予防の一指標として非常に意義があると考える。