[0952] 内部障害患者の住宅改造ニーズに関する予備的研究
キーワード:内部障害患者, 住宅改造, ニーズ
【はじめに,目的】
現在呼吸器・心大血管リハビリ(以下,心リハ)実施施設の増加に伴い,我々リハビリスタッフの関わる内部障害患者数も増加傾向である。それら患者の在宅復帰に際し,65歳未満の内部障害患者では,糖尿病性腎症・閉塞性動脈硬化症・慢性閉塞性肺疾患を除いて介護保険対象とならない。また,身障手帳を取得していても,自治体による福祉制度で対象としていない場合が多い。これら患者の住宅改造(以下,住改)ニーズについて,当センター心リハ対象者へのアンケートを実施し予備的に調査した。
【方法】
平成25年9月1日~10月31日の間,当センターで週1-2回運動療法を実施した心リハ対象疾患患者20名(平均年齢67.7±6.6歳,男性11名,女性9名)を対象に,面接形式でアンケート調査を実施した。併せて運動負荷検査(以下,CPX)・血液(BNP)・心エコー(EF)データを参照した。全例が屋外歩行杖無し自立レベルであり,17名に脳血管疾患の合併を認めた。統計処理にはSPSS 17.0 for Windowsを使用し,T検定・Spearmanの順位相関係数・Mann-WhitneyのU検定を有意水準5%にて実施した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当センター内倫理審査委員会にて審査の上認証された。対象者へは個々に口頭で研究内容を説明し同意を得た。
【結果】
対象者の疾患内訳は,急性心筋梗塞2名・狭心症12名・大血管疾患3名・慢性心不全17名・末梢動脈閉塞性疾患1名・他4名で,2疾患重複8名・3疾患重複4名・4疾患重複1名であった。NYHA機能分類はI度14名・II度6名であり,発症前に比した自覚的体力低下度(I;全く感じない~V;非常に感じる)は,I1名・II6名・III1名・IV6名・V6名であった。CPX・BNP・EF平均データは次のとおりであった。健常者比最大酸素摂取量(以下,Peak V(dot)O2%)76.7±19.1%,健常者比嫌気性代謝閾値(以下,AT %)82.9±15.0%,BNP82.8±70.5pg/ml,EF57.2±10.0%。これらデータにおいて脳血管疾患有無での有意差は認めなかった。また対象者のPeak V(dot)O2/ATは,健常者データに比して有意に低かった。
アンケート結果より,住改済み6名・住改希望有り15名であり全体の75%が現在何らかの改修を必要と感じていた。住改希望箇所では,浴室の手すり取付が8名(40%)と最も多く,上り框の段差解消7名(35%),玄関・トイレの手すり取付6名(30%)が続いた。
【考察】
心リハ対象患者において,NYHAI-II群で屋外歩行自立していても,Peak V(dot)O2及びATは健常者に比して低値であり,内部障害疾患発症による体力衰えの自覚につながったと考えられる。また,住改希望者は75%に昇り,心リハ患者においても在宅復帰に際する住環境評価・ADL動作指導・家族指導等の個別対応の重要性が示唆された。
但し,今回当センター利用者に対象を限定したことで平均年齢が65歳を上回り,脳血管疾患合併者が大半を占め,対象者数が少なかったことは本研究の限界であり,今後他院・施設と連携するなど対象枠を拡大した研究実施が望まれることは否めない。
【理学療法学研究としての意義】
内部障害患者の在宅生活復帰に関する研究は少ない。今回アンケート調査より,体力の衰えから日常生活に困難を生じているものが少なくないことが示唆された。
65歳未満の内部障害患者の中には,障害を抱えながらケースワークを受けられず孤立する者が存在する可能性がある。屋外歩行自立していても,運動耐用能の低下により生活に不便を感じ,住改を必要と感じている症例は存在する。退院前に患者の経済的負担能力に応じた現実的な住改案の提示や,家族指導・生活環境に対応したリハビリ実施が望まれる。また各自治体の福祉制度を熟知し,利用可能であれば情報提供することも,我々内部障害患者に関わるリハビリスタッフの職能として重要であると考えられた。
現在呼吸器・心大血管リハビリ(以下,心リハ)実施施設の増加に伴い,我々リハビリスタッフの関わる内部障害患者数も増加傾向である。それら患者の在宅復帰に際し,65歳未満の内部障害患者では,糖尿病性腎症・閉塞性動脈硬化症・慢性閉塞性肺疾患を除いて介護保険対象とならない。また,身障手帳を取得していても,自治体による福祉制度で対象としていない場合が多い。これら患者の住宅改造(以下,住改)ニーズについて,当センター心リハ対象者へのアンケートを実施し予備的に調査した。
【方法】
平成25年9月1日~10月31日の間,当センターで週1-2回運動療法を実施した心リハ対象疾患患者20名(平均年齢67.7±6.6歳,男性11名,女性9名)を対象に,面接形式でアンケート調査を実施した。併せて運動負荷検査(以下,CPX)・血液(BNP)・心エコー(EF)データを参照した。全例が屋外歩行杖無し自立レベルであり,17名に脳血管疾患の合併を認めた。統計処理にはSPSS 17.0 for Windowsを使用し,T検定・Spearmanの順位相関係数・Mann-WhitneyのU検定を有意水準5%にて実施した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当センター内倫理審査委員会にて審査の上認証された。対象者へは個々に口頭で研究内容を説明し同意を得た。
【結果】
対象者の疾患内訳は,急性心筋梗塞2名・狭心症12名・大血管疾患3名・慢性心不全17名・末梢動脈閉塞性疾患1名・他4名で,2疾患重複8名・3疾患重複4名・4疾患重複1名であった。NYHA機能分類はI度14名・II度6名であり,発症前に比した自覚的体力低下度(I;全く感じない~V;非常に感じる)は,I1名・II6名・III1名・IV6名・V6名であった。CPX・BNP・EF平均データは次のとおりであった。健常者比最大酸素摂取量(以下,Peak V(dot)O2%)76.7±19.1%,健常者比嫌気性代謝閾値(以下,AT %)82.9±15.0%,BNP82.8±70.5pg/ml,EF57.2±10.0%。これらデータにおいて脳血管疾患有無での有意差は認めなかった。また対象者のPeak V(dot)O2/ATは,健常者データに比して有意に低かった。
アンケート結果より,住改済み6名・住改希望有り15名であり全体の75%が現在何らかの改修を必要と感じていた。住改希望箇所では,浴室の手すり取付が8名(40%)と最も多く,上り框の段差解消7名(35%),玄関・トイレの手すり取付6名(30%)が続いた。
【考察】
心リハ対象患者において,NYHAI-II群で屋外歩行自立していても,Peak V(dot)O2及びATは健常者に比して低値であり,内部障害疾患発症による体力衰えの自覚につながったと考えられる。また,住改希望者は75%に昇り,心リハ患者においても在宅復帰に際する住環境評価・ADL動作指導・家族指導等の個別対応の重要性が示唆された。
但し,今回当センター利用者に対象を限定したことで平均年齢が65歳を上回り,脳血管疾患合併者が大半を占め,対象者数が少なかったことは本研究の限界であり,今後他院・施設と連携するなど対象枠を拡大した研究実施が望まれることは否めない。
【理学療法学研究としての意義】
内部障害患者の在宅生活復帰に関する研究は少ない。今回アンケート調査より,体力の衰えから日常生活に困難を生じているものが少なくないことが示唆された。
65歳未満の内部障害患者の中には,障害を抱えながらケースワークを受けられず孤立する者が存在する可能性がある。屋外歩行自立していても,運動耐用能の低下により生活に不便を感じ,住改を必要と感じている症例は存在する。退院前に患者の経済的負担能力に応じた現実的な住改案の提示や,家族指導・生活環境に対応したリハビリ実施が望まれる。また各自治体の福祉制度を熟知し,利用可能であれば情報提供することも,我々内部障害患者に関わるリハビリスタッフの職能として重要であると考えられた。