[0954] 当院通所リハ施設の利用者動向について
Keywords:通所リハ, 利用者動向, 要介護度
【はじめに,目的】
わが国の高齢化率は2025年には30.5%に上昇すると推計され,要介護高齢者のさらなる増加が予想される中,生活期を支える通所リハビリテーション(以下,通所リハ)の役割は重要である。当施設は平成17年12月に開設し,利用定員は40名,6~8時間の提供時間で運営している。通所リハに関する報告では,通所リハ施設の長期間の利用者動向や転帰先について言及したものは少なく,今後のサービス提供の指針を得るため,今回,当施設の2年間の利用者動向や転帰先,利用者の要介護度の推移について調査したので報告する。
【方法】
対象は,平成23年1月から平成25年1月の2年間の全利用者とし,利用者の基本属性,サービスの利用状況,転帰先等を通所リハ記録やサービス提供表から調査した。また,平成23年1月から平成25年1月まで2年間継続利用した者(以下,継続利用者)と,調査対象期間中に入院し一時利用を中断し再開した者(以下,利用中断者)で,基本属性や要介護度について比較した。統計学的解析には,Mann-WhitneyのU検定,χ2検定(期待度数が5以下のセルがある場合はFisherの直接確率法)を用いた。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には今回の調査目的を説明し同意を得た。
【結果】
平成23年1月から平成25年1月の2年間の利用者総数は175名で,男性67名,女性108名,年齢79.8±8.6歳であった。疾患の内訳は骨関節疾患76名(43%),脳血管疾患70名(40%),神経筋疾患12名(7%),認知症7名(4%),その他10名(6%)で,要介護度の平均は2.1(要支援1:3名,2:18名,要介護1:37名,2:52名,3:40名,4:19名,5:6名)であった。平成23年1月の利用登録者は108名で,平成25年1月までの継続利用者は42名(39%),利用中断者が16名(15%),一時入院中の者が2名,利用終了者は48名(44%)であった。終了理由および転帰先は,入院15名(31%),他サービスへの移行13名(27%),入所9名(19%),死亡6名(13%),自己都合5名(10%)であった。終了者の利用期間は,1年未満の利用が3名,1年以上2年未満が9名,2年以上が36名で,最長6年8ヵ月であった。継続利用者42名中,2年間で要介護度が改善した者は1名,維持は31名,悪化は10名であり,1段階悪化した者が9名,2段階の悪化が1名であった。利用中断者16名では,要介護度が改善した者が1名,維持が6名,悪化が9名で,1段階の悪化が7名,3段階の悪化が2名であった。悪化した9名中8名は入院以降の介護認定更新時に要介護度が悪化した。入院の延べ回数は29回で,3回以上の入退院を繰り返した者は4名いた。入院理由の上位は,骨折が8名(29%)と最も多く,肺炎4名(14%),消化器疾患3名(11%)と続いた。継続利用者と利用中断者では,利用中断者で年齢が有意に高く(p<0.05),要介護度の悪化は,継続利用者の24%,利用中断者の56%に生じていた(p<0.05)。2年間の新規利用者の総数は66名で,32名(48%)は2年以内に終了していた。終了理由は,自己都合10名(31%),他サービスへの移行10名(31%),死亡5名(16%),入院3名(9%),入所2名(6%),軽快2名(6%)であった。利用期間は,最長21ヵ月,最短は1日(2名)であり,3ヵ月未満での終了者は16名であった。平成25年1月の利用登録者数は93名であった。
【考察】
平成23年1月の利用登録者108名中,利用中断者は15%,利用終了者は44%に上り,継続利用者は4割に満たなかった。平成25年1月時点の利用登録者は93名で,2年間で35%の利用者が入れ替わっていた。様々な疾患や障害を併せ持つ要介護高齢者にとって長期間通所サービスを継続する困難さを表しており,終了理由では,入院や入所,死亡で6割以上を占めていた。また,利用中断者のうち要介護度が悪化した者の大半は,入院以降の介護認定更新時に要介護度が悪化しており,新たな疾患の発症や持病の悪化,入院中の活動の制限などにより機能低下に陥ったことが示唆された。入院理由は多岐に渡るが,骨折が最も多く,利用者の機能面への介入に加え,生活指導,環境調整など,転倒や骨折リスクを軽減させる関わりが重要である。2年間の新規利用者66名中32名(48%)は2年以内に終了し,半数は3ヵ月以内に終了していた。終了理由は,自己都合,他サービスへの移行で6割を占め,当施設への適応やリハ意欲の問題で利用中止あるいは通所介護に移行した者が多かった。要介護高齢者では継続利用することが困難な者が多く,入院により要介護度の悪化に至る者もおり,通所リハ施設のサービスの質やリハの効果について要介護度の変化で一律に評価するのは難しい面があり,新たな評価指標の検討も必要であろう。
【理学療法学研究としての意義】
通所リハ施設の長期間に渡る利用者動向や施設の特長が明らかになることで,生活期のリハビリテーション体制構築の一助となる。
わが国の高齢化率は2025年には30.5%に上昇すると推計され,要介護高齢者のさらなる増加が予想される中,生活期を支える通所リハビリテーション(以下,通所リハ)の役割は重要である。当施設は平成17年12月に開設し,利用定員は40名,6~8時間の提供時間で運営している。通所リハに関する報告では,通所リハ施設の長期間の利用者動向や転帰先について言及したものは少なく,今後のサービス提供の指針を得るため,今回,当施設の2年間の利用者動向や転帰先,利用者の要介護度の推移について調査したので報告する。
【方法】
対象は,平成23年1月から平成25年1月の2年間の全利用者とし,利用者の基本属性,サービスの利用状況,転帰先等を通所リハ記録やサービス提供表から調査した。また,平成23年1月から平成25年1月まで2年間継続利用した者(以下,継続利用者)と,調査対象期間中に入院し一時利用を中断し再開した者(以下,利用中断者)で,基本属性や要介護度について比較した。統計学的解析には,Mann-WhitneyのU検定,χ2検定(期待度数が5以下のセルがある場合はFisherの直接確率法)を用いた。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には今回の調査目的を説明し同意を得た。
【結果】
平成23年1月から平成25年1月の2年間の利用者総数は175名で,男性67名,女性108名,年齢79.8±8.6歳であった。疾患の内訳は骨関節疾患76名(43%),脳血管疾患70名(40%),神経筋疾患12名(7%),認知症7名(4%),その他10名(6%)で,要介護度の平均は2.1(要支援1:3名,2:18名,要介護1:37名,2:52名,3:40名,4:19名,5:6名)であった。平成23年1月の利用登録者は108名で,平成25年1月までの継続利用者は42名(39%),利用中断者が16名(15%),一時入院中の者が2名,利用終了者は48名(44%)であった。終了理由および転帰先は,入院15名(31%),他サービスへの移行13名(27%),入所9名(19%),死亡6名(13%),自己都合5名(10%)であった。終了者の利用期間は,1年未満の利用が3名,1年以上2年未満が9名,2年以上が36名で,最長6年8ヵ月であった。継続利用者42名中,2年間で要介護度が改善した者は1名,維持は31名,悪化は10名であり,1段階悪化した者が9名,2段階の悪化が1名であった。利用中断者16名では,要介護度が改善した者が1名,維持が6名,悪化が9名で,1段階の悪化が7名,3段階の悪化が2名であった。悪化した9名中8名は入院以降の介護認定更新時に要介護度が悪化した。入院の延べ回数は29回で,3回以上の入退院を繰り返した者は4名いた。入院理由の上位は,骨折が8名(29%)と最も多く,肺炎4名(14%),消化器疾患3名(11%)と続いた。継続利用者と利用中断者では,利用中断者で年齢が有意に高く(p<0.05),要介護度の悪化は,継続利用者の24%,利用中断者の56%に生じていた(p<0.05)。2年間の新規利用者の総数は66名で,32名(48%)は2年以内に終了していた。終了理由は,自己都合10名(31%),他サービスへの移行10名(31%),死亡5名(16%),入院3名(9%),入所2名(6%),軽快2名(6%)であった。利用期間は,最長21ヵ月,最短は1日(2名)であり,3ヵ月未満での終了者は16名であった。平成25年1月の利用登録者数は93名であった。
【考察】
平成23年1月の利用登録者108名中,利用中断者は15%,利用終了者は44%に上り,継続利用者は4割に満たなかった。平成25年1月時点の利用登録者は93名で,2年間で35%の利用者が入れ替わっていた。様々な疾患や障害を併せ持つ要介護高齢者にとって長期間通所サービスを継続する困難さを表しており,終了理由では,入院や入所,死亡で6割以上を占めていた。また,利用中断者のうち要介護度が悪化した者の大半は,入院以降の介護認定更新時に要介護度が悪化しており,新たな疾患の発症や持病の悪化,入院中の活動の制限などにより機能低下に陥ったことが示唆された。入院理由は多岐に渡るが,骨折が最も多く,利用者の機能面への介入に加え,生活指導,環境調整など,転倒や骨折リスクを軽減させる関わりが重要である。2年間の新規利用者66名中32名(48%)は2年以内に終了し,半数は3ヵ月以内に終了していた。終了理由は,自己都合,他サービスへの移行で6割を占め,当施設への適応やリハ意欲の問題で利用中止あるいは通所介護に移行した者が多かった。要介護高齢者では継続利用することが困難な者が多く,入院により要介護度の悪化に至る者もおり,通所リハ施設のサービスの質やリハの効果について要介護度の変化で一律に評価するのは難しい面があり,新たな評価指標の検討も必要であろう。
【理学療法学研究としての意義】
通所リハ施設の長期間に渡る利用者動向や施設の特長が明らかになることで,生活期のリハビリテーション体制構築の一助となる。