[0957] 要支援者への2年間にわたる短時間型通所リハビリテーションの効果
Keywords:通所リハビリテーション, 介護予防, 要支援
【目的】
2025年の地域包括ケアシステムに向けてリハビリテーションの在宅誘導が推進されている中で,短時間型通所リハビリテーション(以下短時間型通所リハ)は,その存在意義を示していく必要があるが長期的な効果検証をした報告は数少ない。そこで本研究は要支援者を対象として,2年間におよぶ短時間型通所リハが,介護度,身体機能,日常生活動作(以下ADL)に及ぼす影響を検証し,さらに身体機能の変化に関与する因子について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は2011年6月から2013年6月まで短時間型通所リハを利用している要支援者49名のうち,3か月以上連続で休所した4名を除いた45名(年齢73.7±6.2歳,男性24名 女性21名)とした。利用者の主な基礎疾患は,脳血管障害27名,骨関節疾患12名,パーキンソン病3名,その他3名であった。サービス内容は,パワーリハビリ機器,自転車エルゴメーター,立ち上がり練習などの筋力・体力増強練習を中心に自主トレーニング表を各個人で作成し,主体的に運動に取り組んで頂いており,個別リハビリは提供していない。スタッフは理学療法士3名のみで運営し,ご利用時間は各個人で幅があるものの約2~3時間が大部分を占めている。
測定項目は,介護度,身体機能評価として握力,膝伸展筋力体重比(以下膝伸展筋力),開眼片脚立位時間,Timed up&Go test(以下TUG),5m最大歩行時間(以下歩行時間)の5項目を,ADLの評価としてBarthel Index(以下BI)を用いた。握力,膝伸展筋力,開眼片脚立位時間(上限30秒)は,左右2回ずつ計測し最大値を選択した。TUG,歩行時間は2回計測し,最小値を選択した。初回評価(2011年6月)から1年後,2年後に同様の測定を行った。
またTUG,歩行時間の初回評価と2年後の比率(2年後/初回)を算出した。そしてTUG・歩行時間の比率において,初回評価時の基本情報(年齢,基礎疾患の罹患日数,初期評価時における短時間型通所リハ継続期間),初期評価時の各測定項目,2年間のご利用回数との相関関係を検討した。さらにTUG・歩行時間の比率を従属変数に,初期評価時の各項目を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。
統計処理は,初期評価,1年後,2年後の比較において多重比較検定のTukeyを用いた。また,TUG・歩行時間の比率との相関関係において,介護度はSpearmanの順位相関係数を,その他の項目はPearsonの相関係数を算出した。統計解析にはSPSSver21を用い,有意確率は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
当院の倫理委員会の承認を得た後,対象者に対して書面にて研究の説明を行い,署名にて同意を得た。
【結果】
初回評価時における短時間型通所リハ継続期間は796±477日,主な基礎疾患の罹患日数は1871±1365日,握力は27.2±7.3kg,膝伸展筋力は0.41±0.11,開眼片脚立位時間は18.3±11.2秒,TUGは12.3±5.9秒,歩行時間は5.9±3.0秒であった。
初回評価と1年後,2年後を比較した結果,膝伸展筋力において初回評価に比べて2年後(p<0.01)に,1年後と比べて2年後(p=0.029)に有意な改善が認められた。その他の項目は有意差が認められなかった。
TUG比率はBIとの間に相関関係(r=-0.479,p<0.01)が認められ,歩行時間比率は握力(r=-0.410,p<0.01),開眼片脚立位時間(r=-0.308,p=0.041)との間に相関関係が認められた。重回帰分析の結果,TUG比率はBI(重相関係数0.48,決定係数0.23)のみに,歩行時間比率は握力(重相関係数0.41,決定係数0.17)のみに関連性があった。
【考察】
本研究の対象はすでに短時間型通所リハを長期間利用しており,利用前後の変化を検証することは出来ない。しかしながらパワーリハビリ機器を中心とした2年間にわたる継続した運動介入により,下肢筋力が向上し,バランス・歩行能力さらにはADL能力が保たれ,介護度の悪化抑制といった介護予防効果があったと考えられる。また重回帰分析より,ADL能力が低い者ほどTUGが,握力が低い者ほど歩行時間が長期的に延長する事が示唆された。ご利用回数とTUG・歩行時間の比率との間に関連はなかったが,今後はサービス内容(運動量,運動内容)と身体機能の変化について分析し,短時間型通所リハの効果を継続的に検証していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により,要支援者に対する長期的な短時間型通所リハビリテーションの効果が示され,地域包括ケアシステムに向けての存在意義を示す根拠の一つとなると考えられる。
2025年の地域包括ケアシステムに向けてリハビリテーションの在宅誘導が推進されている中で,短時間型通所リハビリテーション(以下短時間型通所リハ)は,その存在意義を示していく必要があるが長期的な効果検証をした報告は数少ない。そこで本研究は要支援者を対象として,2年間におよぶ短時間型通所リハが,介護度,身体機能,日常生活動作(以下ADL)に及ぼす影響を検証し,さらに身体機能の変化に関与する因子について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は2011年6月から2013年6月まで短時間型通所リハを利用している要支援者49名のうち,3か月以上連続で休所した4名を除いた45名(年齢73.7±6.2歳,男性24名 女性21名)とした。利用者の主な基礎疾患は,脳血管障害27名,骨関節疾患12名,パーキンソン病3名,その他3名であった。サービス内容は,パワーリハビリ機器,自転車エルゴメーター,立ち上がり練習などの筋力・体力増強練習を中心に自主トレーニング表を各個人で作成し,主体的に運動に取り組んで頂いており,個別リハビリは提供していない。スタッフは理学療法士3名のみで運営し,ご利用時間は各個人で幅があるものの約2~3時間が大部分を占めている。
測定項目は,介護度,身体機能評価として握力,膝伸展筋力体重比(以下膝伸展筋力),開眼片脚立位時間,Timed up&Go test(以下TUG),5m最大歩行時間(以下歩行時間)の5項目を,ADLの評価としてBarthel Index(以下BI)を用いた。握力,膝伸展筋力,開眼片脚立位時間(上限30秒)は,左右2回ずつ計測し最大値を選択した。TUG,歩行時間は2回計測し,最小値を選択した。初回評価(2011年6月)から1年後,2年後に同様の測定を行った。
またTUG,歩行時間の初回評価と2年後の比率(2年後/初回)を算出した。そしてTUG・歩行時間の比率において,初回評価時の基本情報(年齢,基礎疾患の罹患日数,初期評価時における短時間型通所リハ継続期間),初期評価時の各測定項目,2年間のご利用回数との相関関係を検討した。さらにTUG・歩行時間の比率を従属変数に,初期評価時の各項目を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。
統計処理は,初期評価,1年後,2年後の比較において多重比較検定のTukeyを用いた。また,TUG・歩行時間の比率との相関関係において,介護度はSpearmanの順位相関係数を,その他の項目はPearsonの相関係数を算出した。統計解析にはSPSSver21を用い,有意確率は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
当院の倫理委員会の承認を得た後,対象者に対して書面にて研究の説明を行い,署名にて同意を得た。
【結果】
初回評価時における短時間型通所リハ継続期間は796±477日,主な基礎疾患の罹患日数は1871±1365日,握力は27.2±7.3kg,膝伸展筋力は0.41±0.11,開眼片脚立位時間は18.3±11.2秒,TUGは12.3±5.9秒,歩行時間は5.9±3.0秒であった。
初回評価と1年後,2年後を比較した結果,膝伸展筋力において初回評価に比べて2年後(p<0.01)に,1年後と比べて2年後(p=0.029)に有意な改善が認められた。その他の項目は有意差が認められなかった。
TUG比率はBIとの間に相関関係(r=-0.479,p<0.01)が認められ,歩行時間比率は握力(r=-0.410,p<0.01),開眼片脚立位時間(r=-0.308,p=0.041)との間に相関関係が認められた。重回帰分析の結果,TUG比率はBI(重相関係数0.48,決定係数0.23)のみに,歩行時間比率は握力(重相関係数0.41,決定係数0.17)のみに関連性があった。
【考察】
本研究の対象はすでに短時間型通所リハを長期間利用しており,利用前後の変化を検証することは出来ない。しかしながらパワーリハビリ機器を中心とした2年間にわたる継続した運動介入により,下肢筋力が向上し,バランス・歩行能力さらにはADL能力が保たれ,介護度の悪化抑制といった介護予防効果があったと考えられる。また重回帰分析より,ADL能力が低い者ほどTUGが,握力が低い者ほど歩行時間が長期的に延長する事が示唆された。ご利用回数とTUG・歩行時間の比率との間に関連はなかったが,今後はサービス内容(運動量,運動内容)と身体機能の変化について分析し,短時間型通所リハの効果を継続的に検証していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により,要支援者に対する長期的な短時間型通所リハビリテーションの効果が示され,地域包括ケアシステムに向けての存在意義を示す根拠の一つとなると考えられる。