[0959] 人工膝関節置換術後早期の患者立脚型評価における連続歩行時間に関連する運動機能の検討
キーワード:人工膝関節置換術, 運動機能, 患者立脚型評価
【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)は変形性膝関節症や関節リウマチによる膝関節の疼痛や変形に対する治療として,医師立脚型評価における除痛,膝関節機能や歩行能力の改善効果に優れた手術療法である。しかし,患者立脚型評価における,それらの評価は必ずしも高くなくその原因は明らかとなっていない。TKA術後患者の立脚型評価に関わる運動機能の因子を明確にすれば,より効果的な介入が可能となり患者の満足度の向上につながると考えられる。特に,術後の回復過程にある術後早期の患者では,患者立脚型評価と運動機能の関連を明らかにすることでより有効な介入が可能になると考えられる。しかし,術後早期の患者立脚型に関わる運動機能などの客観的な評価項目を検討した報告は少なく,不明な点が多い。そこで本研究の目的は,TKA術後早期の患者立脚型評価における連続歩行時間に関連する運動機能を検討することとした。
【対象と方法】対象はTKAを施行された76名(男性11名,女性65名,年齢72.4±7.8歳,BMI 25.9±5.7kg/m2)とした。対象者は当院のTKA術後プロトコールに準じてリハビリテーションを行い,術後3週で退院となった。測定項目はTKA術後3週の歩行能力,術側の膝関節可動域,下肢筋力,片脚立位時間とした。歩行能力としては10m歩行時間を測定した。10m歩行時間は,12mの直線歩行路を設け前後1mを除いた10mの所要時間を測定した。膝関節可動域の測定は,日本リハビリテーション医学会の測定方法に準じて術側の屈曲と伸展の可動域を計測し,5°単位にて記録した。下肢筋力は両側の膝関節伸展・屈曲筋力,脚伸展筋力とした。測定にはIsoforceGT-330(OG技研社製)を用い,等尺性筋力を測定した。筋力値として膝関節伸展・屈曲筋力はトルク体重比(Nm/kg),脚伸展筋力は体重比(N/kg)を算出した。それぞれ2回測定し最大値を採用した。また,患者立脚型評価として,2011 knee society scoreを用いてTKA術後3週の主観的な歩行時の疼痛と連続歩行時間を評価した。統計処理には,TKA術後3週の連続歩行時間と各測定項目の関連性の検討にはspearmanの相関係数を用いた。また,連続歩行時間と有意な相関関係を認めた測定項目を説明変数,連続歩行時間を目的変数としたstepwise重回帰分析を行い,統計学的有意基準は危険率5%未満とした。
【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施し,各対象者に本研究の趣旨と目的を詳細に説明し,参加の同意を得た。
【結果】TKA術後3週の連続歩行時間の平均値は7.1±3.4点であった。連続歩行時間の詳細は,歩くことができないのが5名(6.6%),0~5分が6名(7.9%),6~15分が36名(47.4%),16~30分が19名(25.0%),31~60分が6名(7.9%),1時間以上が4名(5.3%)であった。TKA術後3週の連続歩行時間と有意な相関関係を認めたのは,術側の膝関節伸展可動域(r=0.27),膝関節伸展筋力(r=0.33),脚伸展筋力(r=0.36),片脚立位時間(r=0.49),10m歩行時間(r=0.40),歩行時の疼痛(r=0.48)であった。さらに,重回帰分析の結果より,TKA術後3週の連続歩行時間を決定する因子として歩行時の疼痛,片脚立位時間,脚伸展筋力が有意な項目として選択された。標準偏回帰係数は,歩行時の疼痛は0.54,片脚立位時間は0.08,脚伸展筋力は0.51であり,この回帰式の修正済み決定係数はR2=0.39であった。
【考察】本研究の結果より,TKA術後早期において下肢筋力や歩行能力さらに片脚立位バランス機能が良好かつ歩行時の疼痛が低い症例ほど主観的な連続歩行時間が長くなるという相関関係を認めた。さらに,重回帰分析の結果より,TKA術後患者の主観的な連続歩行時間に関わる重要な因子として,脚伸展筋力と片脚立位バランス機能と歩行時の疼痛が抽出された。この結果から,主観的な連続歩行時間の向上とともに術後の患者満足度の向上を図っていくためには,術前や術後早期からバランス機能や多関節運動による筋力の改善を目指したトレーニングプログラムの遂行と術後の疼痛管理が重要であることが示唆された。今後の課題として,術後早期における片脚立位バランス機能や荷重位での筋力の向上に対してより有効なトレーニング方法を確立していく必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】TKA術後早期の主観的な連続歩行時間は,TKA術後早期の歩行時の疼痛,片脚立位時間,脚伸展筋力と関連することが明らかとなった。この結果は,TKA術後早期の患者立脚型評価における連続歩行時間の向上を目指すためのトレーニング方法を立案していくための一助となり,理学療法研究として意義のある研究データであると考えられた。
【対象と方法】対象はTKAを施行された76名(男性11名,女性65名,年齢72.4±7.8歳,BMI 25.9±5.7kg/m2)とした。対象者は当院のTKA術後プロトコールに準じてリハビリテーションを行い,術後3週で退院となった。測定項目はTKA術後3週の歩行能力,術側の膝関節可動域,下肢筋力,片脚立位時間とした。歩行能力としては10m歩行時間を測定した。10m歩行時間は,12mの直線歩行路を設け前後1mを除いた10mの所要時間を測定した。膝関節可動域の測定は,日本リハビリテーション医学会の測定方法に準じて術側の屈曲と伸展の可動域を計測し,5°単位にて記録した。下肢筋力は両側の膝関節伸展・屈曲筋力,脚伸展筋力とした。測定にはIsoforceGT-330(OG技研社製)を用い,等尺性筋力を測定した。筋力値として膝関節伸展・屈曲筋力はトルク体重比(Nm/kg),脚伸展筋力は体重比(N/kg)を算出した。それぞれ2回測定し最大値を採用した。また,患者立脚型評価として,2011 knee society scoreを用いてTKA術後3週の主観的な歩行時の疼痛と連続歩行時間を評価した。統計処理には,TKA術後3週の連続歩行時間と各測定項目の関連性の検討にはspearmanの相関係数を用いた。また,連続歩行時間と有意な相関関係を認めた測定項目を説明変数,連続歩行時間を目的変数としたstepwise重回帰分析を行い,統計学的有意基準は危険率5%未満とした。
【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施し,各対象者に本研究の趣旨と目的を詳細に説明し,参加の同意を得た。
【結果】TKA術後3週の連続歩行時間の平均値は7.1±3.4点であった。連続歩行時間の詳細は,歩くことができないのが5名(6.6%),0~5分が6名(7.9%),6~15分が36名(47.4%),16~30分が19名(25.0%),31~60分が6名(7.9%),1時間以上が4名(5.3%)であった。TKA術後3週の連続歩行時間と有意な相関関係を認めたのは,術側の膝関節伸展可動域(r=0.27),膝関節伸展筋力(r=0.33),脚伸展筋力(r=0.36),片脚立位時間(r=0.49),10m歩行時間(r=0.40),歩行時の疼痛(r=0.48)であった。さらに,重回帰分析の結果より,TKA術後3週の連続歩行時間を決定する因子として歩行時の疼痛,片脚立位時間,脚伸展筋力が有意な項目として選択された。標準偏回帰係数は,歩行時の疼痛は0.54,片脚立位時間は0.08,脚伸展筋力は0.51であり,この回帰式の修正済み決定係数はR2=0.39であった。
【考察】本研究の結果より,TKA術後早期において下肢筋力や歩行能力さらに片脚立位バランス機能が良好かつ歩行時の疼痛が低い症例ほど主観的な連続歩行時間が長くなるという相関関係を認めた。さらに,重回帰分析の結果より,TKA術後患者の主観的な連続歩行時間に関わる重要な因子として,脚伸展筋力と片脚立位バランス機能と歩行時の疼痛が抽出された。この結果から,主観的な連続歩行時間の向上とともに術後の患者満足度の向上を図っていくためには,術前や術後早期からバランス機能や多関節運動による筋力の改善を目指したトレーニングプログラムの遂行と術後の疼痛管理が重要であることが示唆された。今後の課題として,術後早期における片脚立位バランス機能や荷重位での筋力の向上に対してより有効なトレーニング方法を確立していく必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】TKA術後早期の主観的な連続歩行時間は,TKA術後早期の歩行時の疼痛,片脚立位時間,脚伸展筋力と関連することが明らかとなった。この結果は,TKA術後早期の患者立脚型評価における連続歩行時間の向上を目指すためのトレーニング方法を立案していくための一助となり,理学療法研究として意義のある研究データであると考えられた。