第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 内部障害理学療法 口述

代謝2

Sat. May 31, 2014 1:55 PM - 2:45 PM 第5会場 (3F 303)

座長:平木幸治(聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部), 忽那俊樹(北里大学東病院リハビリテーション部)

内部障害 口述

[0986] 運動習慣の有無がHbA1c及び脂質代謝に与える影響について

仲渡和正, 高橋由季, 藏本翼, 木村啓介 (三豊総合病院企業団)

Keywords:糖尿病, 運動習慣, 脂質代謝

【はじめに,目的】
当院では平成23年より糖尿病教育入院の際に,集団指導に加えて個別指導としての運動指導を開始している。そこで今回は,運動の継続状況を把握するとともに,運動継続がHbA1c及び脂質代謝に与える影響を検討したので報告する。
【方法】
対象は,集団指導の運動療法教室に併せて個別指導を行った患者,かつ糖尿病教育入院修了後半年以上経過を追うことが出来た男性2型糖尿病患者27名(平均年齢:60.7±9.7歳,平均罹病期間:7.4±7.2年)とした。方法は,半年以上の運動継続を認めたものを『運動習慣あり群』,中断及び実施できなかったものを『運動習慣なし群』とした。運動習慣の定義は,散歩などの有酸素運動を20分以上/回,3回以上/週を満たしていることとした。対象者の背景因子として罹患期間,HbA1c,脂質代謝に関しては評価時及び半年後の外来診療時の血液検査の結果から,総コレステロール(以下,TC),中性脂肪(以下,TG),LDLコレステロール(以下,LDL-C),HDLコレステロール(以下,HDL-C),LDL/HDL比(以下,L/H比)をカルテより後方視的に収集し比較した。統計学的解析は,運動習慣の有無との比較においては対応のないt-検定を,評価時及び半年後における比較については対応のあるt-検定を行った。なお有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
すべての対象者に対し本研究の主旨と目的,及び個人情報の管理ついてあらかじめ十分な説明を行い同意を得た後に調査を行った。さらに,本研究においては当院の倫理規定に基づき実施した。
【結果】
当院での糖尿病教育入院後に運動継続習慣のあった人は約44%(12/27名)であった。この内,評価前より運動習慣を有していたものは約30%(8/27名)であった。運動習慣の有無との比較では,評価時においてはHDL-C:運動習慣あり64.4 mg/dl,運動習慣なし43.3 mg/dl(p<0.01),L/H比:運動習慣あり1.6,運動習慣なし2.7(p<0.01)の2項目で,半年後においてはTG:運動習慣あり85.9mg/dl,運動習慣なし143.1 mg/dl(p=0.02),HDL-C運動習慣あり67 mg/dl,運動習慣なし49.9 mg/dl(p<0.01),L/H比:運動習慣あり1.2,運動習慣なし2.3(p<0.01)の3項目で有意差を認めた。また,入院時と半年後の比較においては,運動習慣あり群においてはHbA1c:10%⇒6.1%(p<0.01),TG:119mg/dl⇒85.9 mg/dl(p=0.43)で,運動習慣なし群ではHbA1c:9.9%⇒7.7%(p<0.01)においてそれぞれ差を認めた。
【考察】
運動習慣継続においては時間の経過とともに低下すると考えられており6カ月を過ぎると一定になり,その継続率は50%前後と報告されている。当院での継続率も44%と諸家らの報告と同様の結果となった。運動習慣継続を認めた半数は入院前より運動習慣を有しておりさらには罹病期間の短い傾向にあり,早期的な運動療法及び指導の必要性が考えられた。
HbA1cの項目においては,運動習慣の有無にかかわらず両群ともに改善を認めたものの,運動習慣あり群の方がよりコントロールされた傾向を示した。また脂質代謝項目においても,運動習慣あり群においてはHDL-Cの項目において評価時より有意に高い傾向を示し,さらに継続により維持できていた。また,TGの項目においても改善を認めていた。これらのことより,糖尿病患者における運動習慣継続によりHbA1cだけでなく脂質代謝の維持・改善も認められ,今後の運動療法及び指導の必要性を再認出来た。
【理学療法学研究としての意義】
糖尿病患者の運動継続習慣によりHbA1cだけでなく脂質代謝の維持・改善も認められ,今後の教室における運動継続のための動機付け及び注意喚起につながると考える。