[0991] 屋外活動が困難な地域在住高齢者における立ち上がり着座動作能力と屋内生活空間の日常生活動作との関連
Keywords:地域在住高齢者, 立ち上がり, 日常生活動作
【はじめに,目的】
立ち上がり着座動作は移動の起点であり終点となる日常生活活動(ADL)遂行上の重要な動作であり,これまで立ち上がり着座動作能力と生活機能との関連について検証されてきたが,より重度の障害を有する高齢者において立ち上がり着座動作能力が屋内生活空間でのADLへどのように反映されるかについては十分に検討されていない。本研究では,屋外活動が困難な地域在住高齢者における立ち上がり着座動作能力と自宅屋内のADLとの関連について検証することを目的とした。
【方法】
訪問リハビリテーションを利用した高齢者127人(平均年齢76.0歳)を対象に,立ち上がり着座動作能力(30-s chair stand(CS-30))とともに,基本動作能力(bedside mobility scale(BMS)),基本的ADL(functional independence measure(FIM)),屋内生活空間(home-based life space assessment(Hb-LSA))を横断的に調査した。CS-30は30秒間における椅子からの立ち上がり着座動作の最大反復回数を計測した。BMSは,10項目の基本動作(寝返り,ベッド上での移動,起き上がり,ベッド上座位保持,坐位で物を拾う,立ち上がり,立位保持,車椅子への移乗,椅子座位保持,移動)の自立度をそれぞれ全介助0点から自立4点にて調査し,40点満点で得点化した。FIMは運動13項目を調査し,91点満点で得点化した。Hb-LSAにおける屋内生活空間は,基点を寝室のベッドとして規定し,自宅屋内の生活空間をレベル1:ベッド上,レベル2:寝室内,レベル3:自宅住居内,レベル4:自宅居住空間のごく近くの空間(庭やアパートの敷地内),レベル5:自宅屋外(敷地外)の5段階に設定した。実際の調査では,過去1か月間における各生活空間レベルにおける移動の有無,頻度(生活空間レベル1・2(1:1回未満/日,2:1~3回/日,3:4~6回/日,4:日中ほとんど),レベル3~5(1:1回未満/週, 2:1~3回/週,3:4~6回/週,4:毎日)),自立度(1:動作介助が必要,1.5:補助具の使用または介助者の見守りが必要,2:補助具の使用および人的介助が不要)を調べ,各生活空間レベルにおける移動の有無,頻度,自立度の得点を積算し,各生活空間レベルの積算値の合計をHb-LSAの代表値とした(得点範囲0-120点)。統計学的解析では,CS-30の可否によって対象者をCS-30可能群とCS-30不可群の2群に分けて各指標を群間比較した。また,CS-30可能群においてCS-30とBMS,FIM,Hb-LSAのSpearman順位相関係数を算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の実施に際して,対象者または家族介護者に対して研究概要を事前に説明し同意を得た。なお,本研究は杏林大学保健学部倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
CS-30可能群(n=98)はCS-30不可群(n=28)に比べて,BMS,FIM,Hb-LSAの値が有意に高かった。また,CS-30可能群において,CS-30はFIMおよびFIM下位項目(入浴,トイレ動作,排尿,ベッド移乗,トイレ移乗,浴槽移乗,歩行,階段),BMSおよびBMS下位項目(起き上がり,ベッド上座位保持,座位で物を拾う,立ち上がり,立位保持,車椅子移乗,移動),Hb-LSAおよびHb-LSA生活空間レベル3~5の各積算値と有意な正の相関を示した。CS-30とFIM下位項目(食事,整容,更衣(上半身,下半身),排便),BMS下位項目(寝返り,ベッド上移動,椅子座位保持),Hb-LSA生活空間レベル1~2の各積算値は有意な相関を示さなかった。
【考察】
CS-30可能群はCS-30不可群に比べて,基本動作能力,基本的ADL,屋内生活空間での活動が良好であったことから,立ち上がり着座動作が困難であることが自宅屋内における座位や立位でのADLの実行を困難にし,自宅屋内を中心とした生活空間における移動や活動の機会を減少させていると考えられた。とくに立ち上がり着座動作能力は主要な下肢筋力と密接に関連することが報告されており,BMSやFIMの中でも座位や立位での活動においてより下肢筋力が求められる動作に対してCS-30が反映されたと考えられた。また,CS-30がHb-LSA生活空間レベル1~2ではなく生活空間レベル3~5の得点と有意に相関したことから,ベッド上や寝室内ではなく寝室以外の自宅内や自宅周辺における活動において,立ち上がり着座動作能力の高さが,移動の起点と終点となる実際の立ち上がり着座動作のより確実な遂行を可能にし,立ち上がり着座動作や移動動作の遂行を保証するための下肢筋力を反映していると推察された。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハビリテーションを利用する在宅高齢者において,立ち上がり着座動作は屋内生活空間でのADLのうち下肢筋力の必要性が高い座位および立位での活動における諸動作と関連する重要な動作であることを示唆した。
立ち上がり着座動作は移動の起点であり終点となる日常生活活動(ADL)遂行上の重要な動作であり,これまで立ち上がり着座動作能力と生活機能との関連について検証されてきたが,より重度の障害を有する高齢者において立ち上がり着座動作能力が屋内生活空間でのADLへどのように反映されるかについては十分に検討されていない。本研究では,屋外活動が困難な地域在住高齢者における立ち上がり着座動作能力と自宅屋内のADLとの関連について検証することを目的とした。
【方法】
訪問リハビリテーションを利用した高齢者127人(平均年齢76.0歳)を対象に,立ち上がり着座動作能力(30-s chair stand(CS-30))とともに,基本動作能力(bedside mobility scale(BMS)),基本的ADL(functional independence measure(FIM)),屋内生活空間(home-based life space assessment(Hb-LSA))を横断的に調査した。CS-30は30秒間における椅子からの立ち上がり着座動作の最大反復回数を計測した。BMSは,10項目の基本動作(寝返り,ベッド上での移動,起き上がり,ベッド上座位保持,坐位で物を拾う,立ち上がり,立位保持,車椅子への移乗,椅子座位保持,移動)の自立度をそれぞれ全介助0点から自立4点にて調査し,40点満点で得点化した。FIMは運動13項目を調査し,91点満点で得点化した。Hb-LSAにおける屋内生活空間は,基点を寝室のベッドとして規定し,自宅屋内の生活空間をレベル1:ベッド上,レベル2:寝室内,レベル3:自宅住居内,レベル4:自宅居住空間のごく近くの空間(庭やアパートの敷地内),レベル5:自宅屋外(敷地外)の5段階に設定した。実際の調査では,過去1か月間における各生活空間レベルにおける移動の有無,頻度(生活空間レベル1・2(1:1回未満/日,2:1~3回/日,3:4~6回/日,4:日中ほとんど),レベル3~5(1:1回未満/週, 2:1~3回/週,3:4~6回/週,4:毎日)),自立度(1:動作介助が必要,1.5:補助具の使用または介助者の見守りが必要,2:補助具の使用および人的介助が不要)を調べ,各生活空間レベルにおける移動の有無,頻度,自立度の得点を積算し,各生活空間レベルの積算値の合計をHb-LSAの代表値とした(得点範囲0-120点)。統計学的解析では,CS-30の可否によって対象者をCS-30可能群とCS-30不可群の2群に分けて各指標を群間比較した。また,CS-30可能群においてCS-30とBMS,FIM,Hb-LSAのSpearman順位相関係数を算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の実施に際して,対象者または家族介護者に対して研究概要を事前に説明し同意を得た。なお,本研究は杏林大学保健学部倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
CS-30可能群(n=98)はCS-30不可群(n=28)に比べて,BMS,FIM,Hb-LSAの値が有意に高かった。また,CS-30可能群において,CS-30はFIMおよびFIM下位項目(入浴,トイレ動作,排尿,ベッド移乗,トイレ移乗,浴槽移乗,歩行,階段),BMSおよびBMS下位項目(起き上がり,ベッド上座位保持,座位で物を拾う,立ち上がり,立位保持,車椅子移乗,移動),Hb-LSAおよびHb-LSA生活空間レベル3~5の各積算値と有意な正の相関を示した。CS-30とFIM下位項目(食事,整容,更衣(上半身,下半身),排便),BMS下位項目(寝返り,ベッド上移動,椅子座位保持),Hb-LSA生活空間レベル1~2の各積算値は有意な相関を示さなかった。
【考察】
CS-30可能群はCS-30不可群に比べて,基本動作能力,基本的ADL,屋内生活空間での活動が良好であったことから,立ち上がり着座動作が困難であることが自宅屋内における座位や立位でのADLの実行を困難にし,自宅屋内を中心とした生活空間における移動や活動の機会を減少させていると考えられた。とくに立ち上がり着座動作能力は主要な下肢筋力と密接に関連することが報告されており,BMSやFIMの中でも座位や立位での活動においてより下肢筋力が求められる動作に対してCS-30が反映されたと考えられた。また,CS-30がHb-LSA生活空間レベル1~2ではなく生活空間レベル3~5の得点と有意に相関したことから,ベッド上や寝室内ではなく寝室以外の自宅内や自宅周辺における活動において,立ち上がり着座動作能力の高さが,移動の起点と終点となる実際の立ち上がり着座動作のより確実な遂行を可能にし,立ち上がり着座動作や移動動作の遂行を保証するための下肢筋力を反映していると推察された。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハビリテーションを利用する在宅高齢者において,立ち上がり着座動作は屋内生活空間でのADLのうち下肢筋力の必要性が高い座位および立位での活動における諸動作と関連する重要な動作であることを示唆した。