[1010] 片脚立位時における上半身姿勢制御戦略の左右差が重心動揺に及ぼす影響
キーワード:姿勢制御, 身体重心, 左右差
【はじめに,目的】人の静止立位は,前庭系,体性感覚,視覚などの入力系と骨格筋などの出力系が相互に働き,各セグメントが足部上に配列し,一定範囲内で収斂するようにして力学的平衡状態を保ち,神経制御している。しかしながら,これらの姿勢制御においては,臨床上左右差を認める例が多く存在しており,過度なものではバランス不良や関節等の構成体に限界以上にメカニカルストレスが要求され,退行性変化を引き起こす可能性も示唆されている。我々は第47回日本理学療法学術大会にて,脳卒中片麻痺患者においては非麻痺側への重心移動時の体幹運動制御戦略の相違が,麻痺側のtoe clearanceの確保に影響しているとの報告を行った。健常者においても,靴底の減り方に左右差があることなどから,歩行時のtoe clearanceの戦略は左右差があることが推察される。そこで本研究の目的は,片脚立位課題での上半身姿勢制御戦略を分析し,その形態の相違が重心動揺に与える影響を明らかにすることである。
【方法】被験者は既往に整形外科疾患等を有しない健常男性8名(年齢21±0.7歳,身長171±2.4cm,体重64±3,2kg)とした。試行は,安静立位,左右片脚立位とし,それぞれの試行を各5回実施した。片脚立位の試行に関しては,安静立位から片脚立位になるまでの準備期と60秒間の実施期とし計測を実施した。各試行について,サンプリング周波数100Hzにて,光学式3次元動作解析システム(VICON-MX,Oxford Metrics社製,MXカメラ7台及び床反力計(OR6-WP,AMTI社製)を用い3次元空間内での身体体節の移動量を計測した。計測マーカはPlug-in-Gait modelの貼付部位に準じた,頭部4,上肢帯12,体幹8,下肢帯12に右肩甲骨部へのダミーマーカ1を加えた計37個とし,身体各部位に貼付した。計測データは解析ソフト(VICON NEXUS 1.7.1)にて空間内座標における位置情報の3次元化を実施し,その後解析ソフト上(Polygon Application version 3.1)にて,体節の質量比が付与された筋骨格モデル(VICON Skelton template,Golem_MMM_COG)を用い,頭部,上肢帯,胸郭部位の合成重心位置を上半身重心(COGU:Center of gravity of the upper body),骨盤及び下肢帯の合成重心位置を下半身重心(COGL:Center of gravity of the lower body),全身の合成重心位置をCOGとして算出し,各重心位置における3次元空間内での軌跡を描画した。データの解析は,安静立位及び左右の片脚立位におけるCOG,COGU,COGLの水平面上,前額面上の相対的な位置関係,重心動揺総軌跡長と周波数及び体幹アライメントを求めた。周波数解析に関しては,COG,COGU,COUGLの信号を前後成分と左右成分に分け,周波数スペクトルを求めた。解析に関しては,安静立位での制御パターンと片脚立位の準備期の対応の比較,COGU制御側とCOGL制御側での重心動揺総軌跡長と周波数を比較検討した。統計処理は,対応のあるt-検定を使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】研究対象者にはヘルシンキ宣言に則り,十分な配慮を行い,書面にて本研究の目的と方法,個人情報の保護について十分に説明を行い,同意を得た。
【結果】安静立位での重心偏移は,COGU優位のものが3例(右側2例,左側1例)とCOGL優位のものが5例(右側1例,左側4例)であった。片脚立位の準備期の対応は,偏移側では全例が安静立位と同様の制御パターンを示し,対側では8例中7例で制御パターンが逆転化した。また,片脚立位時のCOGの重心動揺総軌跡長は,COGU対応側では548.2±53cm,COGL対応側では496.3±35cmで,有意にCOGL対応側で減少がみられた。周波数スペクトルに関しては,COGU対応側に比較しCOGL対応側では,減少がみられており,特に左右成分において顕著な傾向がみられた。
【考察】本研究において,安静立位における重心偏移のパターンは片脚立位などの左右の重心制御を伴う課題と関連性がある可能性が示唆された。また,本研究の結果からは重心制御のパターンは,COGLでの制御の方が重心動揺総軌跡長や周波数スペクトルの観点からは有用であると考えられた。特に,COGUでの制御パターンが強い場合,頭位の変化も大きく,視覚や前庭系からの入力系にも影響を与えたことが今回の結果と関連している可能性も考えられる。また,COGUが過度に移動しない為の制御機構の代表的なものには,体幹の立ち直りなどがあり,今後はの筋電図などの側面からの解析も必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】健常者においても,左右で重心制御パターンに相違があることが明らかになった。臨床的上,重心移動量などが量的な評価として良く用いられるが,その制御パターンなど質的な面も考慮した上での,理学療法介入が必要であると考えられる。
【方法】被験者は既往に整形外科疾患等を有しない健常男性8名(年齢21±0.7歳,身長171±2.4cm,体重64±3,2kg)とした。試行は,安静立位,左右片脚立位とし,それぞれの試行を各5回実施した。片脚立位の試行に関しては,安静立位から片脚立位になるまでの準備期と60秒間の実施期とし計測を実施した。各試行について,サンプリング周波数100Hzにて,光学式3次元動作解析システム(VICON-MX,Oxford Metrics社製,MXカメラ7台及び床反力計(OR6-WP,AMTI社製)を用い3次元空間内での身体体節の移動量を計測した。計測マーカはPlug-in-Gait modelの貼付部位に準じた,頭部4,上肢帯12,体幹8,下肢帯12に右肩甲骨部へのダミーマーカ1を加えた計37個とし,身体各部位に貼付した。計測データは解析ソフト(VICON NEXUS 1.7.1)にて空間内座標における位置情報の3次元化を実施し,その後解析ソフト上(Polygon Application version 3.1)にて,体節の質量比が付与された筋骨格モデル(VICON Skelton template,Golem_MMM_COG)を用い,頭部,上肢帯,胸郭部位の合成重心位置を上半身重心(COGU:Center of gravity of the upper body),骨盤及び下肢帯の合成重心位置を下半身重心(COGL:Center of gravity of the lower body),全身の合成重心位置をCOGとして算出し,各重心位置における3次元空間内での軌跡を描画した。データの解析は,安静立位及び左右の片脚立位におけるCOG,COGU,COGLの水平面上,前額面上の相対的な位置関係,重心動揺総軌跡長と周波数及び体幹アライメントを求めた。周波数解析に関しては,COG,COGU,COUGLの信号を前後成分と左右成分に分け,周波数スペクトルを求めた。解析に関しては,安静立位での制御パターンと片脚立位の準備期の対応の比較,COGU制御側とCOGL制御側での重心動揺総軌跡長と周波数を比較検討した。統計処理は,対応のあるt-検定を使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】研究対象者にはヘルシンキ宣言に則り,十分な配慮を行い,書面にて本研究の目的と方法,個人情報の保護について十分に説明を行い,同意を得た。
【結果】安静立位での重心偏移は,COGU優位のものが3例(右側2例,左側1例)とCOGL優位のものが5例(右側1例,左側4例)であった。片脚立位の準備期の対応は,偏移側では全例が安静立位と同様の制御パターンを示し,対側では8例中7例で制御パターンが逆転化した。また,片脚立位時のCOGの重心動揺総軌跡長は,COGU対応側では548.2±53cm,COGL対応側では496.3±35cmで,有意にCOGL対応側で減少がみられた。周波数スペクトルに関しては,COGU対応側に比較しCOGL対応側では,減少がみられており,特に左右成分において顕著な傾向がみられた。
【考察】本研究において,安静立位における重心偏移のパターンは片脚立位などの左右の重心制御を伴う課題と関連性がある可能性が示唆された。また,本研究の結果からは重心制御のパターンは,COGLでの制御の方が重心動揺総軌跡長や周波数スペクトルの観点からは有用であると考えられた。特に,COGUでの制御パターンが強い場合,頭位の変化も大きく,視覚や前庭系からの入力系にも影響を与えたことが今回の結果と関連している可能性も考えられる。また,COGUが過度に移動しない為の制御機構の代表的なものには,体幹の立ち直りなどがあり,今後はの筋電図などの側面からの解析も必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】健常者においても,左右で重心制御パターンに相違があることが明らかになった。臨床的上,重心移動量などが量的な評価として良く用いられるが,その制御パターンなど質的な面も考慮した上での,理学療法介入が必要であると考えられる。