第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 内部障害理学療法 ポスター

その他1

Sat. May 31, 2014 1:55 PM - 2:45 PM ポスター会場 (内部障害)

座長:片田圭一(石川県立中央病院リハビリテーション部)

内部障害 ポスター

[1027] 入院時の栄養状態は退院時の身体機能に影響を及ぼす

佐藤慎1,2, 大城昌平3 (1.JA静岡厚生連遠州病院, 2.聖隷クリストファー大学大学院リハビリテーション科学研究科博士後期課程, 3.聖隷クリストファー大学大学院リハビリテーション科学研究科)

Keywords:栄養状態, 身体機能, 予後

【はじめに,目的】
入院患者の中で,低栄養状態と思われる患者を目にする機会が多い。入院患者の約3~5割が低栄養状態であったとの報告もある。この栄養状態の指標として血中蛋白質の量である血清アルブミン値がある。血清アルブミン値の正常値は3.8~5.3 g/dlとされているが,リハビリテーションを行うにあたって目標となる具体的な数値基準に関して十分に検証されていないのが現状である。先行研究では,血清アルブミン値と生命予後との関連性は指摘されているが,身体機能予後との関連を報告しているものは少ない。血中蛋白質の量が低いとされる低栄養状態では,筋肉の合成と分解のバランスが崩れ筋肉量は増加しにくくなると考えられる。これにより低栄養を起因としたサルコペニアとなり最終的にはQuality of Life(QOL),Activities of Daily Living(ADL)の低下に陥るとされている。本研究では,入院時の栄養状態と退院時の身体機能の関係性を探ることによって,栄養状態と身体機能予後の関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
A病院の患者データベースから4年分(1198名)を抽出し,そのうち回復期病棟入院時のC反応性蛋白(C-reactive protein:CRP)値と回復期病棟入院後14日~21日の間に測定された血清アルブミン値・回復期病棟退院時の機能的自立度評価法(Functional Independence Measure:FIM)の運動項目(13項目)が測定されている486名分を抽出した。さらに疾患・炎症の影響を考慮してCRPの基準値0.3mg/dlを超えるものを除いた149名を対象とした。回復期病棟退院時のFIMの運動項目と回復期病棟入院後14日~21日の間に測定された血清アルブミン値との関連性を検討した。また,同様の検討を疾患分類別にも実施した。統計学的解析はSpearmanの順位相関係数を用いた。また,回復期病棟退院時の身体機能に寄与する因子を検討するために重回帰分析を行った。重回帰分析の従属変数は回復期病棟退院時のFIMの運動項目で,独立変数は疾患分類(脳血管疾患,運動器疾患,廃用症候群),年齢,CRP値,血清アルブミン値とした。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究を実施するにあたって,A病院の個人情報の取り扱いについての規定に従って,連結不可能匿名化された患者データを使用している。また,本研究はA病院およびB大学の倫理委員会に報告し,承認を得てから実施している。
【結果】
対象の基本属性としては,年齢:77±11歳,血清アルブミン値:3.8(2.6-4.6)g/dl,CRP値:0.1(0-0.3)mg/dl,FIMの運動項目:79(13-91)点,疾患分類は脳血管疾患:49名,運動器疾患:75名,廃用症候群:25名であった。149名分の血清アルブミン値とFIMの運動項目との関連性を検討した結果,両者の間に有意な相関関係が認められた(r=0.397)。次に回復期病棟退院時の身体機能に寄与する因子を検討した重回帰分析の結果,血清アルブミン値(β=0.373),年齢(β=-0.22),疾患分類(β=0.166)が検出された。
【考察】
回復期病棟入院時の血中蛋白質の量と回復期病棟退院時の身体機能との間に関連性があった。また,回復期病棟退院時の身体機能に寄与する因子として,栄養状態の指標である血清アルブミン値が検出された。これらことは,回復期病棟退院時の身体機能予後に回復期病棟入院時の栄養状態が関与していることを示唆しているものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
入院時の栄養状態と退院時の身体機能との関連性が明らかになったことで,リハビリテーションを実施する際に,栄養状態に着目することの重要性が示せたものと考える。入院時には低栄養状態に陥りやすいことから,栄養状態改善への働きかけ,そして栄養状態を考慮したリハビリテーションプログラムを検討する必要性が考えられる。