[1035] 当院外来に通院している在宅脳卒中片麻痺者の生活空間範囲を判別する因子
Keywords:脳卒中, 生活空間, 生活期
【はじめに,目的】2000年に回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟が設立され,リハの流れは急性期・回復期・生活期と明確になり,役割の機能分化が進んでいる。その中で,急性期・回復期における使命は早期在宅復帰とされている。生活期の役割は,生活機能の維持・向上や廃用症候群の予防などが挙げられるが,早期退院が可能となった今,機能・役割は多様化している。生活期におけるリハの介入場面はICFの観点から主に活動・参加に対するアプローチが重要であると山永らが提言している。生活期リハにおいて,移動手段としての歩行機能の維持・向上や,それに伴う参加活動・生活空間の拡大は主目標となることが多い。また,生活空間及び行動範囲によって,リハ目標が具体的に設定されることが多い。生活空間を評価する指標としてLife-space Assessment(以下LSA)がある。高齢者の生活空間評価を行うツールとして重宝されている。今回我々は,在宅脳卒中片麻痺者を対象とし,LSAを指標とした広範囲活動群と狭範囲活動群をパフォーマンス評価から判別することが可能か検討した。
【方法】対象は,当院外来に月2回以上通院しており,脳血管障害(脳梗塞53名脳出血33名 くも膜下出血5名)により片麻痺を呈した91名(男性49名 女性42名 年齢61.2±14.6歳 発症から1375.9±1169.9日経過)とした。なおデータを採用するにあたり,定量評価欠損者及び,両麻痺もしくは失調症状を呈している者は除外した。LSAは社団法人日本理学療法士協会が提唱している評価方法に従い,各質問について本人に答えをお願いした。なお,失語等により本人から答えを聞き出せない場合は,家族に対して質問し評価を実施した。電子カルテより,LSA,下肢ブルンストロームステージ,感覚障害の有無,10m所要時間(10mtime),バランス(BBS),6分間歩行(6MD),30秒立ち上がりテスト(CS30),ADL(FIM)を収集した。なお,LSAは,生活空間レベルの区分に則り,寝室群,住居内群,居住近辺群(近辺群),自宅近隣群(近隣群),町内群,町外群の6群における最大自立範囲を特定した。統計学的手法は,LSAとその他の変数の関係についてピアソンの相関係数を用い,相関係数を求めた。また,より良好な曲線回帰モデル推定を行った。活動範囲の判別においては,LSA(町内・町外群or近隣・近辺・住居・寝室群)を従属変数,LSAを除く上記7つの評価項目を独立変数とし,ロジスティック回帰分析を行った。変数の選択はステップワイズ増加法を用いた。なお,有意水準は5%未満とし,統計解析はSPSSを用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】LSAにより区分された最大自立度の分布は,寝室群8名,住居内群9名,近辺群19名,近隣群12名,町内群10名,町外群33名であった。LSAとの各変数の相関係数は10mtimeが-0.527,6MDが0.786,CS30が0.72,BBSが0.661といずれも比較的強い相関を示した(p<0.01)。10mtimeにおいては,逆数回帰モデルが適合し,決定係数が0.651と良好であった(p<0.01)。ロジスティック回帰分析の結果,生活空間範囲に影響する因子として6MDが選択された。オッズ比が1.021,95%信頼区間は1.013-1.028であった(p<0.01)。判別的中率は87.9%と高い的中率を示した。
【考察】6MDは耐久性を評価するパフォーマンス評価として,様々な疾患の方に広く用いられている。移動能力は生活活動範囲に密接に関わっていると考えられ,歩行パフォーマンス評価は行動範囲の予測に有効であると考える。特に6MDは屋外における連続歩行距離を推測するのに役立つと考えられ,行動範囲に強く影響しているものと考える。相関係数から考えても,6MDでLSAを説明することが可能であり,6MDから生活空間範囲を予測し,生活アドバイスを行い,行動範囲の拡大を促すことは生活期リハにおいて有効であると考える。また,今後6MDから屋外活動範囲を判別し,外的環境へのアプローチを行うか,自宅・近隣に対するアプローチを行うか,介入方法が具体的になると考える。今回は,6MDが有用な変数として抽出されたが,LSAの計算方法として,生活スペース別に1-5を乗する為,今後,LSAを説明するにあたり,10mtimeの逆数回帰モデルが適合する可能性もある。今後多角的に検討し,パフォーマンス評価から生活空間を予測・把握し,生活アドバイスが実施できることが望まれる。
【理学療法学研究としての意義】6MDから生活空間範囲を判別し,生活アドバイスを行えることは,生活期リハにおいて重要であり,有効であると考える。
【方法】対象は,当院外来に月2回以上通院しており,脳血管障害(脳梗塞53名脳出血33名 くも膜下出血5名)により片麻痺を呈した91名(男性49名 女性42名 年齢61.2±14.6歳 発症から1375.9±1169.9日経過)とした。なおデータを採用するにあたり,定量評価欠損者及び,両麻痺もしくは失調症状を呈している者は除外した。LSAは社団法人日本理学療法士協会が提唱している評価方法に従い,各質問について本人に答えをお願いした。なお,失語等により本人から答えを聞き出せない場合は,家族に対して質問し評価を実施した。電子カルテより,LSA,下肢ブルンストロームステージ,感覚障害の有無,10m所要時間(10mtime),バランス(BBS),6分間歩行(6MD),30秒立ち上がりテスト(CS30),ADL(FIM)を収集した。なお,LSAは,生活空間レベルの区分に則り,寝室群,住居内群,居住近辺群(近辺群),自宅近隣群(近隣群),町内群,町外群の6群における最大自立範囲を特定した。統計学的手法は,LSAとその他の変数の関係についてピアソンの相関係数を用い,相関係数を求めた。また,より良好な曲線回帰モデル推定を行った。活動範囲の判別においては,LSA(町内・町外群or近隣・近辺・住居・寝室群)を従属変数,LSAを除く上記7つの評価項目を独立変数とし,ロジスティック回帰分析を行った。変数の選択はステップワイズ増加法を用いた。なお,有意水準は5%未満とし,統計解析はSPSSを用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】LSAにより区分された最大自立度の分布は,寝室群8名,住居内群9名,近辺群19名,近隣群12名,町内群10名,町外群33名であった。LSAとの各変数の相関係数は10mtimeが-0.527,6MDが0.786,CS30が0.72,BBSが0.661といずれも比較的強い相関を示した(p<0.01)。10mtimeにおいては,逆数回帰モデルが適合し,決定係数が0.651と良好であった(p<0.01)。ロジスティック回帰分析の結果,生活空間範囲に影響する因子として6MDが選択された。オッズ比が1.021,95%信頼区間は1.013-1.028であった(p<0.01)。判別的中率は87.9%と高い的中率を示した。
【考察】6MDは耐久性を評価するパフォーマンス評価として,様々な疾患の方に広く用いられている。移動能力は生活活動範囲に密接に関わっていると考えられ,歩行パフォーマンス評価は行動範囲の予測に有効であると考える。特に6MDは屋外における連続歩行距離を推測するのに役立つと考えられ,行動範囲に強く影響しているものと考える。相関係数から考えても,6MDでLSAを説明することが可能であり,6MDから生活空間範囲を予測し,生活アドバイスを行い,行動範囲の拡大を促すことは生活期リハにおいて有効であると考える。また,今後6MDから屋外活動範囲を判別し,外的環境へのアプローチを行うか,自宅・近隣に対するアプローチを行うか,介入方法が具体的になると考える。今回は,6MDが有用な変数として抽出されたが,LSAの計算方法として,生活スペース別に1-5を乗する為,今後,LSAを説明するにあたり,10mtimeの逆数回帰モデルが適合する可能性もある。今後多角的に検討し,パフォーマンス評価から生活空間を予測・把握し,生活アドバイスが実施できることが望まれる。
【理学療法学研究としての意義】6MDから生活空間範囲を判別し,生活アドバイスを行えることは,生活期リハにおいて重要であり,有効であると考える。