[1038] 当院における新人教育改善のための取り組み
キーワード:新人教育, 卒後教育, チームアプローチ
【はじめに,目的】
当院は,回復期リハビリテーション病棟120床を有する施設である。リハビリテーション診療チーム(以下,ユニット)は,複数の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の8~9人で構成され10ユニットに分かれている。新人指導は,On the Job Training(以下,OJT)とOff the Job Training(off-JT)に分けており,一定のスキルデザインを設け,新人教育期間として3年間を設定している。ジョブローテーションの都合上,単一ユニットの教育期間の目安を6カ月程度としている。off-JTは統一した資料を基に行っているが,OJTは実際の診療チームに委ねられるところが大きく,指導者が評価者としての立場に偏り過ぎてしまうこと,新人療法士が指導内容と実際の臨床を結び付けられず不安を募らしてしまうことを経験する。本研究の目的は,新人療法士に対して現状行われているOJTの内容を確認すること及び指導に関わった理学療法士の認識やその過程を明らかにすることにある。
【方法】
対象者は,新人療法士の指導に関わった理学療法士33名(平均経験年数7.3年)。アンケートは,病棟での業務と理学療法専門領域のOJTを34項目に細分化し,ランダムに箇条書きしたものを用い,実施の有無を無記名留置法にてアンケート調査を行った。アンケートは,新人療法士入職後4ヶ月の時点で実施した。その後,アンケート結果を基に対象者をランダムに5グループに分け,グループディスカッションにて聞き取り調査を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言の趣旨に沿い,アンケートは無記名にて実施したため対象者に対して本研究の目的と個人の特定がされないことを明記した書類を用いて説明をした。グループディスカッションにおいては,部署長の同意を得て,研究への協力をもって同意を得たものとした。
【結果】
アンケートの回収率は100%であった。回答では,100%の実施率の項目は無く,最も高い項目で88%であり,最も低い項目は24%であった。実施率の高い項目として,「病棟での申し送りを受ける」,「病棟と患者情報を共有する」,「担当患者の申し送りをする」といった病棟での連携業務であった。実施率の低い項目として,「基礎知識(解剖学・生理学・運動学)を理解する」,「治療手技の特性を理解する」といった項目であり,理学療法専門領域の項目であった。グループディスカッションによる聞き取り調査の結果として,「新人療法士に指導をするべきかどうか分からない」,「業務に関することは教えるが,理学療法専門領域に関して教えるべきものなのか」,「新人療法士が質問をして来ないので,教えていない」,「リハビリテーション科として,新人療法士にレポートを課していないため,どの程度理解しているのかが分からない」,「業務時間内に指導する時間が設けられていないため,指導する時間が持てない」,「理学療法専門領域には,教える側が教えるレベルに達していない」,「指導することを指導されていない」という意見が多数挙がった。
【考察】
概ね病棟での業務や病院独自のルーティンワークに関する項目のOJTは高い実施率となり,理学療法専門領域に関する項目の実施率が低いという傾向を得た。理学療法士としての教育より,病棟でのスタッフ教育という視点でのOJTが多く実施されていた。実施率が分散していたことやディスカッションでの内容から,理学療法士としての育成に関しての介入姿勢には,指導者の意識によるものが大きく作用することがうかがえた。後進の育成ということが,指導に関わった自らの業務となっている意識は低く,自分以外の他の先輩が行うものと期待を寄せながら指導を行い,自己効力感を高めるような過程に至っていないことが推測された。さらにリーダー格として業務の差配に携わる療法士は,聞き取り調査から,新人療法士には能動的な行動を求めるがあまり「待つ」姿勢となり易く,自らは上司に積極的に意見を求める行動をとれず,明確な指示や方法についての助言を受動的に「待つ」姿勢となっていることが明らかとなった。つまり,新人の育成にリーダー教育の過程が顕在化すること,業務の重責やユニット内での部下との関係から課題達成型のチーム志向性より,課題消化型の志向性に陥りやすいことが考えられた。このことから,新人療法士の育成の過程が可視化できることで,多くの療法士が新人教育に関わりやすく,且つ,リーダーの重責を緩和することでリーダーの能動的な行動を期待でき,新人教育から社内のリーダー教育に効果を期待できるのではないかと考えた。
【理学療法学研究としての意義】
新人の教育には,到達目標に着眼するだけでなく,チーム制の成熟とともそのリーダーの底上げと教育が重要であり急務である。
当院は,回復期リハビリテーション病棟120床を有する施設である。リハビリテーション診療チーム(以下,ユニット)は,複数の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の8~9人で構成され10ユニットに分かれている。新人指導は,On the Job Training(以下,OJT)とOff the Job Training(off-JT)に分けており,一定のスキルデザインを設け,新人教育期間として3年間を設定している。ジョブローテーションの都合上,単一ユニットの教育期間の目安を6カ月程度としている。off-JTは統一した資料を基に行っているが,OJTは実際の診療チームに委ねられるところが大きく,指導者が評価者としての立場に偏り過ぎてしまうこと,新人療法士が指導内容と実際の臨床を結び付けられず不安を募らしてしまうことを経験する。本研究の目的は,新人療法士に対して現状行われているOJTの内容を確認すること及び指導に関わった理学療法士の認識やその過程を明らかにすることにある。
【方法】
対象者は,新人療法士の指導に関わった理学療法士33名(平均経験年数7.3年)。アンケートは,病棟での業務と理学療法専門領域のOJTを34項目に細分化し,ランダムに箇条書きしたものを用い,実施の有無を無記名留置法にてアンケート調査を行った。アンケートは,新人療法士入職後4ヶ月の時点で実施した。その後,アンケート結果を基に対象者をランダムに5グループに分け,グループディスカッションにて聞き取り調査を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言の趣旨に沿い,アンケートは無記名にて実施したため対象者に対して本研究の目的と個人の特定がされないことを明記した書類を用いて説明をした。グループディスカッションにおいては,部署長の同意を得て,研究への協力をもって同意を得たものとした。
【結果】
アンケートの回収率は100%であった。回答では,100%の実施率の項目は無く,最も高い項目で88%であり,最も低い項目は24%であった。実施率の高い項目として,「病棟での申し送りを受ける」,「病棟と患者情報を共有する」,「担当患者の申し送りをする」といった病棟での連携業務であった。実施率の低い項目として,「基礎知識(解剖学・生理学・運動学)を理解する」,「治療手技の特性を理解する」といった項目であり,理学療法専門領域の項目であった。グループディスカッションによる聞き取り調査の結果として,「新人療法士に指導をするべきかどうか分からない」,「業務に関することは教えるが,理学療法専門領域に関して教えるべきものなのか」,「新人療法士が質問をして来ないので,教えていない」,「リハビリテーション科として,新人療法士にレポートを課していないため,どの程度理解しているのかが分からない」,「業務時間内に指導する時間が設けられていないため,指導する時間が持てない」,「理学療法専門領域には,教える側が教えるレベルに達していない」,「指導することを指導されていない」という意見が多数挙がった。
【考察】
概ね病棟での業務や病院独自のルーティンワークに関する項目のOJTは高い実施率となり,理学療法専門領域に関する項目の実施率が低いという傾向を得た。理学療法士としての教育より,病棟でのスタッフ教育という視点でのOJTが多く実施されていた。実施率が分散していたことやディスカッションでの内容から,理学療法士としての育成に関しての介入姿勢には,指導者の意識によるものが大きく作用することがうかがえた。後進の育成ということが,指導に関わった自らの業務となっている意識は低く,自分以外の他の先輩が行うものと期待を寄せながら指導を行い,自己効力感を高めるような過程に至っていないことが推測された。さらにリーダー格として業務の差配に携わる療法士は,聞き取り調査から,新人療法士には能動的な行動を求めるがあまり「待つ」姿勢となり易く,自らは上司に積極的に意見を求める行動をとれず,明確な指示や方法についての助言を受動的に「待つ」姿勢となっていることが明らかとなった。つまり,新人の育成にリーダー教育の過程が顕在化すること,業務の重責やユニット内での部下との関係から課題達成型のチーム志向性より,課題消化型の志向性に陥りやすいことが考えられた。このことから,新人療法士の育成の過程が可視化できることで,多くの療法士が新人教育に関わりやすく,且つ,リーダーの重責を緩和することでリーダーの能動的な行動を期待でき,新人教育から社内のリーダー教育に効果を期待できるのではないかと考えた。
【理学療法学研究としての意義】
新人の教育には,到達目標に着眼するだけでなく,チーム制の成熟とともそのリーダーの底上げと教育が重要であり急務である。