第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

骨・関節23

Sat. May 31, 2014 1:55 PM - 2:45 PM ポスター会場 (運動器)

座長:境隆弘(大阪保健医療大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

運動器 ポスター

[1045] Photographic Knee pain mapを用いた人工膝関節全置換術後における疼痛部位の調査

田中友也1, 美﨑定也1, 瀬川佑樹1, 山本尚史1, 池田光佑1, 安東映美1, 杉本和隆2 (1.苑田会人工関節センター病院リハビリテーション科, 2.苑田会人工関節センター病院整形外科)

Keywords:人工膝関節全置換術, 疼痛部位, Photographic Knee pain map

【はじめに,目的】近年,人工膝関節全置換術(以後TKA)に関する研究は増加傾向にあり,これらの研究内で用いられる疼痛の評価は,主に視覚的アナログスケールや患者立脚型質問票を用いた疼痛の強さのみである。しかし,臨床の場面で理学療法を行う際には,強さと共に部位を評価することが多々ある。また,患者個々によって疼痛を訴える部位に相違がある。そこで,Elson(2011)は患者が訴える膝痛の部位を評価するために,Photographic Knee pain map(以後PKPM)を開発した。これは膝写真を用いて,患者が自ら疼痛部位に印をつけ,部位を特定する評価指標である。また,専用のテンプレートで,疼痛部位を分類するものである。本研究の目的は,PKPMを用いて,TKA後早期の歩行時に生じる疼痛の部位を調査し,特徴を探ることである。
【方法】対象者は,2013年6月から10月に,当院で初回片側または両側TKAを受けた症例とした。除外基準は,神経筋疾患,認知症,他関節への整形外科手術,TKA再置換術患者,当院のプロトコルより外れた者,異常な炎症症状や感染症状がある者とした。調査項目は基本属性(性別・年齢・BMI)と,歩行時の疼痛部位とした。測定時の歩容形式は独歩またはT字杖歩行とした。測定は手術3週後に実施した。PKPMは膝前面に9部位(外側関節ライン:LJLA,内側関節ライン:MJLA,大腿外側:SL,大腿内側:SM,大腿中央:QT,膝蓋骨外側:LP,膝蓋骨内側:MP,膝蓋腱:PT,脛骨:T)と後面に7部位(後内側関節:PMJ,後外側関節:PLJ,膝窩部:PA,大腿後外側:PSL,大腿後内側:PSM,下腿後内側:PIM,下腿後外側:PIL)に分かれたテンプレートを用いて,患者が訴える疼痛部位を特定させる評価指標である。統計解析は,記述統計により基本属性とTKA後の疼痛部位を集計した。次に全疼痛部位を変数として主成分分析を行い,主成分負荷量と主成分得点を算出し,疼痛部位の特徴を調査した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,研究代表者が所属する病院の倫理審査委員会の承認を得た。なお,対象者には事前に研究の趣旨を説明し,同意を得た。
【結果】調査は,23名39膝に対して行った。対象者の基本属性は,男性2名,女性21名,平均年齢±標準偏差69.6±7.7歳,平均BMI±標準偏差25.7±4.1kg/m2となった。疼痛部位は,LJLA:9膝,MJLA:6膝,SL:8膝,SM:3膝,LP:4膝,MP:6膝,PT:2膝,PMJ:2膝,PLJ:7膝,PA:6膝,QT・T・PSL・PSM・PIM・PILは0膝であった。主成分分析の結果,第3主成分までに64.6%の累積寄与率をもった主成分を抽出した。第1主成分(寄与率34.3%)はLJLA(主成分負荷量0.6),MJLA(0.61),LP(0.78),MP(0.79),PMJ(0.88)であった。第2主成分(寄与率18.3%)はSL(主成分負荷量0.65),SM(0.84),PT(0.63)であった。第3主成分(寄与率12%)は,PLJ(主成分負荷量0.56),PA(0.48)であった。主成分分析から得られた主成分負荷量より,第1主成分は膝関節ラインの疼痛,第2主成分は大腿前内外側面の疼痛,第3主成分は後外側膝窩の疼痛を表していた。主成分得点から作成された散布図から視覚的に分類すると,膝関節ライン・大腿前内外側面・後外側膝窩の各々に単独で疼痛を訴える群と膝関節ラインと後外側膝窩に複合して疼痛を訴える群に分けられた。
【考察】第1主成分で,膝関節の外側から内側,後内側にかけた膝関節ラインの疼痛,第2主成分では大腿前面の内側から外側にかけた疼痛,第3主成分では後外側から膝窩部にかけた疼痛が特徴として見られた。後外側と膝窩部は膝関節ラインとしても考えられるが,同部位が第3主成分として抽出されたことから,独立して評価を行うことが必要だと示唆された。また,散布図から特徴として見られた,疼痛部位が複合している場合は,2つの関連性を考察することが望ましいと考えられる。本研究の結果より,疼痛部位が大きく3つに分別され,各々の特徴が示された。今後は,対象数を増やし,疼痛部位が分類される要因を探る必要がある。
【理学療法学研究としての意義】TKA後早期の歩行時の疼痛に関して,PKPMを用いて疼痛部位の特徴を探ることは,TKA後の理学療法における評価・治療の一助となる。