第49回日本理学療法学術大会

Presentation information

発表演題 ポスター » 神経理学療法 ポスター

発達障害理学療法2

Sat. May 31, 2014 1:55 PM - 2:45 PM ポスター会場 (神経)

座長:児玉正吾(川崎西部地域療育センター診療所)

神経 ポスター

[1054] 超・極低出生体重児におけるgeneral movements(GMs)評価と発達予後の関連性

中野尚子1, 木原秀樹2, 多賀厳太郎3, 渡辺はま3, 中野純司4, 小西行郎5 (1.杏林大学保健学部理学療法学科, 2.長野県立こども病院リハビリテーション科, 3.東京大学大学院教育学研究科, 4.統計数理研究所データ科学研究系, 5.同志社大学赤ちゃん学研究センター)

Keywords:低出生体重児, general movements, 発達障害

【はじめに,目的】
生後間もない乳児の動きに脳神経系の発達過程が反映されているという考え方が,小児発達神経学の分野から報告されている(Prechtl, 1993)。
Prechtlらは胎児や新生児に見られる自発運動のうちもっとも頻繁に見られる代表的全身運動であるgeneral movements(GMs)の質の変化が児の神経学的予後を予測する指標になることを報告し,診断法として確立した。
本研究では超・極低出生体重児におけるfidgety GMs評価と,6歳時健診結果との関連性を調査し,発達予後予測としてのGMs評価の信頼性を検討した。
【方法】
2002年6月~2007年10月に,長野県立こども病院総合周産期母子医療センター新生児科に入院した超・極低出生体重児で,修正週齢48週~60週前後にfidgety GMsの観察評価を行い,6歳時に健診を受けた77症例(男児25名,女児52名,在胎週数:24週2日~36週3日,出生時体重:499g~1,498g)を対象とした。
乳児を肌着着衣程度の状態で仰臥位にし,斜め上方に設置したビデオカメラで児の自発運動を約5~10分間撮影した。録画した画像から児がstate4(覚醒していて機嫌良く動いている状態)の時を選び,2名の評価者がGestalt視知覚を用いて観察評価を行った。fidgety GMsの評価判定はPrechtlの分類に基づき,正常(fidgety正常;FN),異常(fidgety欠如;F-,異常なfidgety;AF)に分類した。評価が一致しない場合は2名で議論し結果を統一した。評価者間一致率は,κ=0.82であった。
6歳時健診においては,ウェクスラー式知能検査(Wechsler Intelligence Scale for Children-Third Edition;WISC-III)と小児神経科医による診察を実施した。WISC-IIIの結果から全検査IQ(FIQ),言語性IQ(VIQ),動作性IQ(PIQ)を計算し,正常発達(80以上),境界発達(70以上80未満),発達遅滞(70未満)に分類し,医師の診察の結果から発達予後を正常,境界,異常に分類した。
fidgety GMsの評価判定と6歳時の健診結果との関連性については感度,特異度,陽性予測値と陰性予測値を算出し,GMs評価とCPあるいは他の発達障害との関連性について検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究参加者の保護者に対し,主治医および理学療法士より口頭ならびに文書にて十分な説明を行い,理解と協力を得られるよう配慮し,保護者から文書にて同意を受けた。同意書の撤回にはいつでも応じることとした。
【結果】
fidgety GMs評価の判定は,正常40名(51.95%),異常37名(F-:36,AF:1)(48.05%)であった。6歳時のWISC-IIIの結果は,全検査IQ(FIQ)正常40名(51.95%%),境界20名(25.97%),遅滞17名(22.08%)であった。
6歳時健診における発達予後は,正常30名(38.96%),境界10名(12.99%)名,異常37名(48.05%)であり,脳性麻痺診断(CP)11名(14.29%),広汎性発達障害診断(PDD)12名(15.58%),高機能広汎性発達障害診断(HFPDD)6名(7.79%),精神発達遅滞診断(MR)8名(10.39%)であった。fidgety GMsと発達予後との関係では,感度72.34%%,特異度90.00%,陽性予測値91.89%,陰性予測値67.50%であった。とりわけfidgety GMs評価とCPとの関係では,感度100.00%であり,従来の報告と同様高い関連性を示した。またfidgety GMs評価とCP以外の発達障害との関係では,感度63.89%,特異度65.85%,陽性予測値62.16%,陰性予測値67.50%であった。
【考察】
fidgety GMsの評価と6歳時の発達予後の関係において,特異度90.00%,陽性予測値91.89%と高い関連性を示し,fidgety GMs評価において異常と判定されたなら発達障害をきたす可能性が高いと考えられ,適切な早期介入プログラムを考慮する等のフォローアップが必要である。またGMs評価は従来CPの予後予測に優れていると報告されてきたが,本研究の結果からCPのみでなく他の発達障害の予後予測にも適用できる可能性を示唆した。
【理学療法学研究としての意義】
早産低出生体重児は満期産児と比較し,発達障害の出現率が高いという報告が多くなされている。新生児・乳児期に信頼性のある発達予後予測が可能であるなら,早期より個々の児の発達を考慮した介入支援を提供することが可能である。