[1056] 当院における極低出生体重児の1歳6ヶ月時の発達状況
Keywords:極低出生体重児, 1歳6ヶ月, 発達状況
【はじめに,目的】
近年の周産期医療の進歩により,本邦は新生児死亡率が世界で最低である。一方で,低出生体重児の出生率は増加傾向にあり,中でも極低出生体重児(VLBWI)の発達予後に関しては,満期産で出生した児に比べ,発達支援の必要なハイリスク児が多い事が報告されている。さらに,VLBWIを対象とした全国調査では,出生体重が750g未満の児は,それ以上の出生体重の児と比較して,明らかに予後不良であったとの報告もある。
当院では,2011年1月より新版K式発達検査を,リハビリテーション部で継続的に行えるように組織化した。今回は,当院総合周産期母子医療センター(NICU)を退院したVLBWIの1歳6ヶ月時の発達状況を,後方視的に調査したので報告する。
【方法】
対象は,当院NICUに入院していたVLBWIのうち,2011年1月~2013年10月までに1歳6ヶ月健診で新版K式発達検査を施行できた症例のうち,脳障害や先天性異常,視覚・聴力障害を認めない46名(1,000g以上22名,1,000g未満24名)とした。対象者の在胎週数は平均28週3日±30日,出生体重は平均1,077±411g,修正年齢は平均1歳6ヶ月±2ケ月であった。
方法は,姿勢-運動(P-M),認知-適応(C-A),言語-社会(L-S)の3分野において算出された発達指数(DQ)について,一元配置分散分析と多重比較を用いて比較検討した。さらに出生体重が1,000g以上と1,000g未満の児におけるP-M,C-A,L-Sの3分野のDQについて,対応のないt検定を用いてそれぞれ比較検討した。統計学的有意水準は,いずれも5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象児の両親に,評価・健診内容,本研究の主旨と目的を説明し,データ利用の理解と同意を得た。
【結果】
P-MのDQ平均は82±18,C-Aが81±9,L-Sが80±13で,3分野の平均(全領域)は81±9であった。DQは85以上が正常群,70以上85未満が境界群,70未満が遅滞群とされているが,3分野の平均(全領域)を含め,すべての分野で境界群であった。また,P-M,C-A,L-SのDQにおいて,それぞれの間には有意差を認めなかった。
さらに,1,000g以上の児のDQ平均は,P-Mは85±13,C-Aが85±8,L-Sが80±9で,3分野の平均(全領域)は84±7であり,1,000g未満の児のDQ平均は,P-Mは78±19,C-Aが79±9,L-Sが79±15で,3分野の平均(全領域)は79±9であった。1,000g以上と1,000g未満の児の比較では,P-M,C-A,3分野の平均(全領域)において,1,000g以上の児が有意に高かった。L-Sについては,1,000g以上の児が高い傾向であったが,有意差を認めなかった。
また,3分野の平均(全領域)で遅滞群となった児が,1,000g以上では認めなかったが,1,000g未満の児の中に4名存在した。
【考察】
当院NICUを退院したVLBWIの1歳6ヶ月健診では,P-M,C-A,L-S,3分野の平均(全領域)すべてにおいて,境界群となった。これは,冒頭で述べたように,VLBWIの発達予後に関しては,満期産で出生した児に比べ,発達支援の必要なハイリスク児が多いと言われているが,当院でもそれに近い結果となった。
また,1,000g以上と1,000g未満の児の比較では,P-M,C-A,3分野の平均(全領域)において,1,000g以上の児が1,000g未満の児より有意に高かったことから,1,000g未満の児でより発達遅滞に関する注意が必要であることが示唆された。
さらに,3分野の平均(全領域)で,遅滞群となった児が4名存在し,その4名はすべて1,000g未満の児であった。VLBWIを対象とした全国調査で,出生体重が750g未満の児はそれ以上の出生体重の児と比較して,明らかに予後不良であったとの報告があるように,1,000g未満の超低出生体重児の中には,発達支援の必要なハイリスク児が多いことが,当院の調査結果からも示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
今回の調査結果から,VLBWIは発達遅滞に関する注意が必要であり,1,000g未満では,より発達支援の必要なハイリスク児が多いことが示唆された。先行研究ではVLBWIは,学習障害などの発達障害の発生率が高い事が報告させている事から,今後も発達検査を継続し,発達障害を早期の段階から見極める手がかりとなる因子を模索し,早期から包括的なフォローアップができるように努める必要がある。
近年の周産期医療の進歩により,本邦は新生児死亡率が世界で最低である。一方で,低出生体重児の出生率は増加傾向にあり,中でも極低出生体重児(VLBWI)の発達予後に関しては,満期産で出生した児に比べ,発達支援の必要なハイリスク児が多い事が報告されている。さらに,VLBWIを対象とした全国調査では,出生体重が750g未満の児は,それ以上の出生体重の児と比較して,明らかに予後不良であったとの報告もある。
当院では,2011年1月より新版K式発達検査を,リハビリテーション部で継続的に行えるように組織化した。今回は,当院総合周産期母子医療センター(NICU)を退院したVLBWIの1歳6ヶ月時の発達状況を,後方視的に調査したので報告する。
【方法】
対象は,当院NICUに入院していたVLBWIのうち,2011年1月~2013年10月までに1歳6ヶ月健診で新版K式発達検査を施行できた症例のうち,脳障害や先天性異常,視覚・聴力障害を認めない46名(1,000g以上22名,1,000g未満24名)とした。対象者の在胎週数は平均28週3日±30日,出生体重は平均1,077±411g,修正年齢は平均1歳6ヶ月±2ケ月であった。
方法は,姿勢-運動(P-M),認知-適応(C-A),言語-社会(L-S)の3分野において算出された発達指数(DQ)について,一元配置分散分析と多重比較を用いて比較検討した。さらに出生体重が1,000g以上と1,000g未満の児におけるP-M,C-A,L-Sの3分野のDQについて,対応のないt検定を用いてそれぞれ比較検討した。統計学的有意水準は,いずれも5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象児の両親に,評価・健診内容,本研究の主旨と目的を説明し,データ利用の理解と同意を得た。
【結果】
P-MのDQ平均は82±18,C-Aが81±9,L-Sが80±13で,3分野の平均(全領域)は81±9であった。DQは85以上が正常群,70以上85未満が境界群,70未満が遅滞群とされているが,3分野の平均(全領域)を含め,すべての分野で境界群であった。また,P-M,C-A,L-SのDQにおいて,それぞれの間には有意差を認めなかった。
さらに,1,000g以上の児のDQ平均は,P-Mは85±13,C-Aが85±8,L-Sが80±9で,3分野の平均(全領域)は84±7であり,1,000g未満の児のDQ平均は,P-Mは78±19,C-Aが79±9,L-Sが79±15で,3分野の平均(全領域)は79±9であった。1,000g以上と1,000g未満の児の比較では,P-M,C-A,3分野の平均(全領域)において,1,000g以上の児が有意に高かった。L-Sについては,1,000g以上の児が高い傾向であったが,有意差を認めなかった。
また,3分野の平均(全領域)で遅滞群となった児が,1,000g以上では認めなかったが,1,000g未満の児の中に4名存在した。
【考察】
当院NICUを退院したVLBWIの1歳6ヶ月健診では,P-M,C-A,L-S,3分野の平均(全領域)すべてにおいて,境界群となった。これは,冒頭で述べたように,VLBWIの発達予後に関しては,満期産で出生した児に比べ,発達支援の必要なハイリスク児が多いと言われているが,当院でもそれに近い結果となった。
また,1,000g以上と1,000g未満の児の比較では,P-M,C-A,3分野の平均(全領域)において,1,000g以上の児が1,000g未満の児より有意に高かったことから,1,000g未満の児でより発達遅滞に関する注意が必要であることが示唆された。
さらに,3分野の平均(全領域)で,遅滞群となった児が4名存在し,その4名はすべて1,000g未満の児であった。VLBWIを対象とした全国調査で,出生体重が750g未満の児はそれ以上の出生体重の児と比較して,明らかに予後不良であったとの報告があるように,1,000g未満の超低出生体重児の中には,発達支援の必要なハイリスク児が多いことが,当院の調査結果からも示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
今回の調査結果から,VLBWIは発達遅滞に関する注意が必要であり,1,000g未満では,より発達支援の必要なハイリスク児が多いことが示唆された。先行研究ではVLBWIは,学習障害などの発達障害の発生率が高い事が報告させている事から,今後も発達検査を継続し,発達障害を早期の段階から見極める手がかりとなる因子を模索し,早期から包括的なフォローアップができるように努める必要がある。